外宇宙通信コミュニケーション研究部 第四話 満月の夜
学校もあと数日で夏休み。 そんな今日この頃。 ボクはシホから要らぬ物を頂いてしまった。 いや、ことによっては要る物になるのか? 「夏休み中、我々研究部員の士気が下がらぬよう、 たまーに学校に来てもらったりする!! そして合宿も組んだプログラムがあるので、 その予定表を渡す!! スターティーッ!!」 と、思いっきり叩きつけられた物がこのA4の普通紙。 印刷だ。 先日、パソコンはシホによって破壊されたはずだが・・・ なんでだ? まさかもう一台あったのか? それとも壊したパソコンは実は偽者だったとか・・・ いや、考えるのはよそう、どうでもいいことだ。 所詮、シホの考えることだ。 「くしゅんっ・・・」 「風邪・・・?」 「そうかもね〜、あー、おかしい」 「・・・風邪には蜜柑を初めとした柑橘類のビタミンが有効・・・ 体に蓄積された加熱用エネルギーを燃焼させ、病原菌を消毒する・・・」 「あ、そうなの?とりあえず電話切るね、バァーイ」 「・・・なんでかけてきたんですか?」 ボクは机の横にある窓から外を眺めていた。 机の横にはパソコン、そしてベッドがある。 いつものボクの部屋だ。 部屋には天体観測用の望遠鏡、それから地球儀、 本棚には天文関係の本が何冊かある。 ボクの目は望遠鏡に向けられた。 たまには夜空でも眺めてみるか・・・ そういえば今日は満月だったかな・・・ 望遠鏡を組み立て、窓にセットした。 西側の空、思ったとおり満月。 青紫色の空に、白い水滴のようなのが ポツリポツリ浮いている。 今じゃ都会だと星もこんな少ししか見えなくなっている。 西の空の真ん中あたりに、黄色い玉が砂埃で汚れたような月が見える。 ボクは望遠鏡をのぞいた。 目視よりもそれは大きく見えた。 特段、輝いている、というわけでもない。 一瞬、月の真ん中に黒い点が現れたかのように見えた。 気のせい・・・か? と、電話がかかってきた。 「もしもし?」 「あ、へーじょー」 この声は現部長、シホ。 「今から学校集合ね。いい? あ、それから天体望遠鏡とか持ってる?」 「今ちょうどそれを覗いてますよ」 「それなら話が早いわ。 黒い点、見えるでしょ?」 まさか、シホも同じ物を見ているのか?と、考えてみたりした。 「学校集合って急ぎじゃないのか?」 「あ、そっか、じゃあそれ持って学校ね!! じゃーね」 切れた。 現時刻、21:45。 なんでこんな時間に・・・ とも思いながらも、本心は退屈でしょうがなかったはずだ。 そうだ、行って損をしたとしても、 行くこと自体が何かを得たことになるかもしれないんだし。 ボクは急いで身支度をして母親に学校へ行ってくると言い、 家を出ていった。 学校へついた。 が、学校のどこに集合かは聞いていない。 きっとシホのことだろうから、部室にでもいるんだろ・・・ ボクは校舎内の非常口から廃校舎へ行った。 ボクが部室にたどり着くと、電気がついたままだった。 中に入ると、ひとり、椅子に座っていた。 「・・・みぃーん」 「充電中か・・・タイミング悪かったな・・・」 あん王女が充電中だった。 なんとなく話しかけづらいので、椅子に座って待つことにした。 「・・・行きましょう」 「え?」 「・・・屋上に」 「あ、ああ。」 ボクはあん王女の言うとおり、屋上に行くことにした。 お待たせ、ともなんとも言わなかったな。 10分は待ってたと思うんだが。 そんなことより、屋上にたどり着くと、部員全員がいた。 「おー、来たな、へーじょー」 シホが気前良く出迎えてくれた。 「ささ、お荷物お持ちしますよ」 「あ、どうも」 シホはボクが背負っていた天体望遠鏡を担ぎ、 フェンスの近くまで駆けて行った。 って、望遠鏡欲しかっただけか・・・ だが、もう一つ、ボクのより大きめの望遠鏡があった。 一体誰のだろう。 「ホラー、私のだけじゃ足りないから、へーじょーのも借りてきたよー」 シホのかよ。 意外にもシホが天文に興味がおありなのだろうか? ボクは澤井の横に来た。 「太郎、シホって天文学とか興味あるのか?」 「さーあ、どうだろね。」 澤井はニッコリと微笑んだ。 ボクは目視で月を見た。 ん? なんかおかしいぞ。 さっきの黒い点が大きくなっている。 しかも物凄いスピードで拡大を続けている。 「み、み、みんな!! 逃げて!!逃げようよ!!」 かえでっちが怖がりながら言った。 ボクもその意見には賛成だ。 「楓さんの言うとおりだ、ひとまず退散だ!!」 どうやら、澤井も気付いていたらしい。 物が大きくなっていく時に、他には何が考えられるか。 それは物の大きさが変わっているのではなく、 距離が近づいているということ。 ボクたちは走り出した。 望遠鏡も置いて。 だが、間に合わなかった。 屋上のコンクリートの床に、何かが落ちてきた。 それは煙を巻き上げながら、床を引きずってこちらに向かってくる。 もう終わりだ。 その突起部分がボクの頭目掛けて向かってくる。 目を瞑った。 轟音が鳴り止み、そしてボクは目を開けた。 目の前にはナイフのように鋭利な突起部分、を剥き出しにした 楕円形のカプセルのようなもの。 ボクは驚いていた。 もちろんみんなもだろう。 だが一番驚いているのはボクだろう。 いや、かえでっちか? そんなこんな考えているうちに、カプセルは湯気を立て、 プシューと音を鳴らして、そして上の楕円形の一部が動き出した。 開いている。 カプセルはひとりでに開いている。 「す、すごい、宇宙船・・・!」 なんだか小学生でも言わないであろうことをシホが言ったぞ。 なんだって? 宇宙船? ボクはその位置を移動して、カプセルを横から見た。 翼がサイドと上と後ろの方にあり、そして後部にはジェットエンジンまで見て取れる。 宇宙船だ・・・ 「・・・蜜柑・・・食べる?」 あん王女がカプセルの中に話しかけている。 なんかやばい!! 開いたカプセルの中には紅色に染まった椅子と、 それに座るSF映画とかでよく見る、パイロットスーツを着た・・・ ウサギ・・・ 「・・・ハァハァ・・・助けてくれ・・・」 そのウサギは宇宙船から出ると、コックピットから床に落下した。 ボク達はその気絶した身長約1.5Mのウサギを介抱した。 部室にて。 「こ、こいつって宇宙人じゃないのか?」 澤井が言っている。 「宇宙人・・・」 シホがあん王女みたいな喋り方をした。 「そうよ・・・私達は何部? そうよ、そうだよ!! 私達は外宇宙通信コミュニケーション研究部よ!! コミュニケーションよ!! 何語を話すのかなー?」 「・・・日本語・・・さっき私が蜜柑を渡した時、助けてくれ、って」 あん王女の一言でシホはキレた。 「どーーーーーしてそんなこと言ってるのよーーーーー!! 夢、ぶち壊しじゃなぁぁぁぁぁぁい!!」 「すいません」 「謝ることはではないけど」 おまえが謝らせてるんだよ、シホ。 「とりあえずそのウサギみたいのをどうするか、だな。」 「先生!!」 部室の扉の前にいたのはブラックヴァロンこと、黒吾耶ヴァロン先生。 ボクたちの顧問ティーチャーである。 「ほっほー、面白いもんだねー」 ブラックはウサギの顔を覗き込んだ。 「はぅ!!」 「ぴぁっ!!」 ウサギが突然、目を開けたもんだから、かえでっちがビビって退いた。 ぴぁっ、って、ちょっと可愛いぞ!! 「ここはどこだ!!」 「びびび、びっくりさせないでよもーう!!」 ウサギは挙動不審に、あちらこちら見回している。 「ここはどこだ!?ここは惑星アンセリオンじゃないのか?」 一同、沈黙。 しかしボクは興味をそそられる。 本物だ。 世界を変えられるかもしれない。 いや、自分を変えてみせる!! 「残念だがここは地球という惑星だ。」 「そんな・・・」 ウサギは落ち込んだ。 そしてボクの方を見た。 「お、おまえは・・・ナッツ王子!? 貴様がいるから!! 戦いは終わらないんだーっ!!」 「え、ボク!?」 ウサギはボクに飛び掛ってきた。 ボクはとっさに飛びのいたが、顔面に思いっきりパンチを食らった。 ボクはドアにぶつかって、しゃがんだ。 「おい、てめぇ何しやがるんだ!!」 澤井がウサギに殴りかかる。 ウサギはなんとか回避したが、 次の蹴りには対応できず、腹部を蹴られた。 ウサギは怯み、後ろに下がった。 「俺の朱雀拳を見破れるか?」 出た。 ボクは知っている。 あのマーシャルアーツの構え方から繰り出される不思議なケンカ技を。 「マーシャルアーツ+澤井流空手=朱雀拳!!」 澤井はケンカ好きだ。 しかも相手が人間じゃなくても手を出したがることがよーくわかったよ。 「笑わせるな!! おまえもナッツ王子の味方かー!?」 「だからナッツって誰だよー!!」 澤井とウサギが交戦している間、 シホがボクを起した。 「大丈夫?ナッツ王子!?」 「ああ、っていうかボクは鳥羽怜治だ。」 かえでっちが何をしたらいいのか戸惑っている。 あん王女は・・・ 「みぃーん」 充電中だ。 過充電はバッテリーの故障につながるぞ。 ずんきは澤井とウサギを眺めている。 そして何かを決心したかのように、立ち上がった。 「ウサギ・・・加勢する」 「なにぃ!?」 澤井が驚いている。 「お、おい、ずんちゃん、どうしてだよ!!」 「俺は・・・動物が好きだからな。」 「動物って言っても、こいつは地球外の動物なんだぞ!!」 澤井が必死に説得する。 「・・・地球外の動物・・・外宇宙通信コミュニケーション研究部だから。」 ずんきがなんかカッコいいこと言ったぞ今!! その言葉で、ウサギ野郎の動きは止まった。 「・・・よかったら・・・話してもらえませんか? 何があったのか・・・」 どうやら充電完了したようだな、あん王女。 ウサギを椅子に座らせ、話を聞こうとする。 そしてウサギは話を始めた。 「俺の惑星、ユッケルベルトは破壊されました・・・」 ボク、シホ、かえでっち、澤井は驚いた。 しかしずんきとあん王女は眉をピクリとも動かさなかった。 戻る