外宇宙通信コミュニケーション研究部 地下帝国編 第六話 護身術と薙刀

---???side--- 本来、地下帝国に入るには、IDとパスが必要だ。 が、一般市民がそれを入手するのはほぼゼロに近い。 だが、この帝国にはなぜ、もとからの地元民以外もいるのか。 それには理由が三つ。 ひとつ 一般市民でも、家畜や、農奴として連れてこられる。 一般以外にも、化学者、技術者なども同じだ。 地下帝国から出て行くにもIDとパスが要る。 なので有無を言わされず強制連行された者にはそれは持たされず、 それからの一生、地上で朝日を浴びることは・・・ まぁないだろう。 ふたつ 政府の連中が遊びにきたりする。 それだけだ。 ここには大きな賭博場がある。 地上では法外なことも地下では まぁ、昨日今日始まったことではない。 日夜、危険な博打を打ったりする馬鹿連中だ。 本当、あれは面白そうなんだが、死んだら元も子もない。 そしてみっつ。 これが一番少ない。 ここを牛耳る政府とその仲間に敵対する組織が、 この地下帝国に連れてこられた民を救い出すために送り込んだエージェント― まぁいわゆる・・・ 私みたいな奴だな。 ここで付け加えたとするなら、 よっつ。 馬鹿やって迷い込んだ奴だろうよ。 そんなの身近にいるわけないと思うけどね。 私の背後には一人の男が倒れていた。 IDを見せろだの、なんだのうるさかったから潰した。 大丈夫、死んではいない。 多分。 ガラス張りの天井、そして正面にはイエスキリストの十字架。 なんてお洒落な協会だこと。 椅子も、机も、その上においてある聖書も、全て華やかだ。 しかも新品。 さてと、懺悔室ってのはどこだ? 「貴様、何者だ!!」 男の声。 どこからだろうか。 「懺悔室ってどこにあるんや」 「なんだ・・・一般人か」 ハズレー。 右側に、木枠があって、そこの蓋があいた。 中に、男の顔が見えた。 そこが懺悔室ってやつか? 「こっちだ」 男が喋るので私はそちらに行く。 「それで、何を犯したのだ?」 誰も犯してねぇーよ。 「さっき、向こうにいた人を。」 「はい?」 男はふきだしに疑問符を浮かべて目をひきつらせる。 「なに!?」 男はその部屋から出て、先刻私が倒した男を見た。 「貴様、どっから来たんだ!!」 男は、それの生存を確認すると、振り返って問う。 「西より。」 私は腰に手を当てて答えた。 「何者だ!!」 男はスタンロッドを取り出した。 やはり銃までは持ってないのか。 司教が人殺し、なんて罰当たり以上だもんな。 「おーっ、こわーっ、そんなピリピリせんといてー」 「うるさい」 「ピリピリあーんどビリビリ、やな。」 「黙れ!! おまえが答えていいのは名前、住所、電話番号、 所属する組織、そしてなぜここにいるのか、 それからついでにメアドを教えろ!! おまえよく見ると美人だな」 「んなアホな。 まぁ、でも?私の妹は可愛いよー。」 私は男に一歩一歩、近づく。 「ほな。ひとつづつ答えるよん。」 男は、私を睨みながら攻撃のタイミングを狙っている。 「名前はナナシノゴンベーコちゃん、住所は西の方、電話番号は・・・忘れた。 所属する組織は、えにっき劇団、そしてなぜここにいるのか、 ちょいと地下の方に野暮用ね。 メアドは、rk_kaki.alt@mmm.co.jp。」 「え・・・ちょ、待ってもう一回、メモするから」 「ダメダメー、そのぐらい覚えんとー。」 男は戸惑っていた。 その隙をついて私は後ろに回りこんだ。 そして首を締め上げようとした。 「ぅわっ!!」 男は逃れ、振り向きざまに、スタンロッドを振ってきた。 「甘い甘い。 そんなん、あたるわけないやん。 そやろ? 考えてもみーよ。 私みたいに武道バリバリの奴に、そんなちんけな脅し文句が通用すると・・・」 男は私がセリフを言い終わる前に、再び攻撃してきた。 「思ってるんだね。」 私はスタンロッドの突きを避けて、左掌底を顎にヒットさせた。 男は、自分の勢いを生かして、思いっきり上空に舞い上がった後、 地面に落下した。 「合気道・・・?」 「正確には護身術や。」 男は立ち上がり、体制を立て直すと、再び襲い掛かってきた。 「しょうがない。 こっちの方も披露するか・・・」 私は、足の太ももに装着していたホルスターから、 金属の棒を手に取った。 見た目は三本あるように見える。 が、その三本は鎖で繋がれている。 よく言う三節昆だ。 少し違うのが、一番先端の昆が、反り返って刀のようになっているところ。 「当たったら痛いでー」 私はそれをつなげて一本の棒にする。 と、それは長身の槍、薙刀になった。 私はそれを振り回し、男の膝にたたきつけた。 「のぅあっ!!」 男は、横倒れになって、膝を抱えていた。 「ぅわ、今の痛そーう、 こりゃ骨折したんじゃなーい?」 男は再び立ち上がろうとするが、私はそれを許さない。 今度は肩に、振り下ろす。 「ぐぁっ!!」 男は再び、倒れこんだ。 持っていたスタンロッドは、すでに地面に落ちている。 最後に、気絶させようと思った。 男の首筋あたりに狙いを定め、薙刀を振り上げる。 「待った!!参った、降参だ!!」 男は情けない声を出した。 「なんや?もうおしまいか?」 「ああ、おわりだ、俺はこんなところで死にたくない」 「殺すつもりはなかったんやけど・・・」 私は、薙刀を三節昆に戻し、そして足のホルスターに仕舞った。 「要求はなんだ」 「そやな、地下帝国にいる、全人民の解放、それから賭博場の廃場、 全ての機械類の技術を廃棄、そのぐらいかな。 あとは上の人がやる。」 「そんなこと、下っ端の俺に言われても・・・」 「いやいや、わからんよー。 今は下克上が流行りらしいからねー。」 「は・・・はぁ・・・」 「とりあえず。 地下帝国に入りたいんよ。 だから、エレベーターの場所を教えて。」 そういうことか、と男は呟いて、一方向を指し示す。 「あそこの部屋だ。」 懺悔室とは反対側の扉・・・ 私はそこに向かって扉を開いた。 そこには、男の言うとおり、エレベーターが存在していた。 「ありがとな、 さいならー」 男に言ってエレベーターに乗り込んだ。 ---へーじょーside--- 「ひっくしょん」 なんだ今のクシャミ? っていうかクシャミなのか? 「あー、風邪かな」 シホ・・・きっと誰かがオマエの陰口でも叩いてるんだろ。 「あー、ルイヴィトーン!!」 かえでっちが叫びながら走り出す。 ウィンドウ越しに高そうなバッグやら、 高そうな財布やらなにやら、置いてある。 louis vitton・・・あ・・・ かえでっち、それは偽者だ!! スペリングがおもっくそ間違ってるぞー!! vとiの間にuが入ってない!! 「見て見てー、ほらすごいでしょー!! 5万円もしたよー」 遅かったかー。 シホはウィンドウを眺めただけで買わずにいた。 最初はノリノリだったのに・・・ 「あれー?なんでシホは買わないのー?」 「だってそれ、偽者じゃない。」 言っちまったー!! シホ、それは言っちゃダメだったのに・・・ かえでっちが・・・ 白くなってるー!! 大変だ、背景カラーなのにかえでっちの輪郭以外白!! 輪郭線が黒で書かれていて、中が白っていうモノクロカラーの 画像みたいだ。 「に・・・にせ・・・にせも・・・?・・・にせ・・・」 「まぁ、落ち込むなって・・・ホラ、返品してくればいいだろ?」 太郎がフォローした。 「そ、そうだよね。」 「俺も行ってやるから」 太郎とかえでっちが、店の中に入っていった。 数秒後。 かえでっちが泣いて出てきた。 手にはバッグ。 返品できなかったらしい。 太郎が帰ってこない。 「太郎は?」 「つ、つかまっちゃった・・・」 「はぁ?」 まさか、監視員か何かがここまで来てたのか? 「OK、さわちゃんを救出すればいいのね。 全て私に任せなさい。」 シホが言った。 何が理由だかわからないが、妙に誇らしい。 俺は、この部長がこの部活を持って本当によかったと思ってる。 寄せ集めの、ならずもの集団だけどな。 「へーじょー、行くわよ」 「え?俺も?」 「そうよ。あんた、命令よ。」 「なんで俺が・・・」 その瞬間、呼吸困難になった。 首に何かが巻きついている。 これは・・・ コード!? その先にはマウスが!! ネズミじゃない、千葉にあるのに東京と言い張る所のネズミでもない!! パソコンのマウスが!! その先にはシホの手。 「ホラ、なんか言ってみなよ」 「くがっ・・・く・・・」 顔に血が行かなくなってきた。 なんだか目の前がまっくらになってきた。 こいつ、本気で俺を殺す気だ!! 「頭部鬱血によって死亡する・・・」 あん王女が助けてくれた。 言葉だけで。 未だ俺の首にはマウスのコード。 もう、ダメだ・・・俺は・・・ 「あ、堕ちた」 「痛ぇーな!!」 俺は、倒れていたところ、半身を起して叫んだ。 が、その対象となる者、杜若志穂がいない。 まさか、と思い、地面を見て、周りを見て、状況を確認した。 ここは一度来たことがある。 大理石の場所だ。 「久しぶり、というには早すぎるかな。」 来た。 奴だ。 赤い奴。 どんな趣味でそんな服装をしているんだ。 「これで、ひとつわかったことがある」 俺は言った。 「ほう、なんだ?」 「前回、ここに来る前、俺は寝ていたな。」 「そうだな」 「そして向こうで起こされた時、 こっちから向こうに行っていた。」 「そうだな」 「そして今回、俺は気絶してこっちに来た。」 「そうだな」 男は言った。 「理由があって目的があるのか、 それとも目的があるから理由がでるのか、 そして、それが関係して行為と結果があるのか。」 「なんの話だ」 「違うな。全て。 原因と結果だ。 それ以外の過程や理由など、どうでもいい。 最後には結果だけが残る。」 「だからなんの話だ」 「そうだな、これから起こる結果の原因は・・・ もし、存在したならば。 貴様はここで死ぬ。 そしてその結果、他の連中も、死ぬ。」 俺は彼の言うことを聞いて黙った。 そしてその顔を睨んだ。 「言っている意味がわからないな。」 「理解じゃない。 理解なんてしなくていい。 全ては結果だからな。 おまえが死んだ、そして俺はそれを見た、それだけでいい。」 本当に意味不明だ。 「それを認めろ、と?」 「認めろとは言わん。 貴様が死ぬ、すなわち連中が死ぬこと、 それは何があったから死ぬ、というわけではない。 そうだな。 コップを思いっきりハンマーで叩いたとする。 残るのはなんだ?ん?結果だけだ。 コップが割れた、コップの破片が散らばった、 むしゃくしゃしてて叩き壊した、 新しいコップを手に入れたので壊した、 そんなもの関係ない。 残るのは結果だ。 コップがその形をとどめていない、それだけだ。」 本当にわけがわからん。 「そして、おまえも今。 俺にとってのコップなのだよ!!」 瞬時に、背後に彼が飛んできた。 その手には木槌が握られていた。 「くぁっ!!」 振り下ろされた木槌。 俺はとっさに避けきった。 はずだった。 「ぐぁっ!!」 胸を思いっきり強打した。 一体何が? 何があたった? 木槌は、かわしたはずだ。 「これが結果だ。 俺がハンマーを振り下ろす、振り上げる、 貴様にハンマーが当たる、当たらない、 痛い、痛くない、 そんなことは関係ない。 残るのは貴様が死んだという事実のみ。」 こいつは、マジでやばい!! こんな狂った奴と会話してると、 頭の中がどうかしちまいそうだ。 そのまえに木槌で殺されちまう。 戻る