Outerspace Correspondence Comunication Reserch Club 外伝

The person who doesn't fight is a foolish person. The person who fights is a brave person. The person who need not fight is a wise person. ―――Roy Nilz Sekuineel 抗わない者は、愚かな者。 抗う者は、勇敢な者。 抗う必要がない者は、賢い者。 ―――ロイ・ニルツ・シクニール 【友たち】 数日前、三人の男女が、その病院に搬送された。 市の中でも大きい病院だ。 三人のうち二人は、すぐに集中治療室に入った。 もう一人は、命の危険性は少ないと見て、入院の病棟に入った。 彼の名前は、澤井太郎。 武術を体得しており、ケンカでは数々の強敵と渡り合ってきた。 そして今回も、そのケンカが原因で、体中を痛めて入院という運びになった。 今日彼の元には、金田楓という女子がお見舞いに来ていた。 彼女は、彼に果物を切ってあげて、彼がそれを食べた後は、 学校で行われたイベントについて話してあげた。 軽音部の歌が過激すぎて、彼女の耳には重かったこと。 だけど、軽音部の後に出てきた漫才やコントをやったグループは面白かったこと。 ワイングラスで単なる炭酸ジュースを飲んだこと。 でも炭酸嫌いなので飲めなかったこと。 (仕方なくお茶や他の飲み物を飲んだ。) 途中で例の二人が、その場からいなくなっていたこと。 そんなことを、笑顔で話してやっていた。 澤井太郎は、彼女を見て微笑んだ。 夕方になって、 「それじゃあ、もう行くね。」 と、言って楓は病室を出ようとした。 「待ってくれ。」 太郎は、彼女を止めた。 最後に聞いておくことがあったのだ。 楓なら、他の病室や、集中治療室などの状況を見てきている楓なら、知っているはずだ。 「二人は・・・二人の具合は?」 太郎は、その答えが「良好」であることを期待して、そう願って、そう思って、笑顔で聞いた。 楓は、すぐに笑顔で答えてくれるはずだ、と思っていた。 「え・・・」 だが、楓の表情はそこで一変した。 答えられないのだ。 それを察して、太郎の表情も変わる。 「そうか・・・引き止めて悪かった。」 「ううん。いいの。 ・・・ごめんね。」 楓は、病室を出ていった。 【黒】 離任式の後、黒吾耶は職員室にある荷物を全てまとめた。 「もう、行くのですか。」 暗くなった職員室、黒吾耶のデスクだけ光がついている。 校長が、黒吾耶のデスクの横に来ていた。 「ああ。引き止められても、俺は行くぜ。」 校長は、普段穏やかな表情のまま、変化を見せない。 「生徒達が、第三体育館に集まっています。 面白いことをしていますよ。」 「校長・・・知ってたんですか。」 「ええ。他の教師も、それを知って、第二体育館で生徒の真似事をしています。」 黒吾耶は、「恐れ入ったぜ」と言った。 「もちろん、安藤先生は、生徒達のことは知りません。」 「それは、よかった。あいつにとっちゃ、知らぬが仏って奴だ。」 黒吾耶は、荷物をまとめ終わって、自分の車のキーを取った。 「それじゃ、行ってくるぜ。校長。」 「ええ。気をつけて。」 黒吾耶は、職員室を後にした。 ダンボールにまとめた荷物は、それほど重くなかった。 教科書や教授用の参考書等は、先に持ち帰っていた。 荷物の中には、パスポートも入っていた。 特に必要になるとは思わないが、念のために持っていたかった。 恐らく、生きて地球の土を踏むことは二度とないだろう。 彼は、高等科の校舎を出て、自分の車に乗り込んだ。 地球を発つ為に、飛行場へと向かわなければならない。 その飛行場まで、数時間かかる。 「さてと。」 黒吾耶は、キーを指して、エンジンをかけた。 アクセルを踏んで、戦地に向かって走り出した。 彼は、CDを入れて、音楽を聴いた。 「これから戦いにいくのにクラシックとは・・・俺には似合わねぇな。」 と、笑った。 道の真ん中で。 「ん?」 突然の震動で、彼は車を止めた。 が、その瞬間に、車体が裂けて爆発した。 その先には、電柱の上に立つ二つの人影があった。 爆発した車体を、一人が己の武器のスコープを覗いた。 「いない。」 言った瞬間、二人が立っていた電柱が、切断された。 音を立てて崩れ落ちていく電柱から、路面に飛び降りた二人。 「不意打ちとは、親切心がなってないんだな。」 黒吾耶は、その二人に対峙して叫んだ。 その手には、彼の武器。 棍棒のように伸びた柄、先から斧のように出て、手前に伸びている剣のような刃。 アックスブレード。 「出迎えご苦労だな。 えっと・・・グリーントロルとブルーレイ。」 巨大な金槌と自身の巨体を持ったスキンヘッドの男と、両腕にスコープをつけた小柄な女。 「第一ステージのボス戦はおまえらか。」 黒吾耶―――否、ブラックヴァロンは、アックスブレードを構えた。 グリーントロルの金槌は、一突きで震度7と同じ震動をそこに起す程の力。 ブルーレイの両腕から放たれる青い閃光は、当った物全てに引火させる程の熱。 二人の攻撃は、遠距離と近距離。 完璧だった。 「こんな一般道でよ・・・よっくもやってくれるぜ。」 ブラックヴァロンは、二人に向かってぼやいた。 「裏切り者と邪魔者は消す。」 ブルーレイが静かに言った。 グリーントロルは、ブラックヴァロンに襲い掛かりたそうに、唸っていた。 「あーあ。どうすんだよ、俺の車ぶっ壊してよー・・・。 まぁ仕方ないかな。 それじゃあ勝負の時間にするか。」 ブラックヴァロンは、言って、向かってくる二人に斬りかかっていった。 【回帰@】 これは、十数年後の話だ。 仲のいい夫婦がいた。 子宝にも恵まれ、二人の間には二人の兄妹がいた。 夏に生まれた双子で、 大樹のように育って欲しいという願いから、夏樹、 愛を持った子に育って欲しいという思いから、愛夏、 二人はそう名付けられた。 夫は、この二人の将来を、知っている。 だけど、何も落ち込むことは無い。 すくすく育つ二人を見ていれば、そんな不安も自然と忘れられる。 ただ、それは今までの話。 彼らとはかけ離れて、遠くの、どこか遠くの世界での話は、彼らの思い通りにはならなかった。 夫婦が結ばれることになる数日前から戦争が始まった、その場所で。 そこは、荒れ果てて、地面には紫色の砂と石が混じっていた。 戦争で死んだ者の骨や肉、武器といったものがそこには、落ちていた。 どこを見ても花を咲かせた木は見当たらず、木があったとしても、朽ちて裸の木のみ。 空も砂と同じく、紫色をしていて、雲に閉ざされたままだった。 その地の果てに、数々の種族の者が集まって、何かを話していた。 「戦争を終結に導くには、たった一人の指導者が必要だ。 我々がここで争っていても、マトリオシカには漁夫の利となってしまう。」 角の生えた老人が言った。 「もうここはマトリオシカに敗戦の打電をするのが得策かと・・・」 「そなたは、我々に負けを認めろと、そう言いたいのですか?」 一人の女性が言った。 「そうではないのです。 マトリオシカに一度は負けを認め、国家共同を謀り、 内部から反乱を起すのです。」 つり目の男性が言った。 「一度でもマトリオシカに抱き込まれてみなさい。 そなたの心に残るのは悪の苗木のみ。 反乱を起すつもりなど、一片も残らぬでしょう。」 彼らは、困惑していた。 戦争が始まって、十数年立った今、連合軍の歩調も乱れ、 反逆や裏切り、軍同士の仲間割れにより、膠着状態に陥っていた。 連合軍である彼らは、この惑星ガルティ・ウスにて、議会を開いていた。 議場も今では、朽ち果てて、屋根が崩れ落ちていた。 そんな中でも希望を捨てない有力者たちは、マトリオシカ撲滅の為に集まっていたのだ。 「十数年前」 一人の男性が立ち上がって、話し始めた。 「地球という星の一組の男女が、この戦争が始まる前から、 マトリオシカと互角に戦ってきています。 今では、地球のどこかに密かに暮らしていると言われていますが、 彼らを連合軍に呼んでみては、どうでしょう?」 議場内が騒がしくなる。 「ああ、彼らの噂なら、私も知っている。」 とか、 「まだ若いのだろう。 今は経験をつんだ賢者や戦士が必要なのだ。」 など、議場内で意見が飛び交った。 「静粛に。」 女が、その場を取り仕切った。 「その者達の居場所は、つかめているのか?」 誰もが口を閉ざす。 だが、つり目の男性は違った。 「私が知っている。」 彼は言った。 「そなたは、信用できん。」 「大丈夫です。信じてください。」 「・・・」 女は、彼を見つめた。 「わかりました。この件は、そなたに任せます。」 「ありがとうございます。」 「ただし、彼らが戦いに復帰することが出来ぬほど、平安な生活を送っているのならば、 この件はなかったことにしろ。」 「御意。」 会議が終わって、つり目の男は、地球に向かうべくして、使節団と共に移動艇に乗り込んだ。 「事がバレれば一大事だ。分かっているな。」 黒いマントで顔を覆った老人が、つり目の男に言った。 「分かっています。」 「ワシの命も、そう長くない。マトリオシカの命運もおまえに任せたぞ。」 「ハッ。閣下。光栄の極み。」 なんと、つり目の男の正体は、マトリオシカのスパイだったのだ。 数年後、連合軍は、この戦争で苦戦が強いられることになる。 【回帰A】 鳥羽家には、六歳になる二人の子供がいた。 夏樹(なつき)と、愛夏(あいか)。 二人は双子で、夏に生まれたので、名前に夏の字が入っている。 「ほーら、こっちだ。」 父親と夏樹が、芝生の上で、チャンバラをしている。 当ればそれなりに痛い、棒っきれで。 父親である怜治は、早いうちに夏樹に「痛み」を教えようとしていた。 そして、「抗い」も。 怜治の人生において、それが最も大事なことだと、本人は自負していた。 妻、志穂は、愛夏に、教養をつけようと、数々の経験から学んだことを教えた。 双子は、それぞれ違う長所を持った。 「痛っ!!」 「やったー!!パパに一本入れたよ!!」 怜治の胴体に、やっとこさ棒の先を叩きこんだ。 「やられたぜ。 流石は俺の息子。」 「約束通り、アイス買ってね。」 「わかったよ。」 怜治は、志穂がいる台所に行った。 「志穂、出かけるけど、一緒に行くか?」 「あ、うん。」 そして、四人で出かけることになった。 自宅から少し歩けば、ショッピングモールがある。 そこへ行く。 生活用品のほとんどは、そこで揃えることが出来る。 「それにしても、あれだよな。」 怜治は言った。 「ここは、どこか懐かしさを感じる。」 「越してきてからそればっかりね。」 志穂が笑った。 「ここは、私達の故郷にあったショッピングモールに似てるから・・・」 言おうとした瞬間、四人の前の店が爆発した。 小規模な爆発で、煙が出るほどだったが、店主が何かに恐れをなして、逃げ出してきた。 「どうした?」 「ダメだ、逃げろー!!」 店主は、怯えながら逃げていった。 店の中からは、数人のマスクを着用した者。 「強盗か。」 志穂は、子供を先に逃がそうと、後ろに振り返った。 が、そちらからもマスクを被った集団が集まってきた。 すっかり囲まれた四人。 集団の一人が合図をすると、全員がぴたりと止まった。 そして、先頭の人物が、マスクを脱いだ。 「初めまして。」 つり目の男だった。 「あなた達は、もしかして鳥羽さん御一家じゃないでしょうか?」 怜治は、勘のよさから身の危険を感じて、 周りを見回して、棒状の物を探した。 「鳥羽?知らないな。」 言ったと同時に、仮設ブースの前に置いてある鉄パイプを発見した。 「そんなはずは、ございません。」 「そうか。 何かの間違いじゃないのか?」 「いいえ。写真で見ましたから。 鳥羽怜治さん。」 一斉に、マスクの集団が襲い掛かってきた。 怜治は、夏樹の前から来る奴を蹴り飛ばした。 「志穂、愛夏を!!」 「分かったわ。」 志穂は、愛夏を抱いて、電化製品の店に入った。 マスクの集団が押し寄せて、店を襲われた店主や店員、他の客は、そこから退散していった。 怜治は、夏樹を抱いて、階段を降りずに、そこから吹き抜けを飛び降りた。 見事着地し、仮設ブースまでの最短距離を行った。 目の前に躍り出る敵をなぎ倒し、鉄パイプを手に取った彼は、 敵を次々と撃破していった。 夏樹は、怯えて頭を抱えていた。 ついに敵は、重火器を持ち出した。 「死ね!!」 レーザーの光を、怜治は紙一重のところでよけた。 連射されるも、夏樹を抱えながら、飛び回ってその全てを避けた。 敵も諦めたのか、飛び道具を使うのをやめた。 一方、志穂は、大型の家電製品の棚を押し倒して敵を倒していた。 「愛夏。こういう時は頭を使いなさい。 昔はママも苦手だったのよ。」 「うん。」 「かくれんぼよ。どこに隠れたらいいか、考えて、隠れてなさい。」 「うん、わかった。」 志穂は、愛夏を信頼していた。 彼女の頭脳は、六歳とはいえ、侮れない所があった。 そこは恐らく、父親譲り。 愛夏は、志穂の元を離れて、どこかに隠れた。 「さて、私は私の戦いをするか。」 志穂は、十数年前を思い出す。 怜治も同じだった。 夏樹を背後に置いて、今は一人奮闘していた。 敵は、攻撃の手を休めてはくれない。 怜治に、一瞬の隙が生まれた。 「パパーッ!!」 「夏樹!!」 夏樹は、マスク集団に、捕らえられていた。 怜治が気付いて、振り返った瞬間。 「うっ・・・」 彼の背後から、一撃が。 一閃の剣が、彼の胸を貫いていた。 「ぐあーっ!!」 怜治は、それでも背後の敵を鉄パイプで殴りつけ、その剣を自分から抜いて、手に持った。 夏樹をつれている集団に突撃して、何人かを切りつけたが、途中から意識が薄れていった。 しばらく時間がたって、電化製品店に数分ぶりの静けさが訪れた。 「愛夏!!しばらく隠れてなさい。」 店内中に聞こえるように声を張り上げて言った志穂。 彼女は、敵がいなくなった所を見計らって、外に出た。 目を疑った。 「怜治!!」 怜治が、血を噴き出して、倒れていたのだ。 「怜治!!しっかりして!!」 「・・・志穂?」 怜治は、かろうじて生きていた。 「志穂・・・・・・ごめん・・・夏樹が・・・夏樹が・・・」 怜治の瞳から、涙がこぼれた。 が、志穂は、すでに泣いている。 「喋らないで。お願い。死なないで。」 「へへ・・・・・・昔・・・こんなこと・・・・・・あったっけな・・・」 「今、今すぐに救急車を呼ぶから!!」 志穂は、泣きながら、携帯電話を取り出した。 そして、番号を押した。 「早く来て!! 息子が強盗に誘拐されて、夫が刺された!! 南町のショッピングセンターよ・・・・・・。」 志穂は、電話を切って、怜治を抱きしめた。 「お願いだから、もう二度と・・・・・・私の前から消えようとしないで。」 「・・・・・・俺って・・・・・・ダメな男だな・・・」 言いながら、怜治は血を吐いた。 「一回死んで・・・・・・志穂に助けてもらったのに・・・・・・」 「そんな・・・怜治はダメな男なんかじゃない。」 「もう・・・・・・二回目は、無理かな。」 怜治は、ぐったりとして、志穂の腕の中で、動かなくなった。 「・・・怜治?」 志穂は、全てを悟って、怜治を強く抱きしめて、泣いた。 「・・・怜治・・・」 【回帰B】 惑星アンセリオンに、連合軍の軍用基地があったが、 そこはすでにマトリオシカによって、制圧されていた。 そして、そこに、つり目の男がいた。 「でかい獲物がつれました。」 つり目の男は笑った。 「そうか。」 顔半分に刺青を施した男性が言った。 「して、その獲物とは?」 「この子供たちです。」 二人の子供が入れられた檻を見せられて、刺青の男はムッとした。 「おい。ちょっとこい」 「はい。」 つり目の男は、ニヤつきながら、刺青の男のまえに出た。 途端、刺青の男は、つり目の男を殴りつけた。 「がっ!!」 「この野郎!!誰がガキをつれてこいと言った!!」 「ま、待ってください!!」 「待たぬ!!我がマトリオシカに反抗していた鳥羽怜治と鳥羽志穂の懐柔を命じたはずだぞ!!」 「しかし、この子供たちは、彼らの子供です!!」 それを聞いて、刺青の男は、つり目の男に怒鳴るのをやめた。 「考えがあるのか?」 刺青の男が聞いた。 「もちろんです。」 「それは、どういう物だ。」 「我等の閣下でさえ使用したことのない、時空移動装置を使うのです。 どうです?ユニークでしょう?」 「ユニークかどうかは、この際、どうでもいい。 それにはどんな意味がある?」 「まずは、彼らをこの惑星で育てます。 まだ子供です。 地球でのことなど、忘れてしまうでしょう。 そして、彼らが、後のマトリオシカの英雄となり、強くなった頃合を見て、 そうなった所で、時空移動を使って過去に戻り、彼らの両親となる鳥羽怜治と、杜若志穂を殺す。 どうでしょう?」 それを聞いた刺青の男は、ニヤリと笑った。 「確かに面白そうだな。 だが、このガキが親を殺したとなると、それによって自分自身も殺すことになるんじゃないのか?」 「もちろんです。 だから、こいつらは、とっておきで、一回しか使えない使い捨てなんです。 連合軍との戦争で、雲行きが怪しくなってきた頃を見計らって、時空移動をさせればいいのですよ。」 過去に戻ったその子供が、父親にすでに敗北していることを、彼らは、まだ知らない。 戻る