外宇宙通信コミュニケーション研究部 学園編 第一話 ケーキ&コーヒー

今、現代国語の授業で、作文を書いている。 テーマは、何かというと、「冬休みについて」だそうだ。 まぁ俺はあの洞穴騒動があったから、書くことに困りはしなかった。 だがな、高校生にもなって作文ってなんだよ。 論文ならわかる。 作文は、そのことについての感想、つまりレビューを書くわけだ。 論文は、筋道立てて、理屈に沿って、そんでもって起承転結、自分の意見を叩きだすわけだ。 作文の「冬休みについて」は、 「僕は、スキーに行きました、面白かったです」みたいなもんだ。 論文は、 「冬休みという学生に与えられた休暇期間は、遊戯などによって堕落する為の休暇ではなく云々」言って、 そういうもんだろ。 俺も論文は得意じゃないから、説明はできんがな。 ったく、恥ずかしいったらありゃしない。 本当はこんなこと書きたくないんだ。 「僕は、スキーに行って、洞穴を見つけた部長についていくと」とそんな感じだ。 誰も信じない、以前に笑いものだ。 だが、部長命令で、通研メンバーたるもの、作文にはこれを書けと言われた。 キーボードクラッシュされたくないからな。 ・・・・・・ シホ・・・ 俺は、自分の想像に浮かべたシホの顔をかき消した。 こんなこと考えてないで作文を書かなきゃな。 作文を書き終え、提出した後、部活まで時間があったので、 カフェで軽く食事を取ってから行くことにした。 俺は、口笛でも吹きながらカフェに行こうと思った。 思っただけで、恥ずかしいから実際には吹いてはいない。 悪い気分ではないからな。 好きな人ができるってのが・・・こんなに・・・ 「違う違う違う!!」 俺は首を振って訂正した。 周りの人が、俺を不審がっていたが、気にしない。 もっと怪しい奴だっている。 文化祭の時に小耳に挟んだ六人兄弟だとかいう胡散臭い仲良しこよし、 あれこそ怪しい存在だろうによ。 本当に六人兄弟だったら、名前にみんな松とかつくのだろうか。 そんなことはどうでもいい。 俺は軽やかな足取りでカフェに入った。 ウェイターさんと言ったらいいのか、メイドさんと言ったほうがいいのか、店員が、席を案内してくれた。 その店員とは結構ここで会っていて、俺のお気に入りの席も知っていて、今日もそこへ案内してくれた。 「いつも一人なんだね。」 「はい。」 「ご注文よろしいですか?」 「常連なんだから、敬語使わなくてもいいよ。」 「注文よいか?」 「・・・」 メニューを見て、新しいお菓子があったので、それを注文することにした。 「うぇどぞん、それとドリンクバーね。」 「以上でよいな?」 「お、おう」 「ファイナルアンサー?」 「ファイナルアンサー。」 「ドリンクバーあちらにありますので、ご自由に取ってください」 「・・・はい。」 なんか途中から気が抜けたな。 まぁいい。 俺はそのウェイターが去った後、ドリンクバーの台に行って、コップ一杯のマンゴージュースを入れて席に戻った。 久々のマンゴージュースだ。 ・・・うん、美味しい。 この味がいいねと言ってしまったら、俺の場合、週に一回はマンゴーデーなるものが存在することになる。 さっきと同じウェイターが、俺の注文した「うぇどぞん」を持ってきて、テーブルに置いた。 「以上でよろしいでしたか?」 「はい。」 「では、ごゆっくり」 やっぱり敬語の方が慣れてるんだな。 俺は、金色のフォークを皿から取って、うぇどぞんを見る。 見た目は、モンブラン。 和訳して白い山。 円錐型のマロンケーキを頂上付近でばっさり水平に切った上に栗を乗せ、その上から マロンクリームをひも状に延ばしてぐるぐると山を下山。 今思ったがどこも白くねぇ!! モンブランめ、騙しやがったな!! とにかく食べてみる。 「・・・」 美味い。 そして、ウェイターがさっき置いてったであろう裏返してあるレシートを見つめて、 俺の心拍数はあがった。 やべぇ。 軽食食いに来て豪勢なデザート頼んでくれちゃったよこの怜治くんめ!! 恐る恐る、レシートの表面を見る。 「え・・・?」 100? 100円? そんな馬鹿な!!いや、でもこれはラッキーか!? なんか違う、ドリンクバーだけでも200円だぞ!? あのウェイターさんの奢りとか? そうかそうか!! 俺は浮かれてケーキをぱく付いた。 おっといかん、上品に食べなくては。 俺は、ケーキを食べるのにドリンクバー(マンゴージュース)とテーブル間を四往復した。 「最高・・・」っと、いかん。 声に出てしまった。 食べ終わった俺は、ゆっくり外の景色を堪能し(約十秒)、 それからレジに向かった。 そして例の物を渡す。 「ふふふ、100円か」 などと呟いてた俺は思い返すだけでも、気持ち悪いことこの上ないだろう。 目の前にいるあまり可愛くない、店員よりも。 「お会計1000円になります。」 「ふふ・・・え?」 ちょっと待て桁が違う!! 読み間違えてんじゃねぇよ、ブス!! 「あの、100円じゃないんですか?」 「いえ、違います、ホラ」 俺がさっき渡した紙を出してきた。 受け取って見てみる。 「やっぱり100円ですよ」 「あ、持つ手を変えてみてください」 ハハハ、やだなぁ、俺、親指に隠してただけってことかい? ・・・・・・ うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!! 恥ずかしい、恥ずかしいことこの上ないぞこの野郎!! 「せ、千円ですね・・・」 俺は渋々、財布から千円を取り出してブスに渡した。 グッバイ、ノグチ。 さて、時間も金も潰れてしまったわけだが、そろそろ部室に行こうか。 そう思っていたときだった。 「なにさらすんじゃボケ!!」 怒声が聞こえる。 さっき俺に「うぇどぞん」を運んでくれたウェイターさんが、何やら言われていた。 「申し訳ございません!」 「謝って済むとでも思っとんかわいわいやー!!」 途中から何を言ってるのかわからない。 俺は、野次馬のごとく、接近してその人物を見た。 「うわっ、古ッ!!」 そこには、お口や心よりも先に頭が意思表示をせんと、出っ張ったアレ。 リーゼントって奴だ。 しかもサングラス着用、学校指定ではない学ランを着てるのが三人席についている。 一人、立ち上がってウェイターさんに詰め寄っていた。 よく見ると、学ランに飲み物をこぼした跡が。 こりゃ怒るだろ・・・ でも黙ってみてるのも、そう思った俺は果敢にも接近を試みたわけだ。 俺は、学ラン三人が座るテーブルの前までしゃがみ前進で到達した。 「大佐、目的地に到着した。」 そいつらに聞こえるように無線の真似をしてみた。 一同、俺を見る。 怒って立ち上がってた奴も俺を見る。 ウェイターさんも口を半開きにして、俺を見る。 そんなに見ないでくれ恥ずかしい。 しばらくの沈黙があったあと、俺は普通に立ち上がり、そこの椅子に腰かけた。 「なにやっとんじゃこら!!」 怒られた。 「どこの生徒?」 俺は普通に聞いた。 「帝真学じゃ!!文句あっか!!」 制服着ろよ。 「そっちの兄さん、なんでウェイターさんに怒ってるの?」 聞いてみた。 「コーヒー零されたんじゃわれ!!」 われってなんだよ。 「あーあ、そら怒るよね。 うん、わかる。 お気に入りの服をべしゃべしゃにされて、怒らない奴はいないだろうね。」 俺は言った。 「そう思うだろおまえも。」 学ランが俺に同意を求めているようだ。 だが、ここで俺はおまえらを挫いてやるんだ、悪いな。 「だが、あんた本当に、自分で零したんじゃなくて? ウェイターさん、どういう状況だったの?」 学ランの奴等がキレてるのがすごくわかる。 「えっと、コーヒーを出そうとしたら、この方が立ち上がって、 そのときに、ぶつかって、零してしまいました。」 ・・・・・・ 「これは・・・どっちもどっちだな。」 「なんじゃとこらうぇいうあいうあ!!」 ちゃんと喋れ。 俺の耳が追っつかない。 「で、弁償しろって言ってるんでしょ?」 「そうじゃこら!!」 「ウェイターさん、謝ってるじゃないですか。 このぐらいの染み、クリーニング屋にでも出せば普通に消えますよ?」 「なんじゃとこら!!」 「ウェイターさんも。 罪の意識とやらを感じているなら、謝るだけじゃなくて、クリーニング代を出すとか、 しっかりしてくださいよ。」 「あ、はい・・・」 「二人ともね、大人になんなきゃダメなんだよ? わかるかー?これからの社会は厳しいんだからよ。 コーヒー零したぐらいでこんな大騒動にしてちゃ、世話焼けるよ。」 俺は言いながら、学ランたちの前にある物を全て食べた。 「それじゃ」 学ランに捕まりかけたところ、ジャンプで緊急回避。 「勘定は任せたよ!!」 俺は身を翻して逃げた。 「はぁー、なんか面白いことないかねー」 シホが何やらブツブツ言っている。 部室の机に頬杖をついているシホの表情は、やっぱり可愛かった。 ・・・・・・ いやいや、ないないない!! そんなこと一つも思ってない!! シホは、キッと、俺を睨んだ。 読心術でもあんのか!? 「へーじょー、なんかない?」 「え?なんだ、なんもないぞ。」 違ったか、と思い胸を撫で下ろす。 「さわちゃんは?」 「特になし。」 「かえでっちは?」 「な、ないよぅー・・・」 「ずんちゃんは?」 「ない」 「あん王女・・・」 「みぃーん」 充電中かよ。 俺は、ふと、思い出し、シホにカフェでの一件を話した。 千円を一桁間違えたところはカットして。 「へぇー、リーゼントねぇ。 今時変わった奴もいるもんなのねぇ。」 おまえも充分変わってる。 「今度、私もカフェに行くわ。 部活の時間を使ってね。」 来週は、カフェの集合にでもなりそうだな。 今日はこれで解散か。 「何かあったら電話頂戴。」 「了〜解」 何を張り切ってるんだろうな、シホは。 俺は、昇降口を出て、普段の道のりで家に帰る。 と、正門を出てすぐの時。 夕方だが、冬ということもあって、やっぱり暗くなるのが速かった。 曲がり角で待ち伏せていたらしい、人影が、二、三人現れた。 俺の方に向かってくることから、どうやら俺が目当てらしい。 「やれやれ・・・」 俺は鞄を置いた。 目の前の二、三人を見ながら、携帯電話で電話を掛ける。 「シホ、正門前――」 言おうとした時、目の前に閃光が走った。 後頭部に痛みがあった。 直後、俺は地面に顔を伏せて、倒れていた。 背後にもいたのは、気付かなかった。 油断した。 俺の目の前は、真っ暗になった。 戻る