外宇宙通信コミュニケーション研究部 地下帝国編 第一話 おにごっこ

なんだ? 頭の上あたりでものすごいうるさい音が響いている・・・ 俺はうっすらと目をあけたら、 あたりまえだけど風景もうっすらと目に入ってくる。 どうやらあのビービーうるさいのは目覚まし時計らしい・・・ 俺は時計の騒ぎを止めるべく、それの背後に手を回してスイッチを切った。 一瞬で息を引き取った目覚まし時計。 別に人ではないからそんな例えは必要ない・・・か。 そして俺はいつもどおりに学校へ行く支度をして、 いつもどおりの道で学校へ行った。 季節はもう冬になり、あと四ヶ月ほどで一年生という一仕事を終える。 ふむ、三学期の学年末テストという試練を乗り切れないのは何人いるだろうか、とか考えてみても もちろんのこと面白くもなんともない。 なぜならばだな、俺はこれまでとてつもない体験を何度もしてしまったからだ。 そうだな、この学校に転校してきて、 早速、大好きな天体観測が出来るであろう、 天体観測部もしくは天文学部なるものを探した。 無かった。 だったら何故か思いついたのが作ってしまえ、と。 外宇宙通信コミュニケーション研究部。 今思えばとんでもない名前だな、と。 そうだな、それを作る際に現部長、杜若志穂というトリッキーな奴に出会ったわけだ。 現部長というからにはもちろん元部長もいたわけなのだが、 それが俺だ。 どういうわけだかシホは俺から取った部活の申請書の 名前を書き換えてしまったのだ。 それから、部員に、 俺の旧友、澤井太郎、通称さわちゃん、 臆病でオバケ屋敷なんて入ったら戻ってこなくなりそうな先輩、金田楓、通称かえでっち、 そして後にロボットだということが発覚した、蜜柑好きのフランス人、ジアンナ・メル・ミラージュ。 なんでかわからんがシホはあん王女と命名した。 古代歴史か一般的なRPGでしか見たことがなかった獣と友達で操ることも 容易いビーストテイマー、それが現存するとすれば、それは 彼のことであろう、鹿島一樹、通称ずんき、またはずんちゃん。 部活を作るにあたり、一番苦労するのがきっと顧問であろう。 が、シホのような人材がいればコーラを飲んでゲップが出るぐらい確実に、 結果が即、出る。 黒吾耶ヴァロン、イタリアと日本のハーフで、昔は宇宙探偵をしていたそうだ。 肩書きには憧れるけどな。 部員からはブラックと呼ばれている。 と、これが外宇宙通信コミュニケーション研究部なんだが・・・ それはいいとして、俺がしたいままでの体験だな。 俺のとてつもない体験その一、喋るウサギ―名をビールと言ったな―が墜落してきた宇宙船に乗ってて、 彼を助けた後いろいろあって、予想もできようか、俺たちは地球の大気圏外に出た。 とてつもない体験、その二、銃刀法違反を銃と刀の両方で犯した。 日本の外依然に地球の外だからな、そんな法が届く範囲じゃねぇや。 だが、ビーム銃と呼ばれる武器セレクトできる高機能銃と、 どっかのSF映画とかどっかのロボット系アニメとかどっかのアクションシューティングの 主人公の相棒が持って出てきそうな、そんなビーム剣というものを使っていた。 地球に帰ってくるときにあれは返したらしいが。 とてつもない体験その三、自分に会ったししかも自分の息子にまで出会った。 自分の息子ってのは未来の息子らしいが、どうしてそんなことがあったのか、 今では可笑しく思えるが、地球の概念で考えたってどうにもならないな。 ついで、息子と戦ったし、俺が負けてそれから一ヶ月ほど生死の境を彷徨っていた。 これが俺の体験だ。 これから冬休みか。 また何かあればいいなとか思ったりもするのが本能、 いやいや、あんな生死に関わるような物は、と否定を出すのが理性。 人間って素晴らしいな、本能と理性、両方あってそれで人間だな。と。 今は冬休み前、これから部長は何を企画するだろうか。 と思うのも、夏休み前と夏休み前半でも色々あったことから推測できるのであって、 単に意味もなく部長を当てにしているわけではない。 「よっす」 俺が部室のドアを開けると、待っていたのはさわちゃんこと太郎だけ。 「なんだ、一人か」 「おう、今かくれんぼ中なんだよ」 「かくれんぼとな。 久しぶりに俺も混ぜて欲しい物だ。」 俺は鞄を置いた。 「いや、もう狙われてるぜ?きっと。」 そりゃまた物騒な。 どういう意味だろうか、 きっと混ぜて欲しいと言ったのに対し、 すぐにでも逃げろ、とそういうことか? 「シホとあん王女が俺たちを狙っている。」 「ほう、シホとあん王女が鬼か。 以外だな。 で、いつから始まるんだ?」 さわちゃんは、はぁと溜息をついた。 「もう始まってるっての。 俺だって気付いたのはここに来てからだ。 置手紙があってよ、鬼さん以外は適当に隠れてください、と書いてあったんだよ。 まぁビックリですがな。」 「そうか。 で、他の連中は? まさかもう逃げたのか?」 「知らないね。」 さわちゃんは窓を開けて外を見た。 他の奴等が逃げ惑ってたりしないか確認してるのだろうか。 「俺がここにいるのは別に言伝のためじゃない。 ここが意外な盲点だと思って逃げてきた。」 「そうなのか。 じゃあさわちゃんがかいた裏の裏をシホがかくほうに千円。」 「な、なにぃ!?旧友だろ!?」 「すまんが俺は逃げる。サラバだ。」 俺は廊下に出た。 さわちゃんはどんな風に思っているだろう。 まぁいいや。 で、かくれんぼ、なんだよな。 でもあいつは逃げてきたって言ってたな。 普通の鬼ごっこだな。 ここで俺的見解で鬼ごっことかくれんぼの違いを説明しよう。 かくれんぼは隠れてるだけで、その場からは動かない。 そして「みぃつけた♪」の一言で諦めろと。 鬼ごっこは違う。 かくれんぼでは鬼がインチキして見つけても無いのに 「みぃつけた♪」と言うやつが少なくないからな。 そこで見つけてもちゃんと捕まえるまで捕虜にならないというルールを付け加えたのが 鬼ごっこ。 そうだと俺は思う。 つまり今は鬼ごっこをしているんだな。 俺は適当に廊下を歩いていた。 廊下の突き当たりにある階段の方から少女がすすり泣く声がする。 俺がいるところからだと声が聞こえるだけで誰かがいるのかはわからない。 日本のホラー映画で怖がらせてくるのはほとんどが女性だったりする。 それに加え、水の概念も付きまとうらしいが、それは今は省く。 階段、女性、泣いてる。 俺、怖い。 日本のホラー映画は女性を使って怖がらせてるのではなく、 「女の人は怒らせたりしたら怖いですよ」というメッセージにも聞こえる。 嫉妬とかね。怖いよもう。 俺は恐る恐る階段に近づいた。 そして見える女の人。 階段の手すりに寄りかかり、顔に手を当ててすすり泣いている。 なんだ、かえでっちか。 「へーじょー?」 「おうっ!?」 俺が驚いたのはかえでっちが顔を見せたらのっぺらぼうになってたからではなく、 フェイスペイントが施されていたからだ。 両目の下に大きい涙の形をした青い油性ペン・・・だろうな。 「どうしたそれ!?」 「フェイスペイントです」 「そりゃ見ればわかる!! そうじゃなくて、なんで?」 「シホにやられた」 ああ、やっぱり。 ドイツ語喋れるからっていい気になりやがって。 と、背後に人の気配を感じた時にはもう遅かった。 俺はトイレで鏡を見た。 「うーっわ、すごい派手にやられた・・・」 俺の顔には赤、青、緑、と色、色々なペンで書かれたカラフルなフェイスペイント。 「すっごい・・・」 かえでっちは俺の顔を見て笑った。 「そんなに面白いか」 「とんでもない悪女だねぇーシホは。」 確かにな。 でもそう言いながらも笑ってるかえでっちも俺からしてみれば 悪女の端くれだ。 で、このフェイスペイントが掴まったっていう印らしいが、 俺にそれを説明してすぐにシホはどこかへ走り出したということは、 さわちゃん、又はずんきがつかまってないと予想できる。 もしくは両方つかまってないとか。 俺とかえでっちは部室に戻った。 なんと、そこにはまださわちゃんがいた。 すごいな、俺もここにいればこんな風にならなかったのか。 「よう、おまえつかまったんだな。」 「おうよ。」 汚れ一つ無い横顔を見せながらさわちゃんは言った。 ん?でもなんでつかまったらフェイスペイントされるって知ってるんだ? 「見てくれ、この顔」 「ギャァアー!!」 かえでっちが腰を落とした。 「びびび、びっくりさせないでよ、バァーカ!!」 「ぅわ、ひでぇ、俺の顔がそんなにひどいのか・・・」 酷いとも。 というかそれはきっとフェイスペイントじゃなくて頭から流血しているようにも見える。 すごいリアルだ。 「じゃああとはずんだけか。」 ああ、あいつなら鳥でも呼んで空中に逃げたりしそうだな。 猫で姿をくらますってのもありだな。 ふと、窓の外に目線をそらした。 ・・・なーんか見えるぞ・・・ ロボットが高速ダッシュで走り、獣にまたがるビーストテイマーを追いかけている。 「いた」 「あー、いたな。」 「ぅわー、あの二人すごいねぇー」 ああ、すごいとも。 でもなんでこーもみんな特技があったりするんだ? さわちゃんは、格闘技。 ずんきは、ビーストテイマー。 あん王女は、ロボット。 かえでっちは・・・ビビること? それにシホはデストロイヤーの称号を持ってしても、 たとえ破壊王と呼ばれようとも、人をひきつけるカリスマというものがある。 人だけじゃなくて宇宙船とかもな。 だが俺はなにがあるってわけでもないな。 そんな話を二人に話してみた。 「おまえだって特別な物があるじゃないか。」 「ん?なんだ?」 ほう、自分でも気がつかないような長所があったとはな。 「たとえ腹を日本刀やら何やらで貫かれようとも一ヶ月あれば全治する」 「・・・ああ、そう。」 こいつきっと俺が冗談を言ってると思ったんだろうな。きっと。 真面目に俺の長所を聞いた俺がバカだった。 「でも、すごくない?ゾンビみたいじゃん」 かえでっち、ゾンビ怖くないのかよ・・・ 「ゾンビは怖いんだけどね、 へーじょーなら怖くない」 ふーん、と鼻で空返事をして、再び外を見た。 ずんきがいない。 と思ったら空を飛んでいた。 数羽のカラスに体を持たせて。 まるで黒いバスローブか何かを羽織っているように、 ずんきの体がまったく見えない。 その黒い物体目掛けて急接近するロボット、 あん王女。 腕がぶっ飛んだ時の修理の際、ついでにホバーを強化したらしい。 すごいなそれ。 「ぅわー、やっぱりあの二人・・・すごいわね」 いつの間にかシホが部室に来ていた。 ずんきを纏ったカラス達は、主人が狙われていることに気付き、急降下。 地面ギリギリで止まり、カラス達はずんきから離れて散っていった。 あん王女はそれに反応するまで時間がかかった。 ホバーを止めて、降下しようとした。 まずい。その高さでホバーを止めたら急速落下で骨折・・・ いや、故障するぞ。 案の定、あん王女は急降下。 ずんき目掛けて。 と、地面にぶつかった瞬間、砂煙が舞い上がった。 「あああああああああああ!! 落ちた!!壊した!!」 シホが大慌てで外に出て行った。 窓から。 おまえも落ちた。 が、なんと、雨樋をつたって下に着地した。 砂煙は薄くなっていった。 ずんきの顔にはフェイスペイント。 あん王女の体からは数本の機械足が出ていて、 それが衝撃を和らげたらしい。 逃げるほうの負けだな。 戻る