お兄様は元ヒーロー 第1話 ストライプガール誕生@

あたしが、ストライプガールになったのは、 ひとつの事件が大きな理由だった。 あたしには2つ上の兄がいた。 大学では、あまり冴えない兄だったが、 毎日を普通に平凡に暮らしていた。 家族はみんなそう思っていた。 兄はよくサークルと部活をやっているので、 帰りが遅いこともよくあった。 あたしは知ってしまった。 兄はサークルも部活も入っていなかった。 大学では友達もいないようだった。 いったい何故、嘘をついていたのか・・・ あたしは、高校2年の夏、兄に聞いてみた。 -いつもサークルも部活も行ってないんでしょ?- -え?なんで知ってんだよ・・・- -お兄ちゃんの同級生に聞いたの。- -誰に聞いたの?- -お兄ちゃんの大学の説明会行った時さ、小耳に挟んだだけ- -え?あぁ・・・- -お兄ちゃん何をしているの、いつも・・・- -ぅ〜ん・・・- -学校もときたま遅刻するとか聞いたわ。- -・・・- -話して。あたしならいいでしょ?- 兄とあたしは仲の良い兄弟なので、よく話すし、相談事もした。 兄の知ってることはあたしも知っているつもりだ。 -ヒーローだよ・・・- -?- -俺、ヒーローだからさ、忙しいんだよ- -新しい言い訳?- -信じてくれないかもしれないけど、俺ヒーローなの。- -信じる。- -ほんと?ありがと!- -ヒーローの存在は。- -ヘコーッ!!- -この近所の治安って、乱れないわよね、だから、この辺りに住んでるのはわかる。- -それが俺さ。- -へぇ、どうだか。- 次の日、ニュースを見ていたら、あたしは目を疑うような事実をみる。 =えぇ、ただいま、ウェストチェスターに中継がつながっております。 現地のグランベリーさん?= あれ、ここって・・・ あたしの町? なにかあったのかしら? =はい、ただいまウェストチェスターの工場です、 暴漢は未だ人質をとって中にいる模様、進展の動きは見られませ・・・= =あ、ストライプマンだ!= 野次馬が一人、そういうと、皆が同じ方向を向く。 カメラもそれに気づいて、その人物を映す。 =ごらんください、ストライプマンが工場の屋根の上を走っています!!= 全身、赤と緑と白のストライプのタイツを纏った男が走っている。 -クリスマスじゃあるまいし・・・- あたしはテレビを見て笑った。 =今回は何故か・・・クリスマスストライプです!= -ほかのもあるってことかな?- ガラスの屋根をぶち破って中に入る音がした。 カメラからはもう見えない。 中からは、暴漢たちの悲鳴や、断末魔が聞こえる。 =ストライプマンが暴漢たちを倒しに行きました!= あたしは、そのニュースを見ていて、いやなよかんがした。 なんだかはわからなかったが・・・ カメラマンは移動して、窓がある場所から遠めでひっそりと 中の闘いをうつしていた。 窓の前にストライプマンが来た。 =おい、映せ!アップだよ!= リポーターがカメラマンに厳しく言った。 アップにされたストライプマンは、それに気づいたのか カメラ目線でピースサインをした。 そのとき、あたしの目に入ったのは、 兄に誕生日にあげた腕のブレスレッドと同じものを付けていた。 まさか、と眼を疑った。 同じ店で同じものを買ったとかそういうことを聞いても 聞こえない。 あれはあたしが作ったブレスレッドだ・・・ 兄はそれを気に入っていつも付けていた。 ストライプマンは窓のない場所に駆けていった。 =ストライプマンがいる限りこの町は荒らされやしネェヨ= リポーターが暴漢たちに誇る感じで吐き棄てた。 そのときだった。 工場が爆発した。 火が出て煙が出たとかではなく、工場全体がふっとんだ。 =こ・・・工場が・・・= リポーターもあっけにとられていた。 野次馬も呆然と立ち尽くした。 あたしは、どうなったか覚えていない。 多分泣いただろう。 ひとつだけ覚えているのは、コンセントを思いっきり ぶち抜いてテレビを消したことだ。 -あぁ、びっくりした・・・ お兄ちゃん友達にブレスレッドあげちゃうなんて ひどいよ・・・- 自分にそう言ってみたが、震えはとまらない。 そうだ、コレは夢だ。夢。 夢だよ・・・絶対・・・ だけど夢なら覚めて欲しい そう願った。 -痛っ- ボールペンで手を突っついてみた。 -痛い?なんで?なんで痛いの?- 血が出るほどグリグリ押し付けた。 傷は浅かったが、その傷はまだ残っている。 思い出した。 兄の俺はヒーローだよという言葉を。 コレは夢じゃないと知った時、新たな不安やら、期待やら、 希望やらなにやらでこんがらがってきた。 -そうだ、あたしのお兄ちゃんはヒーローなんだ! あのていどの爆発で死ぬわけないじゃん!アハハ、心配して損した。 帰ってきたら、ニュースで見たよって驚かしてやろ!- 驚いたのは自分だった。 そのとき自分が言った-死ぬ-という言葉が 適切すぎるということが醜く、やけに腹立たしいことだから。 その夜、兄は帰ってこなかった。 兄のアパートで二人暮しなので 二人分の食事を作っておいたのだが、帰ってこなかった。 いつもは遅くても10時に帰ってきていた。 飯が冷める、早く帰って来い。 自分の中で心配が怒りに変わってきた。 食卓の前で足をブラブラさせる。 電話がかかってきた。 -何やってるのお兄ちゃん!はやく帰ってきてよ!- -あ・・・すいませんが、あなた、オービス・ミルトスの妹さんですか?- -あ、すいません、いきなり怒鳴っちゃって。そうですが何か?- -非常に言いづらいことですが・・・- 電話を切りたかったが、切ってはいけないと思った。 -兄がまた非行を?- -違います- なんで違うのよ、万引きでも強盗でも殺人でもいい、 とりあえず生きてることが確認できれば・・・ -あなたの兄が、今日pm1:48に息を引き取りました- 一番知っている答えだが一番聞きたくない答えでもあった。 -なんで・・・- -今日のニュースみました?- -はい・・・工場のですよね?- -あの事件の人質の中にいたんです。- -そんな・・・- -人質24名の中、たった一人だけ辛うじて生きていた人がいます。- -それがあたしの兄?- -いえ、違います- あたしは一度兄は死んだと言われていたのに 生きているのかとでも言いたげに答えた。 -州立病院に来てください。204号室です。- -今?- -え?ええ。- あたしは電話を切った。 体中の穴という穴全てから体の全てを吐き出した。 数分後、州立病院の204号室に行った。 両親、親戚、医者、並んで私を待っていたかのように見つめられた。 -確認をお願いします。- -シェリー、お兄ちゃんは二人暮しの間に成長して こんな顔じゃなかったわよね?- 母親が、あたしの両肩を両手で掴んで顔を覗き込んだ。 残念ながらその骸は兄だった。 真っ黒とまではいかないが、 焼け焦げている人間の死体だ。 本当にそうなのか? あたしの目はなにかおおきな 間違いを犯しているのではないのか? -ブレスレッドがない・・・- -え?- -あたしがあげたブレスレッドよ!- 兄の腕にはブレスレッドがなかった。 あたしはいつの間にか駆け出して病院を出ていた。 外から病院の広場の時計を見た。 am00:48、それがあたしの時間をとめた時刻。 戻る