外宇宙通信コミュニケーション研究部 地下帝国編 第九話 マウンテン・ターキー戦開始
---さわちゃんside--- リペアショップが眼前に見えてきた。 「あと少し!!」 リペアショップのガレージが開かれているのが見える。 歓迎されてるようだ。 そのまま俺はシフトフランカーを加速させドリフトさせ― 「っしゃぁあ!!」 リペアショップのガレージにつっこんだ。 暴走族たちは、カーブしきれずに、ガレージの外壁にぶつかっていった。 あいつら生きてるか・・・? 「ちぃっ!!」 暴走族の一人が、ガレージの前で減速して止まった。 バイクから降りて鉄パイプを持ってシフトフランカーの方に向かってきた。 俺はシフトフランカーから降りて、そいつと対峙した。 大丈夫、こういうケンカも慣れている。 だが、ずんちゃんはどうだか知らん。 「てめぇ!!死ねや!!」 そいつは、鉄パイプを振り下ろしてきた。 俺は横に回避。 そのままそいつの右脇腹にステップイン、ボディブローを喰らわせた。 「ぐっ・・・」 男は鉄パイプを振ってきたが、俺はその腕を掴んで、回転し、たたきつけた。 男は鉄パイプを放した。 「朱雀拳相手に鉄パイプで足りるかよ。 おめぇは、役不足なんだよ。」 男は再び立ち上がろうとした。 が、ずんちゃんがその体躯に腰を掛けた。 「ぐはぁっ!!」 「ずんちゃん、さり気なくトドメ刺したね」 言って俺は思い出す。 そういえば、ウィンド・アレスの人、大丈夫かな? 俺はガレージから出て、道を見る。 ドライバーは車外に降りて、ウィンド・アレスを後ろから押している。 気の毒だ。 「おーい、修理屋」 俺は店内に声をかけるが、返事が帰ってくるまで少々時間がかかった。 「はい」 美人だ。 青白い長髪に、作業服・作業帽を装着した長身の女性が現れた。 「なんの御用か―なぅあっ!?」 落下して転倒した。 「痛たたた・・・」 上体を上げて、おでこを撫でている。 よく見たら子供だった。 いや、子供じゃないかもしれないけど、さっき見たような長身ではなかった。 今の一瞬で身長が縮んだわけではなく、店舗とガレージの間には、段差があって、 長身に見えただけだった。 ・・・・・・。 なんで自分の店で思いっきりこけるんだよ。 「あ、ごめんごめん、で、修理してほしいのはこのビークル?」 シフトフランカーを見て彼女は言った。 「いえ、そこの道で、ウィンド・アレスを手で押している哀れな男を助けてやってほしいのですが。」 言ったら、女の子は、とことこと、ガレージの外に出ていき、 道の向こうを見た。 作業服が大きすぎるんではないかと思うほど、だぼだぼだ。 「ふぁいとぉー、がんがれがんがれー♪」 「えーっ!?引っ張る奴使ったりしないのーっ!?」 「・・・わかったわよ、やればいいんでしょ、や・れ・ば!!」 ・・・・・・。 変身した。 見た目は変わってないが、性格が思いっきり反転したぞ!! 女の子は、ガレージに置いてある道具を外に出して、それを台車で ごろごろと押していって、ウィンド・アレスのところまで行った。 そのドライバーと何か話して、応急処置だかなんだかを施したらしい。 ウィンド・アレスはゆっくりだが、動き始めた。 そしてガレージに到着。 「お待たせ」 ドライバーが言った。 「いいレースだった。 予選一戦目突破完了だな。」 「あんたには、悪いが、俺は先に進ませてもらう。」 「いんや、俺はまだ1回しか負けてない」 ・・・え? 1回しか、ってことは、何回か負けてもいいのか・・・? 「3回負けるまでに、3回勝てばいいんだよ。」 聞いてねぇよ!! 「でもウィンド・アレスがこの調子じゃあ次も出れないわよ。 決勝大会までには、治るだろうけど、それからじゃ二人も倒すのは難しいわよ?」 女の子がドライバーの人に言った。 「そうだな。それでも頑張るさ。」 ドライバーの男はよく見るとイケメンだ。 「エイミー」 男が言った。 「何?」 女の子が答えた。 この二人、知り合いか? 「お二人はどうゆうご関係で?」 ずんちゃんがやっと、喋った。 「兄妹」 男と女の子が答えた。 「俺の名前はジェイク。一地域では有名なパイロットだ。」 「兄さん、パイロットじゃなくて、ドライバーね。」 「そこは言わない約束だろ、エイミー、ハハハハ。」 「いやぁ、おつかれだったね、さわちゃん」 「まぁな。シホだけにでしゃばらせとくわけには行かないからな。」 「ビーバァーッ!!」 俺はその打撃を避けた。 ニ撃目も予知したように、ヒラリとかわした。 実際予知してたけど。 「確信犯かっ!!」 「大分これで俺もキャラ立ってきたかな。」 「さわちゃんは、大丈夫だよ」 かえでっちが言った。 俺は、ってことは、同乗してたずんちゃんは、まだってこと、だよなぁ・・・。 あのあと、俺たちは、リペアショップでシフトフランカーの修理を少しと、 エネルギー補給をしたあと、ジャンの倉庫に戻ってきていた。 そして反省会なりなんなりをしていたのだ。 「で?そんで、決勝とかっていつなんだ?」 「明後日」 ・・・・・・。 「ジャン、地下帝国でのアサッテって言葉は、地上と同じく、 明日の次、という意味なのか? いや、むしろ地下のアシタが今日の次の日なのか?」 「何を言ってるの」 横からあん王女につっこまれてしまった。 「明後日だ。決勝は今日から二日後の明後日。」 ・・・・・・ハイ? あと二人も倒さなきゃいけないのに二日しかない、いや、 実質明日しかないじゃん!! 「無理無理無理無理無理無理!!」 かえでっちが騒ぎ出した。 なんだか可愛そうになってきた。 「大丈夫だ。なんとかなる。」 ずんちゃんが慰めてる。 ずんちゃんって、人間にも優しいんだ。 こういうところ初めて見た。 ---へーじょーside--- 時計を見るともうすでに夜の時間だ。 しかし、外は明るい。 地下帝国の天井から降り注ぐ白色ライトの所為だ。 どうやら夜の時間には消そうとか、面倒なことは考えないらしい。 俺たちはジャンが住居にしている広い家屋に入った。 そこは、倉庫にある地下通路(地下帝国だけに。)を使って行くのが最短距離。 公道を使っていくと、約20分かかるらしい。 俺たちはジャンの家屋に案内されて、用意された部屋に入った。 残っていた部屋は寝室が一つだけ。 しかし、ベッドはちゃんと人数分用意されていた。 窓の外を見ると明るい。 地下帝国には昼夜の入れ替わりが無い。 太陽の代わりになるライトが消えない限り。 そこで、俺たちは寝室のカーテンを閉めることにした。 それから、ベッドに入る。 「へーじょー!?」 「あぇ!?」 俺は咄嗟にベッドから這いずり落ちた。 シホが俺のベッドにいた!! 「お、おい!! シホのベッドは向こう・・・だろ?」 「違うわよ、ここよ!!」 「あ、あれ?」 俺は、周りを見た。 確かにそのとおり、間違えていたのは俺だった。 「あー・・・そうか。ごめん。 寝ぼけて・・・」 俺は言葉を止めた。 「へーじょー!!」 俺の倒れる体を、シホが支えた。 倒れる? 俺は倒れたのだ。 何があったか知らないが。 視界が暗くなってきた・・・ 眠ったらやばいんだよ・・・俺は。 俺の意識はそこで途絶えた。 部屋の扉の向こう側から、話し声が聞こえる。 どうやら俺はまだ眠っていなかったようだ。 扉を開けて、誰かが入ってきた。 周りを見回しても誰もいない。 と思った。 「大丈夫?」 俺が寝ている横から、あん王女が話しかけてきた。 彼女は椅子に座って、俺の横にいた。 今気付いたが、俺はベッドに横になっていた。 誰かが、俺が倒れた後に乗せてくれたのだろう。 「ああ、俺はどうしたんだ?」 言いかけたとき、扉から入ってきた人物が俺の前に来た。 眼鏡をかけていて、白衣姿の男。 「しばらく眠っていたの。」 あん王女は、その男の方を見ながら俺に言った。 「容態は悪くないんですね?」 男が言った。 「はい?」 「昨夜のこと、思い出せますか?」 「昨夜のこと?」 「昨夜あなたが倒れて、僕が呼ばれました。 僕は医者です。」 「昨夜倒れた?俺が倒れたのはついさっきじゃないのか?」 「いえ、結構な時間眠っていましたよ。」 医者は俺の横、あん王女と反対側の椅子に座って聴診器を装着した。 「前、開いてください。」 俺は言われたとおり、服を広げた。 医者はマニュアル通りに実行する。 聴診器を胸に当てて心音を聞いて、脈を測って、血圧を測る。 どこの医者もここから始める。 「見た感じ異常はないでしょう。」 「そうですか。」 「ここのところ疲れているのでしょう。 しばらく休んでいた方がいいですよ。」 「はい。」 その後、医者はあん王女に挨拶して部屋を出て行った。 俺は気絶したのか眠ったのかよくわからないが、 どうやら倒れてから数時間経っているらしい。 「レース」 「え?」 あん王女がいきなり言い出すもんだから、俺は聞き返してしまった。 「今も、闘っている。」 「さわちゃんのことか?」 あん王女はコクリと頷く。 なるほど、俺が一日寝ていたとするなら、もう決勝は明日になるのか。 それで今この場にはさわちゃんとずんちゃんがいないのか。 だが、シホとかえでっちは? 「二人も応援に。」 なるほど。 俺はベッドから立ち上がり、扉を目指して歩いた。 「まだ寝てて」 「大丈夫。」 あん王女が「まだ寝てて」など、それに順ずるような言葉を 今までに言っただろうか。 初めて聞いた。 ふと、思い出す。 そういえば、夢の中に出てくるあの赤い男が出てこなかった。 夢自体覚えていないし、見たような感覚も残っていない。 これは救われた。 「あん王女、俺たちも行こう、応援しに。」 「わかった。」 ---さわちゃんside--- シフトフランカーもそうである、ジェット系ビークル、 その中でも一番メジャーなのが、 ジークシリーズの機体。 現在俺は、その機体二機と争っている。 「ふほほほほほ!! 実に!!遅いでー!! ぐふへへへ!!」 「ホント、兄貴に勝とうなんて思うなんて!! げへへへへ!!」 一気に二機を相手にしているわけだが。 それはそれでいい、勝てば決勝行き決定。 しかし今回は分が悪い。 相手は双子、チームプレーで迫ってくる。 しかも似たような機体なのでどっちがどっちかわからなくなるときがある。 「くそ、シフトフランカーを嘗めるな!!」 俺の方も一気に加速する。 が、 「おおっと、前には行かせないよ!!」 「うわぁっ!!」 体当たりを食らわしてきた。 シフトフランカーはその衝撃で壁に接触してしまった。 今現在、マウンテン・ターキーでレース中。 道が整備されていない中での、峠越えレースだった。 相手の機体は、『ジーク・ル・モノ』『ジーク・ル・ジー』の二機だった。 「この野郎!!人の車にぶつけて・・・」 「何か悪いかね? 僕等兄弟は、勝てさえすればいいのさ」 現在、俺と相手は峠の上り側の中腹より少し下ぐらいにいる。 このラフプレーの双子を倒さなければ決勝に出れないんだよな・・・ 俺は考えながら運転していた。 戻る