外宇宙通信コミュニケーション研究部 地下帝国編 第十二話 再会

通研メンバーは、レース大会の決勝戦進出が決まって、コースなどの情報通知を待っていた頃。 彼女たちは、活動を続けていた。 ---涼子side--- 私は、クルッチョプワと対峙して、しばらく睨み合ったままだった。 「JSO・・・?なんでそんな連中がここに?」 クルッチョプワは、槍を構えながら言った。 「本来は奴隷解放作戦なんやけど・・・ ついでってわけじゃないんけど、地下帝国政府のバックにいてはる組織、 マトリオシカに用があるねん。」 私が言うと、クルッチョプワは、眉を少し動かした。 そしてニンマリ笑う。 冑の前面が、半分ほど切れた状態で、表情まで窺える。 「そこまで知っているのか・・・ ならば尚更生かしておけないな。」 クルッチョプワは、槍を振り回し、そして歩み寄ってきた。 私も同じように、薙刀を頭の上に構えて、そして両手で回転させる。 二人の制空圏が触れ合った瞬間、同時に己の武器を振りかざす。 金属音が響いて、薙刀と槍がぶつかって止まる。 私は、薙刀を引いて、柄で槍を弾いた。 そのまま胴体が、がら空きになったところを柄で突く!! 「ぐふぇっ・・・」 当たってはいるが、ダメージが少ないようだ。 クルッチョプワは、私の薙刀を手で払い、槍でついてきた。 私は咄嗟に、薙刀でガード・・・ 「なっ?」 ガードができない。 クルッチョプワは、薙刀を払ったのではなく、手につかんでいた。 槍の刀身が、顔面に迫った瞬間、私は頭を横に振ってそれを避けた。 そして槍を手でつかむ。 お互いの武器が封じられた。 「久しぶりだ・・・こんな強い敵は・・・」 クルッチョプワが言った。 私は、ニヤリと笑って、クルッチョプワの腹部に蹴りを入れた。 「ぐっ・・・」 クルッチョプワは、私の薙刀を解放し、自分の槍をふんだくった。 お互い、もう一度構える。 私は、クルッチョプワの背後に回りこんでいた。 「どう?」 「!?」 クルッチョプワは、驚いていた。 それもそのはず。 クルッチョプワの目には、私が二人いるように見えているのだから。 前方と後方、挟み撃ちに。 「貴様、奇妙な術を使う・・・ 非常に・・・愉快だ。 見てて面白い」 余裕があるようだけど、それはきっと口先だけ。 私は、二人の私は、同時に薙刀を振りかざし、クルッチョプワに突進していった。 「はぁっ!!」 クルッチョプワは、槍を両手で持って、両方の薙刀をガードした。 「対数人戦用だろうが、俺は戦える。」 横向きになって、槍を左右に振り回し、私との距離をとった。 クルッチョプワは、自身から見て右側の私に、槍を突いてきた。 「ハズレー」 私はクルッチョプワの背後から、薙刀を突き出した。 が、クルッチョプワは、それを槍の柄で受けながら避けた。 「種さえわかっちまえば・・・」 クルッチョプワは、槍を私に向かって横振りしてきた。 「なんということはない・・・」 そして。 私はなぎ払われた。 「前は囮、背後からの奇襲、それが本来の攻撃。 攻撃をするとき、わざわざ前に回って戦おうとする奴はいない。」 そして倒れた体躯に、クルッチョプワは、槍の柄を突いた。 「前は囮、背後は奇襲、じゃあ上ってなんだ?」 クルッチョプワは、驚いてその場から飛び込み前転で回避。 「おっしぃー・・・あとちょっと」 私は、床に突き刺さった薙刀を抜いて、再び構えた。 「な!?馬鹿な・・・今、倒した・・・ 俺は今、おまえを殺したはずだ!!その証拠に、ここに遺体が!!」 クルッチョプワは、そこを指差した。 だが、そこにあるのは私の遺体・・・ではなく、 木の丸太。 クルッチョプワは、驚きのあまり、立ち尽くすのみだった。 私は、クルッチョプワに、トドメを刺そうと、床と水平に薙刀を構えた。 「へ、へへへへ・・・ ハハハハ」 クルッチョプワは、突然笑い出した。 「最初から、こうしてればよかったんだよっ!!」 槍を床に落とした。 それは降参の意味ではなく。 「吹っ飛びなー!!」 手榴弾を二つ取り出し、安全装置を外し、そして私の方へ投げてきた。 「うぉっ!?」 私は咄嗟に横飛びした。 すると当然、連絡通路から外に出て、落下するわけだが。 爆風の勢いで、私はどこかに飛ばされた。 ・・・ ふと気がつくと、私はベッドの上にいた。 家のベッドではない。 さっきまでの出来事が夢オチだなんてそんな寂しいことは言わんよ。 私は、上体を起して辺りを窺う。 「いっ・・・」 背中が少し痛かった。 ドアがない入り口から、少年が入ってきた。 「気がつきましたか?」 少年は言って、私の近くの椅子に座る。 そしてコーヒーメイカーからカップにコーヒーを注いだ。 「ここはどこ?」 彼は、カップを私に手渡した。 「ブラック、ダメですか?」 「大丈夫。私、なんでも良く食べるし良く飲むの。」 「そうですか。」 私は、そのコーヒーをひとくち飲んだ。 少年は、私の背中を、回りこんで見た。 「あーあ。また血が出ちゃってるよ・・・」 少年は、残念そうに言った。 「あの・・・ここは」 「ここは俺の家。」 それはわかってるよ・・・ 「プリズンキャッスルの下にある川の川下の城下町。」 「私は、なんでここに?」 「僕が匿っている少女、五弥(ウーヤン)が拾ってきました。」 「拾ってきたって、猫かよ・・・」 「申し送れました。僕の名前は、曲夜(きょくや)です。」 無視かよ。 曲夜から聞いた話によると、私は川を流れて、漂着した場所がこの家の近くだったらしい。 そして曲夜の居候、五弥が見つけ、拾ってきたと、そういうわけだ。 私は、あの連絡通路で戦っていた。 そこから落ちたのだから、やっぱり川に落ちたのだろう。 もし墜落地点が川じゃなかったら私は死んでいた。 「五弥、包帯持ってきて」 「はいな。」 可愛い声がして、入り口から女の子が入ってきた。 と、その子は、見覚えのある服、いや、制服を着ていた。 「包帯、持ってきま・・・志・・・穂・・・さん?」 と私を見た途端、言った。 やっぱり。間違いない。 「あれ?知り合い?」 と、曲夜が聞く。 「私は、杜若涼子。 きっとシホってのは私の妹のことね。 で、それを知ってて、しかもその制服ってことは・・・ 帝真学公課総学科の生徒、間違いないわね?」 私が聞くと、五弥は、なんだか俯いたように、目をそらしていた。 「そうです・・・」 私は、溜息をついた。 「なんで制服のままここに? 奴隷としてつれてこられたなら、 奴隷服を着させられるはずよ?」 「アタシは・・・違う・・・ 奴隷、違う・・・ 東京で、キャッチの人に捕まって・・・それで地下に連れていかれて・・・ 逃げていたらこんなところに。」 「ははーん。 キャッチセールスに声をかけられた時点で逃げなきゃダメだよ。 私の妹なら、興味津々でついていって、地下にでもどこにでもワクワクして入り込んじゃいそうだけど。」 ---怜治side--- 「へっくしゅ・・・」 「風邪か?シホ。」 「母子テック。」 「何がだよ・・・」 とまぁ、俺たちは暢気に構えていた。 さわちゃんとずんちゃんが決勝進出という報せが入って、ジャンの家にて、休息しているわけだ。 決勝の場所がなんとも禍々しい名前で、その名も「エリアデスバレー」。 直訳で「区域、死の谷ッ!!」てところだな。 今までで、死にかけてきたことは何度かあったが、 というか俺は実際、死んだと思わせるほど重度なこともあったが、 こいつは明らかに名前が「死」を匂わせてるというか隠すつもりねぇだろ。 あん王女は、かえでっちと、応援用の旗を作っている。 というか作らされている。 部長の命令は、なんとも避けがたい災難、絶対服従、ドイツのアドルフもびっくりだ。 「おう、俺も手伝おうか?」 「い、い、い、いきなり声かけんなバーロー!!」 泣きそうな表情になってしまった。 いきなり声かけんなって、前振りも何も、やっぱり声かけなきゃ始まらんだろうに。 あん王女の方を見る。 「大丈夫。」 まだ聞いてねぇよ・・・。 「ダメよ。手伝っちゃ。 へーじょーには、へーじょーの仕事があるんだから。」 「へいへい。で?その仕事って?」 「私の奴隷」 こいつ悪だ!! ニンマリ笑いながら言いやがった!! 「おい、キャラ投票で票が貰えなくてもいいのか?」 「全て裏から操作済みだわ。」 なんだよそれ・・・。 「で、私達はこれからあるところに向かう。」 「どこへ?」 「この地下帝国につれてこられてしまった哀れな奴隷」 なんか寸劇始まったぞ。 しばらく目を放してても構わんぞ。 「ああ、地上に残された私の彼氏・・・ ああ、行かないでおくれジュリエット・・・」 俺の方に手を差し伸べてきた・・・ しょうがない。 「ついてきてくれるかいロミオ」 「私はシホだ馬鹿野郎!!」 「待った。いつものあれはどうした。 キャラが壊れてきてる。ってか早く本題に入ろう。」 えっと、なんというか省略。 シホは、他のドライバー達のところへ行ってインタビューを敢行しようと、賢いことを考えていたのだが。 あまりに表現がぶっとびすぎな為、おつむのよろしくない子だと思われがちだろう。 そのドライバー達の数人が奴隷であって、その奴隷街に行こうと言い出すのだ。 何故そんなことを知ってるのだと聞けば、 「ハァッキィンッ」 とカッコつけて声を張るだけなので、とにかく理由は不明。 まぁどっかで調べてきたんだろう。 え?ハッキング?そんな犯罪を犯すような奴は、俺の身近にはいない・・・。 そしてインタビュー一人目。 ハユーさん。 奴隷ではなく、地下帝国の元からの国民として、プログラマーの仕事をしていた。 その前知識があって、太ったアメリカ人っぽいのを想像したのだが。 見た目はゴキブリ・・・。 そんな男がいた。 「決勝進出おめでとうございます」 「ありがとうございます」 早速、シホは、ハユーさんにインタビューを開始した。 躊躇いもなく。 「あなたが使う機体はなんですか?」 「ジェット系の、ジーク・ル・トリです。 ジークシリーズの三作目です。 これが結構何台も生産されたんですが、 なかなか買えなくて。 僕のお気に入り。」 「ありがとうございました。」 そして、何人かにインタビューしていった。 お菓子屋、ホバー系のワイルドウィンド・キャトーヴァンシス、 工場の経営者、ジェット系のジーク・ル・テトラ、 会社員、タイヤ系のムシュルムMk-15 などなど。 職業も色々、乗る機体も色々。 ってすげぇなおい、地上よりも機械の生産性がずばぬけてるな。 そして、奴隷街の端の方。 「ねぇ、へーじょー」 「ん?」 「あれ・・・」 シホが指す方向に目を向けた。 「ああ、なんだあれ。お城か?」 「ね。すごいね。 あんなお城に私も住んでみたい。」 似合わねぇ・・・ そしてその近くに川があって、川沿いに進んでいったところにある家に、 次にインタビューするべき人がいるはず。 「ごめんくださぁーい、隣の晩御飯でーす。」 「違う。決勝レース進出インタビュー。」 中から出てきたのは恐らく、ここの家人、曲夜という少年。 奴隷としてつれてこられたから、やることは・・・まぁ企業秘密だ。 「どうも。」 畏まってる。 「えーと、インタビューをしたいのですが、いいですか?」 俺が聞くと、彼は首を傾げる。 「え?俺に?」 「はい。決勝レース進出の・・・」 シホが家の中を見て呆然と立っていた。 ただ、中の何かを見つめるように。 「どうした?シホ。」 俺もシホが見る先を窺う。 隣の部屋に、ベッドから身を起した女の人がいた。 シホにそっくりの。 「あの・・・彼女は怪我をしてまして」 曲夜が言った。 「怪我をしてるからなんなの?」 シホが強く言った。 そして家にどかどかとあがりこんでいった。 「おい!!シホ!!」 俺はシホを呼び止めようとした。 「すいません、曲夜さん。すぐにあいつ連れて帰ります。」 「はい。」 そうしてくれ、と、彼の顔は言っていた。 迷惑そうに。 だろうな、あのシホの性格だ。 俺も彼の家に上がらせてもらい、そしてシホがいる部屋に到達した。 シホと怪我をした女性は、お互い見詰め合っていた。 「ホラ、シホ、帰るぞ。」 シホは、キーボードを取り出した。 俺は咄嗟に頭をかばって地面に伏せた!! が・・・ 攻撃はなかった。 俺は、顔を上げて、シホを見た。 シホは、攻撃をしていたのだ。 俺にではなく、怪我をした女性に・・・ だが、その女性も、タダでやらせるわけにはいかないと言わんばかりに、 三本の鉄の棒でキーボードを防いでいた。 「シホ!!怪我人に何を手出してんだ!!」 俺がちょっと怒鳴り気味にシホの肩をつかんだ瞬間、 景色が高速で回転した。 気がつくと、俺は地面に思い切りたたきつけられていた。 「っ・・・」 悲鳴をあげるほどの暇もなかった。 そして。 俺の顔の上に足が乗せられる。 シホの・・・ではない。 怪我人の足。 「私の妹を殴っていいのは、私だけだ。」 そして再度足を上げて、そして勢い良く振り落とす・・・!? ってやばいじゃん!! 絶対絶命!! 俺はもう目を瞑っていのるしかなかった。 ・・・ 何も起きなかった。 「あ・・・れ・・・?」 その女性は、シホと並び、俺を見て笑っていた。 「シホ、あんた彼氏できたんだ。」 「違う!!違う!!こんな奴が彼氏なんて!!」 そんな何度も否定すんな悲しくなる。 って、おまえら知り合いかよ・・・ 伏していた俺は、なんとか起き上がり、床に座った。 「どういうことだ?シホ・・・知り合いか?」 まだ顔が痛い・・・口内もヒリヒリするのに・・・喋った。 「私の姉よ。」 え・・・? 「お姉さん?」 「私の名前は杜若涼子。」 姉がいたなんて聞いてないぞ!! 「それで?今回は何の用でどっから派遣されたの?」 シホが笑いながら言った。 「西より。」 涼子さんが、誇らしげに言った。 戻る