外宇宙通信コミュニケーション研究部 地下帝国編 第二話 穴があったら入りたい。マジで。

冬休みか・・・ 何もすること無いな・・・ なんて言うような生活を望んだりはしなかっただろう、 しかし、ここまで過激にやってくれちゃったのは俺としては微妙だ。 現在我々、外宇宙通信コミュニケーション研究部の部員は皆、 長野のスキー場に来ている。 何で来たのかというと、ブラックの車。 シホが脅迫じみたことをしてブラックが運転をするハメになった。 もちろん、ブラックもあの性格だ、脅迫なんて簡単な物じゃない。 脅迫されたというのは大げさに言って、だ。 シホに大切な物を盗られたとか。 確か金色のメダルか何かだったが、ブラックにとっては価値のあるものらしい。 シホも光物が好きだな。 と、回想に耽っている場合ではない。 リフト乗車券を買わなければ。 「って、俺パシリかよ・・・」 俺は今、長野のスキー場の券売所に来ている。 ちなみに、スキー経験者はシホ、俺、太郎、ずんちゃん、ブラックであり、 かえでっちとあん王女はストックを登山用の杖だと思っていたほどだ。 俺はリフト券売所にて、券を購入、直後ダッシュで、 もちろん足はブーツなので、できる限りのダッシュで、 シホたちの所へ向かった。 「なんで俺が券買わなきゃいけないんだよ」 「だって、一人で全員分買った方が並ばないから早く済むじゃん」 「太郎、俺はそんなことは聞いてはいない。 それがどういう道理で俺が買いに行かされたのか、それが問題だ。」 「別にいいだろ、よし、みんなリフト並ぼうぜ」 って、おい!! まだ話は終わってないっつうの。 心の中で言ったことが通じたのか、太郎は振り返った。 「リフト、二人乗りだな、ペア決めようぜ」 なんだそんなことか・・・ まぁいいさ、決めよう決めようじゃないか。 じゃんけんでもくじでも話し合いでも奪い合いでも構わん。 「私が持ってきたキーボード、 誰が最初に壊すか・・・それでペア指名権を」 「ダメだ」 「ビーバーッ!!」 ・・・ あれ、俺、雪に埋まってらぁ、なんでだろうな・・・ ダメだって言ったのはずんきだぜ・・・? ああ、八つ当たりか、いつもの。 「って、何をするんだー!!」 「なんかあんた、いい具合に壊れてきたね」 「そりゃあなぁ、雪に埋もれれば脳細胞も活性化するがな!!」 「しない。」 ずんきの鋭いツッコミ。 そのとおりだよ。 言い返せねぇよ・・・ 結局ペアは部長の強引な、勝手な、ご指名によって決まった。 部長とかえでっち、 ずんきと太郎、 俺とあん王女。 っと、そういえばブラックはどうした? ブラックのことを部長に聞けば、 いい年扱いてナンパして若い女の子とどっかに去っていった、らしい。 帰りまでになんとかしてブラックに会えなければ俺たちは帰宅できなくなる。 まさか、部長から逃げるために・・・ 「何か・・・考え事」 「え?俺か?」 「そう」 「いや、別に。何にも考えてないさ」 「ならいい」 あん王女ってこうして見るといいな。 っといかん、こいつメカなんだよな・・・ メカに恋するとは・・・ リフトに並ぶ。 部長はかえでっちとリフトに乗るのだが、 かえでっちが躓いて係員にリフトを止めさせるという プチアクシデントがあったが、どうやら問題ないようだ。 かえでっちが泣きながらリフトに乗った後はスムーズにスキーヤー達は上に流れた。 何人か行った後、ずんきと太郎がリフトに乗った。 俺たちの番が近づいてくる。 そのとき、横から何かつつかれた。 あん王女だ。 「私・・・初めてなんです」 「ああ、知ってるよ、大丈夫だよ、 リフトってのはね、そんな怖いもんじゃない」 「・・・そうなの?」 俺は、笑顔で頷いた。 やっとこさ俺たちの番が来て、リフトの乗車位置に来る。 いつもどおり、膝の後ろに椅子が当たって、それに座る、それだけだ。 まぁ基礎や滑り方、その他色々をあん王女に話していたら、 なんと背後にリフトが来ているではないか。 俺は膝を曲げた。 あん王女もそれを真似て椅子に腰を下ろす。 ここまではいい。 リフトに乗った。 あん王女も初心者なのによくリフトに乗れた。 スキー初心者が始めに苦戦するのは滑る練習よりも リフトの乗り方なのだ。 と聞いたことがある。 リフトに乗ったとき、あん王女は言った。 「安全バー」 どうやらあん王女、身長が少し低めで、手を伸ばしても安全バーを下ろせないらしい。 「ああ、俺がやるよ」 俺はカッコいいところを見せようと、安全バーをおろした。 って、俺はメカにカッコいいところを見せてどうしようというんだ!! そもそもそんなにカッコよくない!! 俺が頭を抱えているとき、あん王女は何かボソボソ呟いていた。 見ると、あん王女は目を瞑って口だけが小さく動いていた。 耳を澄まし、声を聞こうとする。 「・・・怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない」 意外だ。 無表情のまま目を瞑り怯える少女、いや、メカ。 この構図は実に面白い。 確かにリフトの下は筒抜けで、椅子が空中に浮いている感じ、 高所恐怖症の人間はこの下を見ただけでもスキーが嫌になってしまうらしい。 俺は高いところは嫌いだが、下を見るのは平気だ。 ただし、後ろを見るのは断固拒否だ。 「大丈夫?」 「・・・どこですか?」 「目を開けなきゃ見えないじゃん」 「・・・目が開かない」 「そりゃ大変だ」 んー、これは面白い。 って、人の不幸を笑っちゃダメだ。 目が開かないのは大変だな。 きっと怖くて見たくないだけだろうけど、 そこまでなるのだろうか・・・ ジョーカーを握っていると思う俺、 その反面、優しくしてやろうと思う俺、葛藤する。 「大丈夫だよ、俺は隣にいる」 すると、あん王女は俺の方に顔を向けて、ゆっくりと目を開けた。 「落ちないように捕まえとくから」 俺はそっとあん王女の下腹部に手を当てた。 「あ、ありがと・・・う」 これが部長だったら今頃俺は張り倒されてる。 しばらくして、リフトを降りた俺たち。 そこからの景色は最高だった。 周りには針葉樹が両脇に並び、雪面に道を形成している。 俺たちが来たところは初級・中級レベルのコース。 だから後ろに振り向けば、上級コースから来る急な斜面が見える。 俺とあん王女は、先に着いていた連中のところに行き、 全員が集まったのを確認した。 「シホ、どうするんだ?」 俺が今、気になっていること、スキー未経験者と経験者がいるということ。 我が部の部長であるこの、杜若志穂はきっと何か考えがあるのだろう。 そう願うね。 「とりあえず、さっきのペアで滑る。 経験者は未経験者に教えながら。」 と、なると、ずんきと太郎は経験者ペアーで切磋琢磨できる・・・かどうかは知らんが、 少なくとも俺とあん王女、シホとかえでっちのペアよりは楽しめるだろう。 まぁ俺はいいんだけどな、教えるぐらい。 今後、メカにスキーというスポーツの行動情報を プログラミングしたというこの経験を生かせるだろうし。 ・・・生かせないってことぐらい知っている。 「じゃ、お先に」 「カズキ・カシマ、出るぞ」 太郎、ずんきの順で坂を滑っていった。 今のずんきの発言には少し既視感というか既聴感というのを感じた。 あれこそメカに乗ればいい。 雪の上ならドデカイ奴に乗る機会も出来ると思う。 が、あれは改造人間じゃないとダメなんだな。 「かえでっち、行くよ」 「うーん。」 かえでっちは少し躊躇いながらも、シホに着いて行って坂を滑っていった。 そのときに「ブ〜〜レ〜〜〜〜キ〜〜〜〜ど〜〜〜〜れ〜〜〜」という叫びが聞こえた。 あん王女はそれを見て怖がっている。 あまり表情には出さないようにしているのだろうが、 少しいつもより気持ちが表向きに出ているようだ。 「ブレーキ・・・どこ?」 あん王女は俺に問うた。 はて、どう説明しよう。 スキー板をハの字にして、同時に板を雪面に立てるようにすれば 雪を板の裏にとどめて止まることができる、と説明すればわかるのだろうか。 俺は考えた。 結果、俺は教えるほど上手くないということがわかっただけ。 「最初は見ててくれ」 俺はあん王女に言った。 比較的、斜面が緩やかなところを選び、俺はそこから斜めに滑った。 初心者はこれからだ。 道の端から端をジグザグ行ってブレーキとカーブの練習。 それから基礎中の基礎でもあるボーゲンもそれに含まれる。 道の端で止まり、足を交互に動かして回転。 あん王女の方を向いた。 「いいか、最初は怖がっちゃダメだ。 怖がったらできるものも出来ない。 今は何も考えずに俺のところまで来るんだ。」 「ブレーキを知らないから、ぶつかる」 「ああ、だからぶつかって来い、ちゃんと受け止めるから」 ああ、相手が人間だったらなぁ・・・ メカだと体が重そうだとか今更思い出したよ。 「・・・ん」 と言ってあん王女は坂に進入。 緩やかな斜面なので、スピードはそんなに出ない。 あん王女はそのまま俺の方に近づいてきた。 俺はスキー板を広げ、足を踏ん張る。 あん王女は俺に突っ込んできた。 が、俺が両腕であん王女の体を受け止めた。 「・・・ぅおっ・・・」 「ごめん」 「いや、いい」 俺が驚いたのは、あん王女の体が軽かったこと。 それに人間と同じような温かさを感じた。 ・・・これだッ!! いや、これじゃない・・・ 段々、俺の性格がクレイジーっぽくなってきたな・・・ いやだなぁあんな変態になるのは・・・ 「滑り方はわかったな、 止まり方は・・・えっと、 板をハの字にするんだ。 それで板を雪面に立てる。」 俺は言いながら前に進み、そしてあん王女に説明する。 「あれ?」 背中にあん王女がくっついてきてる。 「止まり方わからない」 なるほど、斜面で止まり方を教えようとした俺がバカだった。 クレイジーだった。 「背中にくっついててもいい?」 とあん王女。 「止まり方がわかったら止まってくれよ。」 俺は背中にあん王女をくっつけたまま滑り出す。 止まり方を教えながら一緒に滑った。 しばらくして、背中から温度が抜けた。 「止まれた・・・」 後ろを見ると、あん王女が止まっていた。 「よし、止まり方がわかったんならあとは滑るだけ。」 と、俺は今度は、滑り方を教える。 もちろん直滑降なんかじゃなくてボーゲンから。 道の途中に、分かれ道があって、その先に洞窟のような 横穴が見えた。 『この先、関係者以外立ち入り禁止』 という看板が立っていたのでもちろんそっちの道には行かない。 シホがこんなの見つけたら行きたいとか言い出すんだろうな・・・ 「ねぇ、みんな聞いて聞いて!! さっきねぇ、分かれ道があってねぇ、洞窟があったんだよ!! あとでみんなで行こうよ!!」 やっぱり・・・ 「やめとけってありゃ立ち入り禁止だろ」 「滑って入るのはいいんだよ」 「んな屁理屈な。」 俺は呆れて物も言えん。 言えるけどそこまでして言い返す必要もない、か。 「賛成だ」 ずんきが言った。 何言ってんだよおまえ・・・ 「洞窟はやだよぉー、なんか出るって絶対」 とかえでっち。 そのとーり。 コウモリとか土竜とか蛇とかグレムリンとかゾンビとかな、出るんだよな、うん。 ・・・最後の二つは出ない。 「俺だって興味あるさ、しかし―」 太郎が言う。 「洞窟んなかにはな、 コウモリとか土竜とか蛇とかグレムリンとかゾンビとか出て来るんだぞ。 最後の二つは無いけど。」 俺はこの野郎と同じレベルということか・・・ もしや、読心術? 「シホ」 俺は決めた。 「悪いことは言わない、危険すぎる」 「だっれっがぁ!!危険だって〜!? スノッペ!!」 「す、スノッペ!? なんだそれ!!」 「雪男のスノッペさん―」 なんだそりゃー!! 「口答えは許さない。 したらビーバーね。」 「バービーじゃないの?」 「いやいや、ビーバー。」 危険だ。 洞窟が危険なのはわかる。 だけど一番危ないのはこの破壊屋と一緒にその洞窟に入ることだ。 ―鳥羽怜治 戻る