外宇宙通信コミュニケーション研究部 地下帝国編 第十話 イマン兄弟

---???side--- 「カーン?聞こえてる?」 私はエレベーターの中で、小型無線機を耳に装着して声を出す。 雑音しか聞こえない。 「地下までは電波とどかんのー?」 ちょっとがっかりだぞ。 『こちら広鵬屡(カンホウル)。リョーコ、聞こえてるわよ。』 「んにゃ、今ぁ、エレベーター内部や。 サポートよろしくぅ。」 『任せて、リョーコ。私達は最強のコンビよ。』 カーンこと広鵬屡と私は、長年の付き合いで、パートナーとして活動している。 JSO言う組織に雇われて、ご飯食べてる西の私。 そして私をサポートするんは、中国人の広鵬屡。 『そろそろエレベーターが止まるみたい。』 「了解」 気軽にそう答えて、扉の端に寄る。 いきなり敵さんが、真正面から襲ってきても困るしー。 「止まったわ。索敵!!」 『エレベーターの前にはいません。』 私はエレベーターの扉が開くと、首だけ外に出して辺りを窺う。 『その道を真っ直ぐ進んでください。』 地上と同じようにアスファルトの道路が直に、エレベーターに直結していた。 巨大エレベーターと車道並の道幅・・・ ハハーン、読めてきたよ。 「真っ直ぐ進めばいいのね?」 『あ・・・左前方、何か来ます!!』 「ん・・・」 私は咄嗟に薙刀を出して構えた。 と・・・。 カタン・・・カタン・・・と。 白い鉄板で身も頭も、ガードしてるライフルを持った人が出てきた。 いや・・・人といえるのか・・・ 武装したその隙間から触覚のようなものが出ていた。 「貴様・・・何者だ!!」 どうやら私は見つかってしまったようだ。 ライフルを向けてそいつはこちらに向かってくる。 「私は・・・」 薙刀を地面に下ろして、両手を挙げる。 「リョーコ。JSOのエージェントよ。」 「JSO!?」 兵士・・・兵士は、こちらに歩み寄ってくる。 「JSOが何故ここに!? 貴様はどこから来た!?」 兵士が私の薙刀を拾おうとして・・・ 私は・・・ニヤリと微笑し 「西より」と答えた。 ---さわちゃんside--- マウンテン・ターキー。 山肌は土と雑草に覆われていて、茶色いところに、 岩で形成された地面の白いところがある。 その白いところに沿って、山を越えた先にある、登山用入り口が今回のゴール。 「おい、おまえら、名前は!?」 「俺は、ダルー・イマンだよーん」 「僕は、弟のナウー・イマン。」 「え・・・ちょっと・・・」 なんというか可愛そうになってきた・・・。 「俺は・・・澤井太郎・・・ そして副座に座ってるのが、鹿島一樹。」 一応こっちも自己紹介。 「俺はな・・・おまえ達には絶対に負けられないんだよ」 決め台詞を言ってみた。 すごく恥ずかしいが。 「ぐわっ!!」 また機体をぶつけてきやがった!! 「くそ・・・こっちからも攻撃だ!!」 隣のジーク目掛けて体当たり・・・ するはずだった。 前のジークが急ブレーキをかけたのだ。 横のジークに並んで走っていたシフトフランカーは、当然のこと、ジークに衝突した。 「ぐわっ!!」 二回言った。 「さわちゃん、道を変えよう」 後ろから、ずんちゃんが言った。 「OK。で?どうすればいいんだ?」 「森」 左前方に見える森林を指して言った。 「いや・・・あれは・・・」 「無理かな?・・・こう、機体を思いっきり傾けて側面走行で・・・ 無理だな。」 「うん、無理だよ」 喋ってる間にも、ジークの攻撃が来ていた。 「うわっと!!」 前の奴を避けて、シフトフランカーがやっと前に出た。 あいつは馬鹿だ!! 俺たちに道を譲ったようなもんだ。 「ぐわっ!!」 三度目。 どういうことだ? と、確認するまでもなく、横のジークが体当たりしてきただけだった。 それとほぼ同時、後ろのジークが突っ込んできた。 シフトフランカーの左と後ろを固定された。 まったく・・・なんて野郎だ!! こちらが操縦桿を動かしても右にしか動けない!! しかもこの先は・・・ 「さわちゃん・・・崖だ」 「崖っ!?」 イマン兄弟・・・ただのインチキプレーヤーだと思ったら・・・ 殺意がある・・・なんてことだ・・・ 「ふひひひひ・・・兄貴・・・加速だよ」 「ふほほほほ・・・わかってるぜい」 ブレーキをかけるが、後ろのジークに思いっきり押されているから止まらない!! 「思いっきり飛ばせ!!」 ずんちゃんが叫んだ。 「え・・・?」 「崖だろうとなんだろうと飛ぶんだよ!!」 言ってることがわからない。 飛ぶ=死ぬってことがわからないのかな? 以前シフトフランカーで少し飛べたのは、飛空した高さが低かったからで・・・ 「早く!!」 何か策があるのか・・・? 俺はここで・・・ずんちゃんを信じてみることにした。 後ろのジークと少しずつだが、距離を取っていき、左のジークは、すでにシフトフランカーから離れて・・・ 「あ・・・れ?」 地面がない・・・ 「うぉぁぁああいうえいいいい嘘ぉぉぉぉお!?」 「・・・」 「策があるんだろずんちゃん!!どうするの!?」 「・・・がんばれ」 終わった・・・俺の約16年間の人生がここにて終了だ。 「くそったれぇぇぇえ!!」 操縦桿を思いっきりぶん回す。 最早それには意味がないかもしれないが・・・ 道は、崖と隣接していた。 つまり、もういちど崖から着地すれば・・・コースに戻れる!! が。 世の中そう、簡単に行く物ではない。 シフトフランカーは、崖に沿って落下していく。 「ぐわっ!!」 四度目!! って・・・あれ? 道から外れてイマン兄弟の体当たりは無くなったはずだ・・・ なのになんだったんだ?今の衝撃は・・・ ・・・ 「なっ!?」 俺は自分の目を、疑った。 おそらくずんちゃんもそうであっただろう。 地面についているのである。 崖から落下したはずが・・・何故!? 「ん?・・・おわぁぁぁあ!!」 真正面から二機のジークがやってくる。 どうして? その答えは簡単だった。 俺たちは崖から落下して、下の道まで落ちてショートカットを成し遂げていたのだ。 どうやら山の頂上を通り越して、下りの道まで来ていたらしい。 俺は、シフトフランカーをUターンさせて、コースに復帰。 「兄貴ー、やばいよぉ!!」 「うろたえるなナウー!!」 「あいつら・・・僕等も知らないショートカットを使いやがった!!」 知らなかったのか・・・。 シフトフランカーの独走状態をゲットできたと思っていたのもつかの間、 ジーク二機は、すでにシフトフランカーのケツについていた。 おそらく・・・この状態をキープすれば一着でゴールできるはず。 「くそっ!!くらえ!!」 ジークが体当たりを試みてきた。 俺は、シフトフランカーを、横移動させ、その攻撃をよけた。 「また崖だぜ!!」 ダルー・イマンが言って、左から攻撃してくる。 シフトフランカーのブレーキをかける。 道の右側には・・・崖。 「うぉっ!?」 「あ・・・兄貴ィィィイ!!」 ジークが一機崖からコースアウト、そして落下していった。 「くそ!!くそ!!許さねぇ、兄貴を殺したお前等は!!」 もう一機のジーク(おそらくナウーが乗っているからジーク・ル・ジー)が、シフトフランカーの背後から体当たりをしてきた。 「やめろ!!そんなことをしてもおまえの兄貴は・・・戻ってこないんだぞ!!」 ずんちゃんが・・・変なこと言ってるー・・・ ナウーは、何も返事を返さない。 どうやら相当キレてるようだ。 もしくわ、泣いているだろうか・・・ 「兄貴はッ!!この大会に優勝して・・・ 僕等の家を作ろうと言ってくれた!! 僕等は両親が死んでから・・・この二機のビークルのみで・・・ 賞金を稼ぎながら生きてきた!!」 ・・・ 「優勝して・・・一つの場所にとどまるために!! ・・・兄貴は・・・レースなんか好きじゃなかったのに!!」 ・・・ 「僕の為に!!」 ・・・ 「その兄貴を死なせたお前たちを絶対に許さない!!」 ジークが加速し、シフトフランカーの右側に出てきた。 シフトフランカーの前には、左側の森林から折れてきた大木が、倒れていた。 右に寄って、崖ギリギリを通らないといけないらしい。 が。 右にはジークがいる。 「勝負だ!! おまえが僕のジークに体当たりをかまして、崖から落とすことができれば!! おまえたちの勝ちが決まる!! だが、僕が避けてお前等が落ちるか、それを恐れて弱めの体当たりにして僕を落とせなければ、 おまえたちはあの倒木にぶつかって死ぬ!! さぁ、勝負だ!!」 その言葉を無視してシフトフランカーを加速させる。 こんな奴ほっといて先に道を通過すればいい・・・ と思ったが。 さっきよりジークの加速力が上昇している・・・何故!? 「逃げようなんて甘い考えは捨てるんだな・・・」 覚悟を決めなければならないらしい。 「おまえがもし、落ちて喜ぶ奴などいるのか?」 「おまえたちがいる。」 「おまえの兄貴は・・・おまえを生かすために・・・ 俺たちに特攻してきたんじゃないのか?」 「・・・」 もう答えは返ってこない・・・ 「それじゃあ・・・勝たせてもらうぞ!!」 シフトフランカーを左側に寄せて、助走をつける。 ここで思いっきり叩き落とす!! 「・・・え!?」 ナウーが、驚きの声を漏らしたのも無理ない。 俺たちはナウーの勝負を無視したのだから。 一気に左側に寄せたのは助走じゃない。 森林につっこむためだった。 「ば、馬鹿か!?そんなことしたらおまえたち、 木にぶつかって死ぬぞ!!」 だが、シフトフランカーは、木には当たらない。 それもそのはず、倒木があった近くの森林は、そこだけ抉られたように、 木々がなかったのだ。 俺たちは倒木を森林の中からやりすごして、道に戻ってきた。 「そ・・・そんな・・・」 ナウーの声が聞こえたが、姿が見えない。 ずんちゃんが背後を見たとき・・・ 「・・・あ」 恐らく、前を見ていなかったのだろう・・・不幸なことに。 後方から爆音が響いた。 炎と煙が、舞い上がる。 こちらから見て、倒木の裏側で、ジークは、ど真ん中に衝突したのだろう・・・ 二人は・・・イマン兄弟はこのレースで、死んだ。 「・・・ナウー・イマンの死亡を確認・・・」 ずんちゃんが小声で言った。 ---へーじょーside--- 山の中腹辺りに、爆発を見た。 ・・・ 嫌な予感がする。 あの爆発は、シフトフランカーの爆発・・・ではないよな? 「何かあったのかな・・・二人は・・・死んじゃったのかな・・・?」 かえでっちが泣きそうな声で言う。 「まだわからんさ・・・」 俺は、一言だけ言って、ストップウォッチを見る。 このコースの平均タイムと比べて、もうゴールに近づいてもいい頃合なのに・・・ シフトフランカーも・・・ ジーク・ル・モノも・・・ ジーク・ル・ジーも・・・ 視界には捉えられない。 「あ!!」 志穂が叫んだ。 俺はストップウォッチから視線を外し、坂の上を眺めた。 このゴール地点に向かってくる意思がある、あの機体はおそらく、 三機のうちのどれかだろう。 「勝ってるよ!!」 志穂・・・本当に目がいいのかもしれないな。 俺は、まだどの機体かも判別はできないでいる。 しばらくして、シフトフランカーは、目の前のゴール地点を豪速で抜けていった。 平均タイムよりは遅かったが・・・過去のスコアを見る限り、速い部類に入っていた。 シフトフランカーは、減速して、こちらに戻ってくる。 そして・・・ さわちゃんと、ずんちゃんは、降りてきた。 「おめでとう!!勝ちだよ!!」 ゴールの反対側にいる、イマン兄弟のお仲間さんは、頭を抱えていたり、 悔しがったりしている。 そして・・・さわちゃんも、ずんちゃんも、彼等と似たような表情をしていた。 どこか悔しそうな・・・そして悲しそうな・・・ 「どうしたの・・・?」 かえでっちが、不思議そうに訊ねても、無視。 ジャンが、かえでっちの方をポンと、叩いて、首を振る。 「今は・・・今はダメじゃ・・・」 ジャンは、言った。 そして、ジャンの家に帰ってから、さわちゃん達の戦いについて色々聞くことにした。 さっきの、あの悲しそうな表情の意味を・・・聞くために。 戻る