外宇宙通信コミュニケーション研究部 地下帝国編 第八話 ずんちゃん喋れ。
---さわちゃんside--- 「道案内、頼みますよ、ジャン」 『じゃ、ジャン!?』 ジャンゼリィークのジャン。 ウィンド・アレスの底面は、楕円形をしていて、 わずかに地面から浮いている。 ホバー系、なるほど。 こっちもシフトフランカーの速度を上げる。 「おい、ずんちゃん起きろ」 「起きてるよ」 「なんだ、気絶したフリだったのか?」 「・・・ああ、そのとおり」 何がそのとおり、だ。 前方にいるウィンド・アレスは、いきなり急カーブをした。 反対車線に移ってUターンした。 「なんだ、あいつ、戻っていくぞ」 『構うな、近道なんてことでもないだろう』 それしか考えられん。 『ついていくなよ、わしの指示に従うのじゃ』 「ウィルコ!!」 『なんでそんなの知ってんだーッ!!』 Will comply.の略。 俺は、シフトフランカーの速度を通常に戻す。 「ずんちゃん、ウィンド・アレス見ててくれ」 ずんちゃんは、背後の窓からウィンド・アレスを見た。 「いないぞ」 「はい?」 今、たった今、対向車線に逃げたはずだぞ。 そのすぐあとにずんちゃんは、背後を見た。 「ジャン!どういうことだ!奴が消えた!!」 『・・・何を考えているんだ・・・あいつは?』 ジャンにも解らないらしい。 やっぱり近道があったとしか思えない。 『いいか、よく聞け、次のカーブで見える、高台の方に行け。 そこにある公園をつっきる。』 「なにぃ!!」 とんでもないことをやるんだな。 道路を進むにつれて景色が高速紙芝居のように変わっていく。 左カーブが見えた。 そのカーブに入ろうとしたとき。 右手前に、丘があった。 その上には滑り台やら、ブランコやらが配置されていた。 あそこを抜けるのかよ・・・ 「ああ、やってやるさ!!」 左カーブに入った直後、右側に方向転換した。 そしてアフタバーナーで丘に向かう。 「待て!!さわちゃん!!止まれ!!前を見ろ危ないぞ!!」 「知るかむつごろー!!」 ずんちゃんは、頭を抱えて、椅子からズレ落ちた。 シフトフランカーは公園に入った。 丘の傾斜を利用した長い滑り台が横にある。 そして、傾斜の芝生で、子供たちが遊んでいた。 子供たちはシフトフランカーを目の前にして、驚き、回りに散っていった。 シフトフランカーが丘を登りきると、妙な浮遊感を感じた。 「なっ!?馬鹿かコイツ、飛んだぞ!!」 俺は、大声で言った。 シフトフランカーは、丘を登りきってその傾斜を利用して空中に飛んだのだ。 おかげで子供たちや遊具は通り越せたが。 『そのまま飛行を続けろ。 下に映る景色をモニターに転送する。』 「モニター?そんなもの・・・」 操縦桿の横に妙な溝があったが、そこから薄型のモニターが出てきて、 上昇、立掛けられたような形になり、画面が表示される。 「すげー!!」 『画面を見て、ウィンド・アレスを探すんじゃ。 奴がさっき使った道からして、おまえたちの左下を 走っていてもおかしくないはずじゃ。』 「どういうことだ?さっきUターンしたじゃないか。」 『道はおまえたちの下の道の左側につながっている。 あー・・・説明めんどくさいからモニターに地図を送る。』 モニターに、地図が表示された。 赤い矢先のようなマークが、道の無い場所を動いている。 俺たちがこれか。 「で?あいつのは表示されないの?」 『・・・古いタイプで悪かったな!!』 映んないのね。 モニターを見ると、赤いマークの下に、横に伸びる道があった。 その先には、さっきまで通っていた大きい道路。 公園の名前まで表示されている。 奴はさっきの道路でUターンしたわけだから・・・と、道をなぞって行くと、 細い道がその先に繋がっていた。 その細道は、なんとB332R号線と合流していたのだ。 B332R号線は、俺たちが今飛んでいる方向に平行に、左側を通っている。 あそこを、今、奴は通っているかもしれない。 「あそこを跨いで向こう側・・・ ってことは今その上に乗ってるあいつの方が有利なんだね。」 ジャンからの答えは返ってこない。 それならそれでいい。 多分。 いや、よくない。 とりあえず俺は、操縦桿を左に切った。 B332R号線を目指して降下していった。 『まさか!!それをやるのか!?』 ああ、やるさ。 やってやるとも。 『そんな基礎中の基礎的な方法で追い抜くのか!?』 ・・・・・ モニターを見ながら、赤いマークがB332R号線と重なったところ、 ジェットを吹かすのをやめた。 モニターに映る、車体下部の映像を見た。 ものすごい速さでウィンドアレスが通り過ぎていった。 『バーニアを吹かせ!! そのまま操縦桿を上方向に持ち上げると、降下できるぞ!!』 先に言えよ。 両ラダーを足で思いっきり踏んづける。 シフトフランカーは加速。 そして、操縦桿を持ち上げる。 と。 「うわぁぁぁぁぁあ!!」 ずんちゃんと俺の声がハモった。 体にマイナスGがかかって、血液が頭に上る感じだった。 「やりすぎたー!!」 操縦桿を、ゆるめに持ち上げる方がいいらしい。 そのままウィンド・アレスの背後を見ながら降下、 着地、しかし減速はしない。 上空から降りてきたので、シフトフランカーは加速されて、 ウィンド・アレスの横に並んだ。 『なにっ!?追いつかれた!?なぜだ!?どっから!?』 「空から降ってきたんだよ。」 そのまま地図を見て、左折。 したことを後悔。 道が細い上に、曲がりくねっている。 ぶつかっちまう。 やむなく減速をする。 背後にウィンド・アレスはいない。 そのまま前進し、細道を抜けていくと・・・ 目の前に、地上では見かけない工事用の大型車が現れた。 「なにっ!?」 ぶつかりそうになって操縦桿を切った。 また左折。 そこで気付く。 ここが工事現場か。 「ジャン、工事現場に入った!!」 『いいか、そこの道を右に曲がり、工事現場を抜ければ、 南ブリュンに侵入できる!!』 「侵入?人聞きの悪い」 右折。 目の前には道という道がない。 大型車が何台か止められていて、それが道を形成している。 その間を、シフトフランカーは縫っていくように走行する。 「くそ・・・走るのは好きじゃない!!」 右前方に隙間があった。 大型車と大型車の間に。 そこから抜けて広い道に出ようと思ったとき。 『見つけたぜ。』 ウィンド・アレスがその溝から突如、現れた。 というより、無理やり突っ込んできた。 俺はそれに対応できず、ウィンド・アレスに接触。 『馬鹿たれ!!俺の相棒に傷をつけるな!!』 「すまん」 と言ったものの、そのまま加速。 ウィンド・アレスをこすって、左から前に抜けた。 『目的地をリペアショップにしといてよかったぜ』 加速。 ウィンド・アレスも同時に加速した。 目の前には壁が。 「しまった!!行き止まり!?」 『俺には行き止まりなんて見えないが?』 ウィンド・アレスは減速しない。 しまった!! 距離が離されていく!! 『加速しろ!!飛べないだろ!!』 ジャンが言った。 飛べない?飛ぶのか!? 『右手前方にある瓦礫の坂道を利用しろ!!』 「見た感じ、奴もそのようだが?」 『先を越されるな!!』 残念だが、それは難しい。 加速して距離をつめるが、抜くのは無理だ。 そのまま俺たちは瓦礫の上に到達し、そして壁を越えて飛び上がった。 が、ウィンド・アレスの高度が低い!! 壁は越えられても、俺たちの前へは出られないだろう。 「なっ!!」 壁を越えたところにあったのは・・・ 「か、川が!!なんでこんなところに川が!!」 地図を見逃していた。 シフトフランカーの推力から行けば、なんとか向こう岸にたどり着けるはず。 「あ、おまえは大丈夫か!?」 ウィンド・アレスに気を遣ってしまった。 いつのまにか飛び越え、追い抜いていたウィンド・アレスを見た。 高度が落ちていって、水面にまっ逆さま。 俺たちはそれを目撃したのだ。 着水するところまでは見えなかった。 川岸にたどり着いたころには視界の外だった。 「勝った!!でもあいつ大丈夫か!?」 『余所見をするな!!目的地に到達するまでが戦いだ!!』 ジャンの言葉が終わる前か、後か。 シフトフランカーの右側に・・・ウィンド・アレスが!! なぜだ!! 『忘れたか、こいつはホバー系、ホバー系は水陸両用だぜ・・・ さらにこいつは改造してあって、水上の方が陸上よりも速い!!』 なんてことだ!! 距離を離したと思ったら・・・ あっという間に詰められてしまった!! しかも、水上を走ってきた分、ウィンド・アレスの方が加速力を増幅している。 「くっそー!!」 シフトフランカーの横から抜けていくウィンド・アレス。 「ビークルショップまであと少しじゃないか!! このままじゃ負けちまう!!」 と、そのとき。 周囲からバイクの騒音のような音が響いてきた。 暴走族か何かを思わせるようなそれは、どんどん近づいているようだった。 「なんだ!?」 『聞いてなかったか・・・? ここはスラム・・・無法区域・・・見捨てられた土地・・・ ギャングやら暴走族なんて普段の世間話なんだよ、ここでは。』 ウィンド・アレスの乗り手が、静かに言った。 言ったとおり。 周りを見渡せば、道路も汚れていて、街というには難しい、 廃墟と言うべきだろうか、家という家全てが、半壊状態だった。 そして、シフトフランカーとウィンド・アレスの周りには、 バイクのような・・・タイヤの無いバイクが俺たちを囲むようにして、 走行していた。 「ヘヘハハハ!!キャッホーィ!! こいつら馬鹿じゃねぇのか!!レースなんかしちゃってるぜー!!」 大声で喋ってるので、車内にまで聞こえる。 「レースなんかやって許されるのはガキまでだよなー!! ブヘハハハハ!!」 その男に合わせて、他の奴等も笑い出す。 どんな笑い方だ・・・ え?もしかしてレース法外?まずかったかな。 『ふん、馬鹿馬鹿しい。撥ねられたくなかったらどいてろ。 邪魔をするものは容赦なく撥ねる。』 「うわ、ひっでぇー・・・」 敵の敵は味方か。 いや、この場合、ウィンド・アレスの方が味方についているのか。 「ここは俺らのナワバリだぜー!! おまえら、スクラップにしてやるー!!」 非常に困る。 バイク集団は、ウィンド・アレスに集っていった。 俺達の方には誰も来ていない。 バイクは一台につき、二人ずつ乗っている。 後ろの奴等が、どこからか、鉄パイプを取り出し、ウィンド・アレスめがけて振り下ろした。 「ぎぃぃぃぇえええ!!」 が、吹っ飛んだのはバイクの方。 ウィンド・アレスの奴、本当に撥ねやがった。 横にいたバイクたちも、飛ばされたバイクに当たって倒れていった。 ここで何台か減った。 『ゴールまで持ちこたえた方が勝ちだ!!』 「おっけーい。」 シフトフランカー、ウィンド・アレスは、バイク集団を振り払いながら、 リペアショップを目指した。 バイクの集団は倒しても倒しても、前から後ろから、左から右から、現れる。 減るところを知らない。 シフトフランカーがウィンド・アレスの前に出たとき。 『なっ!!・・・ちぃっ!!』 とドライバーが言った。 抜かれたことに驚いたのだろう。 しかしそこまで驚くだろうか。 さっきから抜きつ抜かれつの勝負をしていたわけで・・・ ああ、わかった。 ウィンド・アレスのホバー用空気循環供給パイプが一つ、分断されていた。 バイクのやつらにやられたのだろう。 『くそ!!走れ!!走れ!!』 ウィンド・アレスは減速していき、最終的には止まってしまった。 バイクの連中はというと、止まってしまったウィンド・アレスには目もくれず、 俺達の方を追いかけてきていた。 『最後まで持ちこたえるのじゃ!!』 ジャンの声。 さっきまでは、ウィンド・アレスのドライバーと話していた。 「こいつらしつこいなー・・・」 ずんちゃんが喋っていない。 「ずんちゃん、なんか喋れよ。」 「なんか。」 ・・・ まぁいいや、さぁ行くか。 戻る