外宇宙通信コミュニケーション研究部 地下帝国編 第十五話 Last of Empire

長らくお付き合いありがとうございました。 外宇宙通信コミュニケーション研究部は、この話を持ってクライマックスとさせていただきます。 それでは 終局の 終焉の 最終の 始まり始まり。 ---へーじょーside--- 城の最上階、最後の部屋・・・ キング・ローチの事務室兼別荘と言ったところ、と涼子さんは説明してくれた。 その扉が今、目の前に・・・。 「たのもーっ!!」 涼子さんが、扉を蹴飛ばして中に転がり込んでいった。 前転し、立ち上がり、薙刀を頭上で振り回してから脇に構える・・・。 それはカッコいいんだけど、ラストステージ前での雰囲気を味わせてくれても良かったじゃないか。 シホも先生も、中に入っていったから、俺もビーム銃とビーム剣を構えて、警戒しながら中に入った。 扉は、音も立てずに、自動的に閉まった。 「自動ドアよ。」 焦って扉を見た俺たちに涼子さんが言った。 部屋には誰もいない。 床も壁も真っ白で、そこに緑色の線が所々這っている。 機械の基盤みたいだ。 目の前には大型モニターが六基、それから壁から出ている棚に組み込まれているキーボードらしき物が扇形にならんでいた。 その真ん中には、半球が埋め込まれていた。 「誰もいない・・・?」 涼子さんが言った。 が、よく見ると、暖簾が掛かった枠があった。 隣の部屋・・・? 「なんだなんだ、うるさいぞ・・・今日はレース大会というめでたい一日なのに・・・」 と言って、黒いマントを羽織っている・・・ゴキブリが現れた。 おっと、ここではゴキブリは禁句だったな。 ローチ族と訂正しておく。 そいつの身長は、とてもじゃないが、高かった。 おそらくこっちのメンバーの中でも一番背の高い黒吾耶先生よりも、でかいのではないだろうか。 そして、そいつは言った。 「なんだー、おまえたちは。 一体誰だ?」 「全国英々辞書推進協会の者です。」 涼子さんが言った。 薙刀を構えたその格好で言われても、なんとリアクションとっていいのか・・・ 「えっと・・・な、何?辞書推進?」 案の定、そいつは困っていた。 しょうがない。 ここは俺が出番を取り逃げしますか。 「あんたがキング・ローチ?」 すると、そいつの目は、俺を睨むように、眉間にしわを寄せた。 そのとき同時に動いた触角が、なんともチャーミングだった。 「いかにも・・・ して、おまえ達は?」 「だから全国英々辞書」 「シホ、ちょっと黙ってろ」 後頭部にキーボードの角は痛かった。 そして俺は再び、キング・ローチを見る。 「えっとですね、彼女がJSOの杜若涼子さん。 で、こちらがその妹の杜若志穂さん。 そして俺が、シホの部活の仲間の鳥羽怜治。 で、こっちが黒吾耶先生。」 一人一人紹介した。 すると、キング・ローチは、焦ったように、表情を急に変えた。 そして、俺たちに背後を向けた。 キーボードに向かって何やら操作し始めた。 モニターに映し出されたのは・・・飛行機・・・? 「おまえらー!! この俺を陥れようとここまでしていたようだが・・・ だが、我々、ローチ族の技術をもってして、その希望、粉々に打ち砕いてくれるわ!!」 なんともラスボスらしいセリフを言って、キーボードをカタカタ。 涼子さんが、背後を向けて隙だらけのキング・ローチに歩み寄ろうとした。 「こっちくんなぁー!!」 ヘタレな叫びで拒絶。 「おいおいおい、この飛行機、おまえの司令塔機レイワンだろ・・・?」 モニターに映っている飛行機を指して言った。 「この飛行機を今から・・・サテライトソーラーレイでデロデロに溶かしてくれる!!」 キング・ローチが、キーボードの一番大きいボタン(恐らくエンターキー)を押した・・・ 「っ・・・!?」 モニターの飛行機の近くに、光の柱が立ったと思ったら・・・ その付近一帯の民家が消し飛んだ。 「惜しい!!あとちょっと!!」 キング・ローチは、キーボードについていた半球をコロコロ回して、モニターの照準を飛行機に合わせた。 涼子さんは、耳に手をあて、そして通信する。 「カーン!!今の光、見たでしょ!? 早くそこから逃げて!!」 それと同時に、モニターの飛行機が右に旋回した。 レーザー照準から外れた。 「こしゃくな!!」 キング・ローチは、半球を回して、照準を合わせ、ビーム発射をした。 「右旋回!!」 涼子さんは叫んだ。 しかし 遅かった。 その飛行機、レイワンは、左舷にビームが当たって、浮力・揚力を失っていった。 脇腹から炎と煙を噴出しながら、住宅街がある地上に向かってゆっくりと降下していった。 そして 「カーーーーン!!」 墜落し、爆発し、粉々に飛び散った。 「てんめぇー!!」 涼子さんがキレて、キング・ローチに向かっていった。 キング・ローチは、涼子さんの薙刀による斬撃をかわして、そしてキーボードをカタカタと再び操作した。 「ハッハッハ!!何も対策してなかったわけじゃあないんだよ、これが!!」 天井の穴から、煙が噴出してきた。 「なんだ・・・?毒ガスか・・・?」 と、驚いているうちに、キング・ローチは、視界から消えていた。 だからと言って、この部屋から出て行ったわけではなかった。 ガラス張りの筒状の壁が出現し、そのなかにキング・ローチはいた。 「フッハッハッハ!!それは睡眠ガス!! 貴様等の始末は赤の男に任せるとしよう!!」 呼吸がしずらくなる・・・。 隣にいたシホが、芯を抜かれた木偶のように倒れた。 俺は咄嗟にその体躯を支えて・・・ 「涼子さん!!先生!!」 すでに眠ってしまった二人を見て・・・ 俺も床に座り込んでしまった。 シホをそこに寝かせて・・・ 俺は・・・ガラス張りの壁の所まで這っていった。 そしてガラスに向けて、ビーム銃を発射しようと、引き金に手をかけた・・・が。 銃は、ポロリと俺の手から落ちた。 「く・・・そ・・・ てめぇ・・・」 「フッハハハハハハハハハ!!」 キング・ローチは、笑っていた。 ---さわちゃんside--- 轟音が鳴り響く。 俺はシフトフランカーを操り、目の前のモーンストンバイクを追い抜かそうと必死だった。 「くっそー、なんでいきなり八位なんだよ・・・」 後ろにはムシュルムMk-15がいた。 最新型の癖に遅かった。 それはムシュルムの性能が悪かったわけではなく、ドライバーのセンスがなかっただけだ。 俺は、次のカーブで、モーンストンバイクに並んだ。 「少し気が引けるがタックルをお見舞いだ!!」 操縦桿を切って、モーンストンバイクに向かっていった。 丁度、次のカーブをする方向だったので一石二鳥と言ったところか。 モーンストンバイクは、急にスピードを落として、俺達の背後に出た。 これで俺たちは七位だ。 と、カーブを曲がった瞬間。 「おわっ!?」 爆発があった。 「にゃろぉー!!」 シフトフランカーを反対側の岩壁に寄せて、爆発を避ける。 そのとき、モーンストンバイクは、俺達と爆発の間を上手く縫うように走っていった。 「また八位かよ!!」 情報パネルに何かが映し出された。 「読み上げてくれずんちゃん」 「了解。 今の爆発は、レーサー、ハユーが乗ったジーク・ル・トリの衝突によるもの。 これにより、このレーサーはリタイアとする。」 ちょいと驚いたな・・・ まだ一周目だってのに。 モーンストンバイクとぶつかり合いを繰返しながら進んでいると、俺は自分の目を疑うハメになった。 「なにぃ!?」 道がなかった。 が、モーンストンバイクの前にいたジーク・ル・テトラは、何事もないようにその崖を真っ逆さまに落ちていった。 が、遠くに見えるジーク・ル・テトラ・・・ということは、リタイアにはなっていないということ。 「この崖もコースかよ!! 知ってたけど、こんな急斜面だってのかよ!!」 モーンストンバイクは、躊躇した俺たちを置いていき、先に崖を降りていった。 物凄いスピードが出ている。 「くっそぉ!!ずんちゃん、つかまってろ!!」 覚悟は決まった。 そして、崖まで加速度マックスでつっこみ、そして 「うぁ・・・なんだこの浮遊感・・・」 自転車を漕いでて、急な下り坂を最大速度で駆け抜けてから短い上り坂を登った時の感覚がわかるだろうか。 そんな感じ・・・。 即ち、浮いている。 「ちょ・・・待った!!」 このまま落下はヤバイ!! なんか真正面に地面が見えてるんだけど!! 「ネコの原理だ。」 「なんだってぇー!?」 ガタガタ揺れる機体の中で、ずんちゃんが何か言った。 「ネコの原理で着地だ。」 「無理だよ!!」 俺は操縦桿を引っ張った。 「上昇だぁー!!」 そして、シフトフランカーは、地面との角度を滑らかにして、 ガタン、と・・・ 「着地・・・」 成功、と思っていると、目の前に岩壁が!! 俺は焦って操縦桿を切って、右側に寄った。 道が細くなっている。 ちょっと間違えただけでも壁にぶつかってボンだ。 そんな狭い道のなかでのカーブ・・・ なんとか切り抜けた。 モーンストンバイクと、ジーク・ル・テトラが見えてきた。 そして、右カーブ!! 道が、太くなったと思ったら再び狭い道!! このS字カーブをなんなく越えた頃には、ジーク・ル・テトラも、モーンストンバイクも追い越していた。 ずっと進んでいく。 幾度かカーブがあったが、そこまで難易度は高くない。 道が太くなる。 そして、この辺りだ。 遠くに工場が見えてきた。 そして、排気口も見えてきた。 「入るぞ!!」 鉄柵を避けて、排気口に進入。 岩壁ではなく、地面も壁もない筒形の鉄。 ここで操作を誤っても、壁にぶつかる、ということは、ない。 なにせ円筒だ、壁に寄ったところで、側面走行になったり、天井を走行することになるだけだ。 だが、そうも言ってられなくなった。 円筒に、直角につながったもう一本の円筒。 見る限りそこは、今の円筒よりも太く、何機も通れそうだが、中心に鉄の棒が通っていて、 それについたプロペラが数基、回っていた。 ゆっくりと回っていたが、油断はできない。 それにぶつかって、どこかが故障するだけならまだいいが、正面から当たってしまえばボン、だ。 その円筒に進入、カーブして、鉄の棒に沿って進む。 プロペラをかわしながら進む。 また直角につながる円筒。 そこにもプロペラが。 カーブ。 した瞬間、横からプロペラが当たった。 「・・・」 「・・・」 「爆発しないな」 「・・・ヒヤッとしたぜ」 機体の後ろを掠めただけで助かったらしい。 そしてプロペラを避けながら進む。 また垂直に繋がる円筒・・・だが、次のは、垂直の意味が違った。 縦に垂直だった。 こっち側から見ると、坂道のような台が置かれている。 どうやらあれをつかって円筒を上っていけ、という意味らしい。 「加速だ。速度がないと、落下するぞ」 ずんちゃんに言われて、俺はシフトフランカーの速度を上げた。 一気に行って、坂台を使って、円筒にジャンプ。 見事成功。 だが、ジェットを吹かし続けないとそのまま後ろに落下だ。 真っ直ぐ、真上に向かっていく円筒を抜けると、工場の貨物倉庫に出た。 そこはトンネルのように天井がアーチ型をしていた。 そこを抜けると・・・金網の橋。 壁も手すりもない。 コースから外れれば真っ逆さまに落ちてデザイアーだぜ。 「慎重にな。」 「わかってる。」 ずんちゃんと会話して、金網の上を進む。 カーブする。 ドリフトして、落ちそうになった。 「ヒヤッとしたぜ」 「そうだね・・・」 猛スピードでそこを抜けて、再び岩壁のコースに出てきた。 地面も土で、最初にいたコースと同じ。 そこからは比較的太いコースだったので余裕だった。 「パネルが表示された。 フジワラ選手と曲夜選手が一位二位を争いながらスタートラインを通過。 二週目に突入した。」 「何!?」 速ぇ・・・。 だがそんな遠くに行ってないはず。 ここからいくつかカーブを曲がっていけば、スタートラインに出る。 「ローリィ選手がコースから外れた為、棄権、 クルッチョプワ、ノーレル選手共にスタートラインを通過。 そう表示された。」 「OKってーと・・・俺たちは今五位か。」 ニヤけてみる。 一番広い道に出てきたと思ったら、コース外側に、観客席が見えた。 VIP席もあるようで、それはきっと、観客席の一番下、つまりコースに一番近いところだろう。 司会解説のレッペンソンは、観客席の中央にいた。 今でも実況してるだろうけど走ってる俺達には聞こえない。 というか聞こうと思えない。 集中力を少しでも欠くと、その時点で待っているのはおそらく死。 スタートラインと、その右側にPITが見えた。 「どこも壊れてないからPITは行かなくてもいいよな。」 「うむ。」 スタートラインを通過。 それと同時にパネルに表示される。 「タロイモ&カズカシマ選手、スタートラインを通過。 だってさ。」 ずんちゃんが教えてくれた。 しばらく道なり・・・そして左カーブ!! 一気に曲がって・・・ 「見えた!!」 ブラックセンコーとオイルフェイバーが、並んで走行しているのが見えた。 シフトフランカーの速度をあげる。 「ちょっと待った、今速度を上げたら次のカーブが!!」 ずんちゃんの言うとおりだが、ここで一気に差をつけられても困る。 カーブに入る直前まで、最高速度で突っ込んで行ったが・・・。 前にいた二機は、追い抜くことができなかった。 「くっそ!!」 「ブレーキだ!!」 ジャンからは、教わらなかったが、シフトフランカーの点検中に説明書が出てきたのでブレーキの仕方は知っていた。 再びお目見えの下り崖。 「慣れればジェットコースターみたいなもんだろ!!」 「慣れればな・・・。」 そのとき、パネルに再び表示が入った。 「ガブバモ選手が乎疳圃選手を追い抜きながらスタートラインを通過。 この二機で争いながら走行中。とのことだ。」 「まだ生きてたのか、ガブバモさんとやら。」 どうもあれは操縦が下手に見えてしまったが。 「崖だ!!降りるぞ!!」 そのときには、すでに、ブラックセンコーとオイルフェイバーには並んでいた。 三機同時に崖を下る。 そういえば、結局、観客席に見えたのはあん王女とかえでっちだけだった。 シホとへーじょーがいなかったのが不安要素だな。 ---へーじょーside--- 睡眠薬で眠らされた後、気が付いた場所は、やっぱりキング・ローチの事務室兼別荘の部屋ではなかった。 残念ながら。 予想はついていた。 あいつが赤の男と言っていたことから推測した通り、大理石の床がある場所。 俺は、上体を起して周りを見た。 シホが隣に、涼子さんが前に、先生が後ろに寝ていた。 俺は、すぐ隣にいたシホの体を揺すった。 「おい、シホ、起きろ・・・おい。」 「ん・・・?」 急に驚いて、「ヒッ」と言って、俺に抱きついてきた。 「ちょ・・・シホ・・・?」 「えっと・・・あ・・・」 自分が何をしたのか気付いたらしく、顔を赤らめてキーボードを取り出す。 「スタァーティーッ!!」 俺はそのキーボード攻撃を避けることもガードすることもできず、思いっきり頭で害をもらってしまった。 「痛いよ・・・」 俺は言って、シホを睨む。 「あ、えっと、急に抱きついてくるから!!バカ!!」 抱きついてきたのはおまえだろ!!バカ!! 俺はつづいて、涼子さんと黒吾耶先生を起した。 「ほななー」と、欠伸(?)をして、背筋を伸ばして立ち上がった涼子さん。 「ボナセーラ」と言いながら飛び起きた黒吾耶先生。 今はまだ夜ではないですよ、とツッコミたかったが、ここには時計がないので確信できない。 俺はただ、「ボンジョルノ」とだけ言った。 俺はここに何度か来たことがある。 レッドピンが出てくる場所だ。 周りにはギリシア神殿などにある円柱が何本か立っていて、 俺たちが今いる大理石のチェック模様の床を囲んでいる。 円柱を隔てた向こう側は、何もない空間になっている。 床も、壁も、天井も、光もない空間がずっと続いている。 しかし、光がどこにも見当たらないのに、なぜかこの床の上だけは明るい。 「久しぶりだなブラックヴァロン!!」 声がしたが、どこにもいない。 黒吾耶先生は、その声を聞いた途端、目つきが悪くなった。 「挨拶ならちゃんと姿を見せてくれよ・・・レッドピン!!」 黒吾耶先生は、辺りを警戒する。 そして 「伏せろ!!」 俺と、シホと、涼子さんは、咄嗟に床に伏せた。 黒吾耶先生は、ただ両腕を胸の前でクロスさせただけだった。 「くっ・・・」 黒吾耶先生の体が吹っ飛んだ。 「判断が速いな・・・。」 そして、そいつは現れた。 どこからどう登場したのかわからない。 さも、ずっと前からそこにいたような、そんな感じでそこにいた。 赤いハンマーを持って。 「聞いたぜ・・・てめぇ、マトリオシカに寝返ったんだってな。」 「ああ、そうだぜ」 「で、稼ぎは?」 「宇宙探偵時の軽く倍。」 その言葉を聞いた途端、黒吾耶先生の顔色が変わる。 そして、顎に指を当てて何か呟きながら考えている。 「あの・・・先生・・・」 俺は先生に声をかけた。 「あ、バ、バカ、勘違いすんなよ、 別に俺もマトリオシカに寝返ろうかなーなんて考えてたわけじゃねぇんだぞ。」 「・・・」 なんて現金な先生なんだ。 教職どうすんだよ。 「さて」 と言って、黒吾耶先生はレッドピンに対峙する。 これから何かが始まる。 それは俺も、シホも、涼子さんも分かっている。 今の黒吾耶先生はいつものすっとぼけた先生じゃないってことが見て取れる。 今は・・・かつての宇宙探偵、ブラックヴァロンであるのだろう。 そして、先生は、人差し指を何もない空に向けて、 「我が力を信じ」 言葉をつむぎながら 「我が声に耳を傾け」 指を指揮棒のように振って 「我が精神の泉より聖水を溢れさせよ」 唱えた。 「アックスブレード!!」 一瞬、ほんの一瞬で何が起きたのかわからなかったが。 推測して言うなら、何もないところから、剣のような斧のような武器が出現して、 それを先生がつかみ取りながら、そのままの勢いでそれをレッドピンに向けて振った。 レッドピンは、驚きながらも、その斬撃を回避した。 「へへへ・・・ 俺のフューチェンハンマーとおまえのアックスブレード、どっちが強いかな・・・。」 レッドピンは、ハンマーを先生に向けながら言った。 俺はやっと、アックスブレードの、形容を視認した。 黒い長い棒の先に、斧のような接続部があり、斧自体の刀身は、従来品と比べるととても長く、細かった。 まるで剣のように。 その刀身は、先生が持つ棒の取って辺りまで伸びていた。 なるほど、だから・・・アックスブレード。 斧の先端と、持ちやすさ、それプラス、剣の攻撃範囲と攻撃のレパートリー。 見た目はどうも物騒な武器だが使いこなせば最強と言えるかもしれない。 「くらえ!!」 先生はアックスブレード振り上げ、そしてレッドピンに向けて振り下ろした。 レッドピンは、ハンマーの柄でそれを受け止めた。 「待てよ、一応聞いといてやる。 なんでおまえがここにいるんだ?」 「キング・ローチと契約したんじゃないのか?」 レッドピンは、先生を突き飛ばして離れた。 「待て、俺はそんな覚えは・・・契約? キング・ローチが? あいつは俺のことを・・・買ったのか?」 「おまえの姉も、城にいたそうだ。」 先生は実際にオードルデュを見ていないからそう言うしかなかったのだろう。 「ふざけるな!!冗談もそのぐらいにしておけ!!」 レッドピンは、ハンマーを何もないところで振るった。 先生はそれと同時にアックスブレードの柄を両手で持って、何かをガードした。 何が当たったわけでもないのに、金属音が響いた。 そうか・・・あれが俺も喰らった攻撃・・・ 種がバレてしまえばなんということはない。 「おまえの攻撃は、ハンマーを振ったとき、おまえが思った座標への攻撃になる。 当たっていないのに、攻撃を喰らった、そういうことだったが、 おまえが座標を決めるのはハンマーを振る直前、即ち・・・ おまえがハンマーを振った瞬間にその座標を外れればいいだけだ!!」 黒吾耶先生は、そう言ってから剣を振るった。 ほんの三回ほど。 まさか・・・先生もレッドピンと同じ力を・・・ 「何をやっているのだ?ブラックヴァロン。 おまえには、俺と同じ能力は使えないぞ。」 レッドピンが言った。 どうやらただのコケオドシだったようだ。 「あ?おまえと同じ能力なんか使わねぇよ。」 先生は、言いながら歩いて、そして剣を振り回しながら、レッドピンに近寄っていった。 ゆっくりと。 「おまえは、座標に打撃を移転する。 そして俺は、座標に斬撃を・・・残す!!」 先生は、レッドピンの背後に回った。 剣を振り回し続けながら。 案の定、レッドピンは、その斬撃をよけたわけだが。 背後にステップした瞬間、肩が斬れた。 「なにっ!?」 まるで剣で斬られたかのように。 「おいおい、種明かししたのに、早速、罠に掛かっちゃダメじゃん。」 先生は、剣を手品のように消して、言った。 「武器を仕舞うな!!まだ決着は・・・」 言った瞬間、 「決着ならついたよ」 レッドピンの体中から血が噴出していた。 服の袖やら、ズボンやらが、綺麗にスパッと裁断されたように、ハラハラと床に落ちていく。 レッドピンの肌には、赤い血の、線が何本も通っていた。 「く・・・あ・・・」 レッドピンが最後の一撃を、と思ったのだろう。 ハンマーを振り上げてみたが・・・その瞬間、両腕がボトリ、と。 床に落ちた。 そのあとは、肉体がバラバラに散っていった。 「よし、シホ、ここで決め台詞だ!!」 勝ったのはあんただろ。 「この杜若志穂の前では、夏の世の夢の如し!!」 シホもばっちり決めてんじゃねぇ。 と、レッドピンを倒した時。 女の人が現れた。 体が半透明で、幽霊のようだった。 彼女は・・・オードルデュ。 レッドピンの姉。 「ありがとう・・・」 そう言って、彼女の姿は煙のように消えた。 そして、大理石の床が揺れて・・・ 「地震!?」 「いや・・・崩れるぞ!!」 円柱がガタガタと崩れて、そして床も端の方から奈落の底に崩れ落ちていった。 俺たちはなんとか落ちないようにと、中央に固まった。 が、それも空しく。 「っ・・・!?」 「わぁー!!」 崩れた床ごと落下していった。 そして・・・気が付くと、目の前には、キーボードと、半球、そしてモニター。 戻ってきたのだ。 そして俺が上体を起すと、キング・ローチがシホの体に何かをしようとしていた所だった。 「おい変態王様」 「ひやっはぁ、ビクゥ!?」 ビクゥって口で言うなよ。 「べ、別に俺は・・・何もしようとしてないぞ・・・」 と、言い終わった瞬間、スッと、首元に刃が覗いていた。 「な、何の真似だ」 キング・ローチの後ろには、涼子さん。 薙刀の切っ先をキング・ローチの首にかけていた。 「俺を殺してもおまえの仲間は戻ってこないんだぞ!!」 涼子さんは、それでも、悲しそうな顔をして・・・ そして憎悪をキング・ローチに向けた。 「おまえは、あの世でカーンに詫びろ!!」 そう言って薙刀を振るおうとした。 だが。 俺はそれを、ただ見守るだけとはいかなかった。 「ダメだ、殺しちゃいけない!!」 俺は涼子さんの薙刀の柄の部分をつかんでいた。 「なんで!?怜治くんも見てたでしょ?」 泣き出した。 そして、関西キャラも忘れているようだ。 「こいつは絶対に許せないのよ!! あなたには他人事だからいいのかもしれないけど、私には!!」 そして、薙刀を思いっきり引っ張る。 俺はうっかりその薙刀を放してしまった。 「おーう、君、広鵬屡ちゃんてーの?ん?」 黒吾耶先生がそう言った一言で、キング・ローチを殺そうとした涼子さんの薙刀は止まった。 見ると、先生は耳に通信機を当てながら誰かと喋っていた。 「なぁなぁ、温泉旅行、俺も誘ってくれないかなー?」 なんか口説いてるし。 涼子さんは、黒吾耶先生から通信機をふんだくってすぐに自分の耳につけた。 「・・・」 『今の男だれー?』と、俺にも聞こえた。 それは女の人の声だった。 恐らく、涼子さんがカーンと呼んでいる相棒、広鵬屡さんだろう。 「生きてたの?」 『もう本気で死ぬかと思ったよ・・・だけど脱出してさ、降りたところがなんと。』 と、そこで止まって。 「ゴキブリの巣」 そう聞こえたのは、通信機ではなく、すぐ近くから。 俺たちが入ってきた扉が壊されて、中に、武装した人たちが何人も躍り出てきた。 「JSOだ!!キング・ローチ、貴様を逮捕する!!」 「へ?」 驚いたのはキング・ローチよりも、涼子さんだったらしい。 もちろん俺もシホも、おそらく黒吾耶先生も驚いていたが。 「カーン!!」 「リョーコ!!」 涼子さんは、その女の人と抱き合って、その場でしゃがみこんだ。 その後、キング・ローチは、あっさりとつかまってしまった。 「さて、俺たちは、さわちゃん達の応援でも行きますか。」 そして、俺たちはレース会場に向かった。 観客席には奴隷である人間も、ゴキブリも、共存して、応援していた。 地上では、世界平和が叫ばれているけれども、ここでは、ゴキブリも人間も変わらないんだな。 ただ、ここのゴキブリと見られるローチ族は、新聞紙を丸めて叩いても死にはしない。 真剣白刃取りで止められてしまう。 俺たちは、すぐにかえでっちと、あん王女を見つけた。 応援旗を二人で掲げていたからすぐにわかった。 「どう?」 「あ、へーじょー!!」 嬉しそうにかえでっちが言った。 「すごいよ、すごいよ!! 今ね、さわちゃんとずんちゃんは、ワイルドウィンドキャトーヴァンシスって機体と、ホィールスターっていう機体、 この三機で争ってるんだよ!!」 「で?今何週目?」 と、シホが強い口調で聞いた。 なんか怒ってる・・・? 「四週目!!」 そして、近くにあったモニターを見る。 それには、コース内に設置されたカメラの映像を写しているのであろう。 シフトフランカー、ワイルドウィンドキャトーヴァンシス、ホィールスターが競っていた。 そして、目の前のコースに、その三機が飛び出してきた。 「来たっ!!」 かえでっちが言った。 「三機ならんでゴールラインを目指します!! さぁ誰が一番だ!!誰だ!!誰だ!!」 ナレーションがうぜぇ。 「ゴール!!」 結果。 三位、ホィールスター、二位、ワイルドウィンドキャトーヴァンシス。 そして・・・一位。 さわちゃんとずんちゃんが乗る、シフトフランカー。 後日談 戻る