外宇宙通信コミュニケーション研究部 第九話 最後の戦い
「若いの、気分はどうだ?」 不快に決まってるだろう・・・ なんで・・・なんでナッツが・・・ 「あの、最後に質問、いいですか?」 「かまわねぇーぜ。」 そうだ、ボクが一番疑問にしているのは彼の性格だ。 そう、まるでボクとはまったく違う生き方をしてそうで、 どこか似た感じ・・・ だがそれが何故なのか。 ボクは表情を失った。 だけど彼は? 「クレイジーさんは・・・なんで笑ったりできるんですか?」 「おうおう、若いの。 その質問には答えられないな。 なぜならば」 「それを言うことがボクの為にならないってことと、 もしかすると運命が狂ってしまう可能性だってある、ですよね?」 クレイジーはニヤリと笑った。 「ホラ、もう行け。 俺はこのタイミングで行ったぞ。」 なんだか、心が軽くなったな・・・ 彼のおかげで・・・ いや、ボクのおかげで・・・。 「なんだかすっきりしたよ。 これなら行けそうだ」 「おう。ビーム剣のコツ、忘れんじゃねぇぞ」 そうだ、さっき教えてもらった、勝ちに行く方法、それをボクは 頭の中で何度も繰り返した。 そして、何故かスペインをイメージさせる 闘牛のBGMが頭の中で流れた。 騎士・・・か。 残念ながらマスクも帽子も無い。 それに乗っていくのはトルネードじゃなくてケイズルだ。 ボクは最後に、クレイジーの方を向いた。 「アディオス!!」 二人の声が重なった。 もう不思議じゃない。 彼はボクだ。 ボクなんだ。 そしてボクは今から自分の子供・・・ナッツ・トバを倒さなければならないのだ。 ボクは身を翻し、ケイズルに乗り込んだ。 「鳥羽怜治、出ます!!」 惑星ガザガが何故、鉄の星と呼ばれていたかわかった。 私の眼前には、巨大な火山口のような兵器を持つ、全て金属で出来た惑星。 あらかた予想できる。 あの火山口から極太ビーム発射というわけだろう。 私はモニターのレーダーを確認した。敵機がハエの大群のように群がってきた。 私達の任務は、惑星ガザガの核の破壊。 それさえ壊せばあの惑星は機能しなくなる。 「ザコどもはそちらのゼィル部隊に任せるわ」 「え!?ちょ!!出番横取っ・・・!?」 キシルが言った時、キシルの機体の前にゼィルが機体を寄せた。 「いや、彼女にやらせてやろう。」 ゼィル部隊が敵機をひきつけてくれた。 私達はハエの大群を過ぎ去り、惑星ガザガに向かった。 背後から、黒い機体が通り過ぎた。 「なんだ?」 「ひゃぁっ!?」 「・・・味方機ですか?」 黒い機体は私達の前に出た。 「おう、おまえら、久しぶりだな」 「その声は・・・」 完全に久しぶりだ。 私は忘れてるってのウボァァァァァァァア!! 「黒吾耶先生!!」 かえでっちナイスフォロー。 思い出した。 ブラックヴァロン。私達外宇宙通信コミュニケーション研究部の顧問。 でもなんで彼がここに・・・ 「ブラック、なぜここに?」 「おう、宇宙探偵の仕事やってたこともあってよ、 情報屋から大変な情報を得た。 あの惑星ガザガ、ただの惑星じゃねぇ。 兵器なんだよ。 惑星自体が。 おまえらは今からあの惑星の核をぶっ潰そうとしてんだろうよ、 だけどそれだけじゃダメだ。 あの兵器のトリガーは他の場所にある。」 ほう。惑星ごと兵器。 やっぱりだ。 「で?それはどこにあるの?」 「聞いて驚くなよ・・・」 なんだかブラックの性格ってあのクレイジーっておっさんに似てるなぁ・・・ 「ダクト」 ・・・ 今なんて? 「今、なんて?」 思ったことをそのまま言った。 「ダクト。」 「って!!この戦闘機じゃ入れないじゃん!! ビィーバァーッ!!」 おおう、頑丈だ、コックピット内。 私がぶったたいても壊れない。 「とりあえず俺たちは・・・ 核を破壊するのが先だ。」 ずんちゃんの言うとおりだ。 私達はガザガの核に向かう通路に向かった。 「・・・ボクは・・・」 ボクは何を考えているのだろう・・・ ボクの行く先はガザガだったはず。 しかし、クレイジーが言うには、 ガザガの衛星軌道上にある戦艦、トライアングリスの破壊を任されている。 何故だろうか・・・ 彼が言うのだから何か意味があるに違いない。 ボクはケイズルを最大の速度でトライアングリスに向かわせた。 が、それが間違いだった。 ザコの戦闘機がウジャウジャと襲ってきた。 ボクは必死に迎撃する。 が、左翼被弾。 エネルギーバランスの補填を行う時間も無く、 そのままトライアングリスに突っ込んでいくところだった。 が、なんとか機体を引き起こし、トライアングリスのハッチの中に入り込み、 デッキの奥底までに潜入した。 ボクの機体は床を引きずり、そして止まった。 ハッチが閉じられ、酸素がこの部屋の中に満たされたのを確認し、 ケイズルのキャノピーを開けて外に出た。 銃を持った兵士がボクの周りを囲んでいた。 おわった。 最後の最後にして、ボクはここで死んだ。 ひとりの兵士がボクに向けて銃を撃った。 が、何故だかボクは怪我もしていないし、 その兵士が倒れていた。 無意識に、ボクはビーム剣で銃弾を跳ね返していた。 「いける!!」 ボクは飛んだ。 着地した瞬間、何人かの兵士を斬っていた。 銃を撃たれても跳ね返し、接近されても斬り込むだけ。 無敵だ。 クレイジーに教わった剣技が役に立った。 流石は未来のボクだけある。 生存している兵士がいなくなり、隣の部屋に移ろうとした。 が、そこはボクが開けるまでも無く、反対側から開いた。 そのときボクは一瞬、鏡を見ているような錯覚に襲われた。 瞬時、無意識に飛び掛り、ビーム剣を振り下ろした。 相手側も同じく、ビーム剣を取り出し、ガードした。 「気色わるいったらありゃしないぜ、親父殿。」 相手はボクのことを理解していた。 ビーム剣にちからをこめて、彼を突き飛ばし、彼との間合いをとった。 「ナッツ王子だな。」 「そういうおまえはクレイジー・・・ 俺の親父か」 「残念だがまだクレイジーじゃない。鳥羽怜治だ。」 ビーム剣での攻防。 相手の剣先なんてまったく見えない。 自分が振っている切っ先も見えない。 だが、その手を見ることで、何をしているのか読める。 ビーム剣が当たるたび、バチバチ火花が散る。 ナッツはすきを見て逃げ出した。 ボクはそれを追いかけた。 核の方は簡単にいきそうだった。 惑星ガザガの内部に潜入、地球でいうところのマグマを破壊すればいいってところ。 まぁ映画で見たとおりやればいいんだろうけど・・・ って、映画?私は一体何を言ってるんだろう・・・ 「核への侵入炉、見つけました!!」 おおう、珍しくかえでっちが張り切ってる。 どうせ入るときビビって入れないんだろうけど。 怖いから入りたくないとか言って・・・ 「・・・入りたくない・・・」 ホーラ、あん王女が・・・ってえぇぇぇぇぇぇえ!? 「嫌な予感がする・・・ あの三角形の戦艦・・・」 たしかあそこにはへーじょーが行ってるはず・・・ 何かあるのかな? ・・・面白そうだ。 決定、行く。 「いぇすげっつろぉ♪アハハハハハハハハ!!」 「ど、どうしたんだ部長」 「あの三角形の戦艦のところに行くから、かえでっちとずんちゃんとブラックは ここをお願い!! ほら、あん王女、行くよ!!」 「・・・ありがとう」 「え?なんか言った?」 「・・・なんでもない。」 なんか言ったように聞こえたけど、まぁいいか。 私達はかえでっち、ずんちゃん、ブラックを置いてへーじょーがいるであろう 三角形の戦艦の方へ急いだ。 広い回廊、天井は遥か彼方、 上階にも吹き抜けの回廊があり、 そして下にも同じように吹き抜けになって回廊がある。 足を踏み外し、落っこちても上手くすればあの回廊に着地できる。 ボクはナッツを探した。 この回廊の部屋に来た時から見当たらない。 走りすぎて、スタミナが切れた。 ボクは一旦休憩と、一呼吸して、手を膝につけた。 と、後ろに人の気配。 ボクはとっさに身を屈め、横に飛んだ。 「くそっ!!」 ナッツだ。 何があったってボクは死ぬ運命にはない。 なぜならば、あのクレイジーが存在しているからだ。 ボクはビーム剣をナッツに向けて突き出した。 だが、それをひらりとかわされた。 まぁだいたい予想は出来てたけどね。 ボクはナッツの胴を蹴飛ばした。 ナッツは回廊から落下、したように見えたが、 上手く下に着地、ボクから遠ざかっていく。 ボクはナッツを追いかけるために飛び降りた。 「あ、やっべぇ・・・」 今更気付いた。 結構高いじゃん。 回廊の床が近づく。 ボクは足の裏を床に向けた。 そして膝のバネを使い、ショックを和らげる・・・ 案外簡単に着地できた。 と思った。 階段を踏み外し、足がビリビリしたことはないだろうか? ボクも今そんな感じ。 「どこまでもしつこいやつめ!!」 「愚息・・・」 「無表情でそんな酷いこと言うんじゃねぇえー!!」 ナッツを怒らしてしまった。 でも逃げた。 ボクはナッツを引き続き追うことにした。 「―ッ!?」 銃声、と同時に足元が光った。 ボクは歩を止めた。 「くそ・・・ザコはすっこんでろってんだよーッ!!」 「ひっ!!」 ん? ちょっと叫んだだけなのに、ザコはボクの顔を見て逃げ出したぞ・・・ まぁいいか。 ナッツはもう何メートルも先にいる。 そのまた何メートルか前方、 ビームの薄い膜で構築される壁が、一定の間隔で開いたり閉じたりしている。 ボクはあそこに逃げ込まれまいとして、 ナッツを必死で追いかけた。 と、そのとき、ザコ兵士が何百という隊列を組んで、 急降下部隊よろしくロープでこの回廊目指して降下してきた。 「ふっはっはっはっは!!俺の名前はデルアンデル!! この前は酷い目にあったんだがよ、病院ですぐに治してもらい、 『先生、俺、次の試合、絶対出たいんです!! もうこの先、選手生命がどうなろうと構いません、 俺は、今のメンバーで優勝したいんです!!』って言ったら、 すぐに治してくれちゃってよ、おい、そこの少年、聞いてくれよ俺の病院物語を。」 見覚えのある重装歩兵がボクに話しかけてきた。 「って、おまえはあのときの!! 覚悟しろー!!死ね!!」 と、今にもボクがグレネードランチャーで撃たれようという瞬間、 ザコ兵がバッタバッタと倒れていったり、落下していったりした。 ロープを腰につけたままの奴は宙ぶらりんだな。 何が起こったのか、と上を見ると、落下してくる女性二人。 ボクの前に落ちてきた。 「大丈夫?へーじょー」 「・・・大分体力を消耗しているようですね・・・ ・・・蜜柑です、食べてください。」 シホとあん王女だった。 ボクはすぐにその蜜柑を頬張った。 皮ごと。 そんなボクをあん王女が不思議そうに見ている。 「ふぁ、ふぁひ(な、なに)?」 「・・・優しいのね・・・」 なにがなんだかさっぱりわからん。 「行くわよ、とっとと。 あのナッツって野郎をしとめなきゃなんでしょ?」 なんで二人はボクのことを助けに来てくれたんだろう・・・ シホは張り切ってビーム剣を、あん王女はビーム銃を抜いた。 「へーじょーが最初の部員だった。 覚えてる?」 「・・・ああ。 それで助けに来てくれたのか?」 「いや、ただ単に暴れ・・・ぃや、へーじょーが今頃つかまってるんじゃないかと」 ボクはシホを見た。 そのときのボクはどんな表情をしていたのだろう。 「暴れたかったんだろ?暴れよーぜ!!」 シホはボクの表情を見て、笑顔で答えた。 「うん!!」 全速全身、敵をなぎ倒し、いつのまにかデルアンデルも倒れ、 そして最後に二刀流のビーム剣を持つ大男。 ボクとシホが斬りかかった。 あん王女はナッツを狙撃している。 流石二刀流、ボクとシホが二人係でも簡単には倒れてくれないらしい。 「キャッ!!」 シホが弾かれた。 回廊から落下しそうになり、床の縁になんとかつかまっている。 ボクは一人になってしまった。 だが、ひるむことなく、二刀流の相手をする。 なんとか片方のビーム剣を弾き、シホの近くに落とすことができた。 が、シホがあがって来れなきゃ意味ないんだよな・・・ ボクはビーム剣一本になったそいつを倒そうとした。 体が浮いた。 腹痛がする。 どうやら蹴られたようだ。 ボクが怯んだところにビーム剣を突き刺された。 「・・・え?」 ボクは生きていた。 だが、目の前のあん王女はどうだ・・・? ボクをかばい、そしてビーム剣に肩を貫かれていた。 そして大男はビーム剣を振りきった。 あん王女の腕が肩から外れて、飛んだ。 ・・・ 血が出てない。 それにあん王女は悲鳴の一つも上げなかった。 だが、腕の無い肩からは電気がスパークしている。 ボクの国語表現ではそれぐらいしかいえないが、 とにかく、紫色の電気が肩を回っていた。 バチバチと音を立てながら。 大男は驚いて動けなくなっている。 そこにあん王女のビーム銃が炸裂した。 大男は倒れた。 ボクはすぐにシホに手を貸し、持ち上げて、 崩れるあん王女を抱きかかえた。 「大丈夫か!?」 「地球に戻ったら、私の家の近くの・・・ 工夫の・・・トコロ・・・ヘ・・・ コノ・・・半壊シタ・・・ウデノパー・・・ツ・・・」 あん王女はプシューと音を立て、首から白い煙を出した。 首が垂れ、そして眼光が消えた。 もともとそんなものなかったんだろうけど、とにかく 目の光がなくなったような感じがした。 「メカだったの?あん王女って・・・」 「・・・」 ボクはしばらく目を瞑っていたのだろうか。 あん王女を抱き上げ、そしてもう一度床に寝かせた。 「悔しがってるの?」 ボクの顔を見てシホが言った。 ボクの顔を見て・・・。 「ナッツをしとめる」 ボクはナッツを追いかけた。 「あ、ちょっと待ってよ!!」 シホもボクについてきて走っている。 ようやくナッツに追いつけそうだ、と思ったとき、 目の前をビームの薄膜が遮った。 赤い薄膜が。 その先にはナッツが見えている。 そしてどうやらそっち側は行き止まりらしく、 逃げるのを諦め、ビームの薄膜越しにボクを睨んでいる。 ボクは後ろを見た。 シホがこちらに近づいてくる。 が、壁からビームの薄膜が出現し、シホはとうとうこっち側にたどり着くことはなかった。 「なんでこんなのがあるのよぉぉぉぉぉぉお!! スタァーティィー!!」 シホはビーム剣で薄膜をきりつけるが、弾かれるだけで何もならない。 ボクはビーム剣を収納した。 ナッツも同じことをした。 「親父殿、ここで決着か?」 ボクはその言葉を聞き流し、床に座り込んだ。 体力回復のため。 さっきから走ってばっかりだったからな。 後ろからシホがバシバシやってる音がうるさくて、 精神統一ができない。 しばらくたって、ナッツはビーム剣を出した。 ボクも立ち上がってビーム剣を出した。 そして上を向いて目を瞑り、一呼吸してから、 ナッツを睨みつけた。 ナッツは一瞬、震えたかのように見えた。 そして、ビームの膜が消えた。 後ろの膜も消えたらしく、シホが走り出すのがわかった。 ボクはシホに構わず、ナッツとの戦闘を開始した。 ビームの膜はまた音を立て、閉じていった。 シホはボクとナッツの前で立ち止まった。 ボクはナッツに斬りかかった。 が、弾かれる。 全ての攻撃があたらない。 何故だ、本格的な修行をしていないという理由だけでこんなにも変わる物なのか? そして、ボクは顎を殴られた。 目の前が一瞬暗くなったが、 気を取り直し、剣を構えなおした。 が、力が入らない。 見ると、ナッツのビーム剣はボクの腹を貫通していた。 ボクはビームの薄膜越しにシホを見た。 シホは何か言ってる。 だが、聞こえない。 やがて視界も消えてくる。 最後にボクは理解した。 ボクはさっきから表情を取り戻していた。 ボクの視界はシホが涙を流しているのが見えたところが最後だった。 ボクは床に倒れていた。 首を横に向けて、シホがナッツにつっこんでいくのが見えた。 「・・・じょ・・・へー・・・へーじょー!!」 「ん?なんだ、夢か・・・」 「何言ってんの!?」 泣きながらボクの体を支えているのはシホだった。 どうやら夢オチとはいかないようだった。 「ぅお、おなかに穴があいてらぁ・・・ふ・・・」 「何言ってんの? 早く戻って治療しなきゃ!!」 ボクは目を瞑った。 「もういい・・・もうだめだ・・・俺は手遅れだ・・・」 自分でも気付いた。 俺と言ったことに。 今頃、クレイジーは自分の体が消えていくことを不思議に思ってるだろうか・・・ 「へーじょーしっかりして!!しっかりして!! 最初の部員なのに!! 部長命令!!起きてて!!」 寝かせてくれ・・・ 俺の意識は遠のいていった。 シホの声だけが心地よく脳内でエコーしていた。 目が覚めた。 カーテン、花瓶、机、カラーボックス、えーと、体温計・・・ 見覚えのあるものばかりだ。 カーテンの隙間から入る光がまぶしくて、 目を手で覆った。 俺は起き上がった。 体の上には俺みたいな汚れた人間が使っちゃいけないんじゃないかと 思うほどの真っ白な布団。 そして体の下には、ふかふかの敷布団。 両サイドに、白い鉄のパイプで出来た柵。 そして薬品の匂い・・・ 「あ、起きたわね、それじゃあちょっと 脈計りますよー」 俺はこの女性を知っている。 いつだったか、授業中、腹痛を起こし、 そして向かった場所にこの人はいた。 保健室の市ヶ谷先生。 ということは学校? 俺は手をぶっきらぼうに先生に出し、脈を計ってもらった。 「今日がいつだかわかりますか?」 先生は言った。 はて、いつだ? えっと、昨日が・・・何日だ? 一昨日は?その前は? ダメだ、何も思い出せない。 俺はどっかで頭をぶつけて気絶し、 その時のショックで記憶喪失にでもなってしまったのだろうか・・・ 「そりゃ、わからないわよね。 何日間も地球の時計やカレンダーを見てなかったんだから。」 ん?どういう意味だ? それじゃまるで俺が宇宙旅行でもしてたみたいじゃないか。 「今日は7月6日。明日、七夕祭よ? あなたは宇宙から帰ってきてからも目を覚まさなかった。 倒れたのが5月30日だから・・・」 俺は驚いて顔を上げた。 「一ヶ月も眠ってたんですか!? どういう症状で!?」 先生は、悲しそうな顔をした。 「どうやら本当に記憶がないようね。 自分の名前はわかる?」 思い出せない。 誰だ、俺。 「友達のことは?」 友達? んー・・・なんか見えてきたぞ。 そうだな、格闘技が好きな奴、それから、 どんなことにもビックリしちゃって半泣きに なっちゃう子、まぁあれはあれで仕草が可愛かった。 それに蜜柑好きのロボットと静かなるビーストテイマー・・・ ・・・なんのことだかさっぱりわからん。 思い出せる語句がそれだけだ。 「残念ね・・・」 俺は、ベッドから立ち上がった。 「ちょっと、まだ寝てなきゃ」 上半身は裸で包帯がグルグルまかれていた。 何かを忘れてる。 服のことじゃない。 俺は友達はと聞かれたときにいろいろ意味不明な語句を 連想した、だがその意味不明な語句に物足りなさを感じている。 「ちょっと、どこ行くの!?」 誰かが走り出したのでもしたのか? ・・・ああ、俺か。 俺はなんで今走ってるんだ? どこかへ向かっている気がする。 頭の中で色々聞こえてくる。 『手術は難しいです・・・』 これじゃない・・・ 『おかえり・・・って、なんなのこの傷!!』 いや、もっとまえ、そんな曖昧な記憶じゃない!! 確かに意識は飛んでいた、だが耳が情報を能に自動で保存していたのだろう。 『ガザガの破壊は完了しました』 違う!! この記憶じゃない・・・ 『負傷者二名、すぐに彼等の故郷へ搬送しろ。』 違う違う!! くそ、俺の記憶力ってこんなだったのか、だから記憶喪失にもなるわけだ!! 俺はなにも思い出せないまま、ある場所で立ち止まっていた。 ボロい廊下、そして“OC2RC”と書かれた紙がドアに張ってある。 その上に、英語で “Outerspace Correspondence Comunication Reserch Club”というルビ。 外側の・・・宇宙の連絡?通信?コミュニケーションの研究クラブ・・・? そのとき、最後の記憶の欠片が戻ってきた。 『へーじょーしっかりして!!しっかりして!! 最初の部員なのに!! 部長命令!!起きてて!!』 杜若・・・志穂・・・ 俺はドアを思いっきり開けた。 そこには俺が想像できなかった誰が待ってるでもなく、 このいつもの風景とメンバーが見れて俺はホッとして、 笑みをこぼした・・・ 俺は全ての表情を取り戻したかごとく、顔を明るく輝かせて、 なんというかこれまで無かった笑顔で涙を流していた。 まぁ実際、これが表情を取り戻したってことになるんだろうか・・・ 「おかえり」 シホ、もとい部長が俺の顔を見て笑った。 他の部員も。 その言葉を待っていたのか俺は。 「半裸・・・」 「え!?」 俺は自分の姿に目を向けた。 下は履いている、だが上は着ていない、包帯以外は・・・ 「ちょっ、なんでキーボードを高々と持ち上げてるんだよ!!」 「マナー違反」 「まっ!?知らねぇーよ!!そんなの!!」 シホはキーボードを机に置いた。 ニッコリと俺を見た。 「ああ、ただいま。」 なるほど、マナー違反な。おかえりと言われたらただいまというのが常識だな。 確かに。 「なにボーっとしてるの? 七夕の日の会議を始めるわよ? 早く席について。」 そして、ボクはまた・・・あ、いやいや、俺はまた、歩き出した。 彼等と一緒に。 外宇宙通信コミュニケーション研究部【完】 戻る