外宇宙通信コミュニケーション研究部 学園編 第二話 逃走!!
どれだけ気絶していただろう。 俺は、気が付くと、知らぬ部屋にいた。 手は背後に縛られて、足も縛られていたから、動けなかった。 ・・・ 一体何があった? 俺が何をした? とりあえず、現状把握を優先する。 周りには、鉄のラックがあって、そこに段ボール箱が入っていたりする。 何かの資料室か倉庫だな。 俺は時計を探した。 だが、もちろんそんなものも見つからない。 なんとか這って移動したはいいものの、出口が見当たらないのが痛いな。 今気付いたが、部屋は電気がついていて、明るかった。 朝だとも思っていたが、窓の数が少ないのと、それぞれが小さかったことから、 朝でもここまで明るくならないだろうと考えた。 俺は、縛られた足を見る。 普通のロープで普通に縛られている。 何故俺がこんな目に・・・ 人質か何かか? 俺がラックに寄りかかって考えていた時、ドアが開く音がした。 そして足音が近づいてくる。 俺の正面にあったラックの後ろから、男が、俺と同年代ぐらいの男が現れた。 「こんにちは。いや、今はこんばんは、かな。」 男が言った。 男の身長は、俺と同じぐらい、そして服装はなんと、帝真学公課総学科高等科の制服!! 現在の俺の服装と同じ。 顔は至って普通。 どこか俺と似通った所もあるが、同じではない。 が、なんとなく気分が悪くなる。 「口まではふさがれてないはずだぜ?」 男は、近づいてきて、言った。 「俺に何の用だ」 俺は、怒って言った。 なんとなくだが、口調が目の前の男と似ていたことが気に食わなかったが。 というか恥ずかしかったが。 「一体ここはどこだ」 間断なく俺は問い詰めた。 「あー、安心しろ。 別におまえを人質に身代金を取ろうとかじゃないから。 ここだって学校の中だぜ。」 男は言った。 「実を言うと、だな。」 男は、俺の前に屈みこんだ。 「俺はおまえを助けに来た」 嫌な笑顔で、囁いた。 どこか悪魔的な笑みだった。 俺は、意味が全くわからなくて、男を睨んでやった。 「わからなかったか?」 男は言った。 俺が怒ってるとは、思わなかったのだろうか。 「俺は、おまえとは、こんな形で出遭いたくなかっただけさ。 敵になる相手でも、演出がよろしくない。 それで、助けて欲しいか?」 俺は、頷いた。 「わかった。ロープが解けたら、俺を突き飛ばしていけ。」 小声で言った。 一体、何が起きているんだ? すぐに、足が解放された。 男は、自前のカッターナイフを使っていたのだ。 俺は立ち上がり、彼に体当たりした。 彼は、わざと背後に飛んで、倒れてみせた。 「ぐあっ!!」 痛くも無いのに叫んでいる。 俺は、その一刹那に受け取ったカッターナイフで後ろに回された手のロープを切った。 「くそっ!!」 俺は、男が一度顔を背けたのを見逃さなかった。 そっちの方向には、ドアが。 出口があった。 男が立ち上がり、そして俺を追いかけてくる。 俺は咄嗟にドアの方に飛び込んでいった。 ドアまでは、結構な距離があった。 ラックを図書館の本棚のように並べてできた道が、ドアまで続いていた。 俺は、ドアを開けた。 廊下だった。 ここは学校の廊下だ。 今、俺が出てきた部屋は、資料室だった。 廊下の窓の外では、野球部か、ソフト部の連中が片付けをしていた。 とすると、俺が気絶してからは、それほど時間がたっていない、もしくは、 一日ぐるりと回ってしまったかのどっちかだった。 俺は、ドアを閉めて、廊下を、左右の奥を眺めた。 こんなことしている場合ではない。 俺は、適当に走り出した。 さっきの男がドアから出てきて、走ってくる。 俺のペースに合わせているらしい、追いつく気が全く感じられない。 「ちょっと!!」 目の前に女子生徒がいた。 これも高等科の制服。 その彼女が、俺を見て唖然としていた。 が、すぐに平静を取り戻し、俺の方に向かってきていた。 「なんなんだよ・・・」 俺は、身を翻し、左足で思いっきりブレーキ、ターンして、階段を見つけて降りる。 全速力で。 「とりあえず・・・一階だ!!」 俺は、叫びながら階段を駆け下りた。 何階分降りたか分からなかったが、昇降口まで降りてきた。 だが、いつもの昇降口ではない。 何かが違う。 俺は、走っている自分の足が靴下だけなのに気付いた。 昇降口には、靴が置いてある・・・。 俺は近づいてそれを確認した。 間違えなく、俺の靴だった。 それを履いて外に出てみる。 やっぱりここはいつもとは違った。 外に出て、辺りを見回して、やっと理解した。 「ここは・・・中等科!?」 どうしてだ?さっきまで高等科の連中に追われていたのに。 俺は、追われていたことを思い出して再び走り出した。 と、ここで思い出す。 しまった。 鞄忘れた。携帯電話もない。財布は・・・中身も残っている。 「おい!!」 上の方から、声がして、見てみると、顔面に何かが落ちてきた。 「―――っ!?」 俺は怯んで、ケツをついてしまった。 「これは・・・」 俺の鞄だった。 中を確認すると、携帯電話も入っていた。 上を見ると、さっきの男が、窓から顔を出して手を振っていた。 俺の姿を確認するや否や、男はすぐに窓を閉めてしまった。 「なんなんだよ」 俺は鞄を持って立ち上がり、正門を目指す。 何が起こったかわからないが、今はとにかく、正門へ行かなければ。 俺は走り出した。 中等科の校舎からはすぐに、正門前に到着した。 シホは、来ていない。 「くそっ!!」 「誰がくそですって?」 振り返ると、そこにはシホがいた。 「あれ?今いなかったのに・・・」 「・・・」 シホは、俺に近づいてくるなり、顔や服など、色々見始めた。 「怪我はないみたいね。」 「あ、おう。 それよりも今は、早く逃げようぜ」 「一体何が起こってるの?」 「話は後だ!!」 俺は、背後から昼間の不良達が追いかけてくるのを視認した。 俺とシホは、正門を出て、曲がり角を曲がってそこで連中をやりすごした。 「どこへ行った!!」 「そっちだ!!」 叫びながら、俺達の目の前を通り過ぎていく。 電柱なんかに隠れてたってすぐにバレるだろうと思っていたが、 これが案外、効果絶大だった。 「で、なんで俺の部屋に?」 「さあ。」 今現在、俺とシホは、俺の部屋にいた。 こんな夕方に女友達を連れ込む息子がいるなんて思ってもいないだろうな、両親は。 今、出掛けてるし・・・ 「おう、怜治。」 言って入ってきたのは、俺の義姉。 俺が幼少時の頃、ここに来たらしいが、そんなことは覚えていない。 「なんだ、彼女いたのか・・・」 少々口が悪いが、空気を読んで撤退してくれるのはありがたいものだ。 ドアが閉まった。 「あれ誰?」 「ああ、俺の義理の姉だよ。」 「へぇー・・・」 義姉の彼女発言には何も言わないのかよ・・・。 「話を整理するとだな。 逃げていた俺達、逃げに逃げて、部長も一緒に俺の家に。 さて、今は何時だ。」 「七時半」 「そうだよ。 よかったよ、親父達が出かけててよ。」 シホは、俺の顔を見ていた。 「なんだ?俺の顔に何か付いているか?」 「何があったの?学校で。」 なんだ、そのことか・・・ 俺は、窓から外を見た。 家の前の道には誰もいない。 これなら話せるか。 「何があったのか、俺もよくわからないんだが。 俺が部活を終えて帰宅しようとした。 そしたら男か女かわからないけど・・・四人、人が出てきて。 俺が襲われそうになって、シホに電話を掛けた。」 シホは頷いた。 「シホ、正門前、って言ってたから、数学の補習を受けてまだ学校に残っていた私は、正門に急いだ。 でも、へーじょーは、いなかった。」 「そこで気絶させられて、中等科の資料室に監禁されてたんだよ。」 シホは、驚いていた。 「事件性大ね。 これからも何かあるかもしれないから、気をつけなきゃダメよ。」 おまえに言われたくない・・・。 「一体、俺の何が目的なのか、それは分からないが・・・」 「カフェ・・・」 シホが呟いた。 「カフェでの一件、あったでしょ? その仕返しに・・・って」 「それは違うよ。 あいつらとは無関係だ。 あいつらの仕返しなら、俺は今頃無傷じゃないさ。」 俺は言って、一旦息を整える。 「それに、俺を誘拐・監禁したのは、何かの組織的な目的があったんだろうと思うよ。」 「どうしてそう思うの?」 俺は、監禁されていた時の状態、それから時間など、事細かにシホに話した。 謎の男の助けで、脱出をしたことも。 「なるほどね。」 シホは、親指を顎に当て、考えていた。 「この事件、これで終わりだと思う?」 シホが聞いてきた。 「いや、これが始まりだと思うね。」 「そういうこと。」 シホは、何かに自信を持っているように言った。 それから、一通り話をして、シホが帰ることになった。 「送っていこうか?女が一人で出歩くのは危ないぜ?」 「そうだね・・・でも・・・」 玄関で会話していたとき、義姉が俺に声を掛けてきた。 「なんだい、姉さん」 「ホラ、晩飯代・・・」 言いながら、俺の手に万札を握らせた。 「こんな大金」 「わたしゃね、今やフリーランスの鬼と呼ばれる女よ。 このぐらい、はした金よ。 あ、もちろん、トイチ。」 それが目的か!! 「冗談冗談。」 義姉が笑いながら言った。 「え?」 「持ってけドロボー」 「ありがとう。姉さん。 でも、姉さんはフリーランサーじゃなくてフリーターだよ・・・」 殺されそうになったが、さっさと玄関に逃げてきた。 「シホ、外で食ってかないか?」 「え!?」 思いの外、すごい驚いている。 「あ、無理か?」 まあ無理なら、すぐにこの万札を義姉に返そう。 「いいわよ。どういう風の吹き回しか知らないけど、 奢ってもらおうじゃないの。」 「OK。」 「え?嘘!?」 だから驚きすぎだっての。 俺とシホは、玄関を出て、近所のイタリア料理のレストランに向かった。 自宅を出てから数分、まだ都心部まで出てきてない場所で。 「ねぇ・・・」 「・・・うん」 俺は頷いた。 シホが早足で俺のほうに寄ってきた。 シホも気付いていたのだろう。 尾行者に。 誰だかわからないそいつに、聞こえないよう、注意して小声で話す。 「どうする?」 「街まで走る?」 「俺は大丈夫だけどよ・・・シホは?」 シホは、苦笑した。 「大丈夫。君よりは速いと思うから。」 小さくクスッと笑って、鞄を肩に背負い上げた。 走る準備をしたんだ。 シホが大丈夫なら、俺も走ることに・・・。 「行くよ!!」 シホは言って、俺の腕を引っ張った。 「え!?ちょっ・・・」 俺の腕を引っ張ってるのは手・・・じゃなくて、何かのコードだった。 腕にコードが巻きつけられている。 いつの間に? 俺たちが走り出すと、後ろの尾行者も走り出した。 「うわっ!!おいかけてきた!!」 無言でついてくる尾行者。 「なぁ、足手まといなら、俺を置いてってもいいんだぞ。」 言ってみたが、何も返答がなかった。 そうやって逃げてるうちに、都心部に出てきていた。 どうやら尾行者は撒いたようだ。 戻る