第1話「和藤翔雲」
日本時刻20:00
鳥粉町(とりこまち)
そこは、日本の中でも鋼鉄の町と呼ばれていた。
鳥粉町には、海外からの移住者が結構来ている。
マフィアやギャングも例外ではなかった。
鳥粉町の隣にある町の空港に、
また1機、小型の旅客機が着陸した。
なかから出てきたのはアメリカの若いギャングだった。
鳥粉町立東雲高等学校
1年、和藤翔雲(かずふじしょううん)
小学生のころ、この鳥粉町に越してきてから、
彼の体に異変が起こった。
体中から高圧電流が流れるようになっていた。
物に触れて力を込めると、それを伝って雷が走っていく。
人間にあてれば、それはショックで気絶するだろう。
本気で力を出せば死んでしまうかもしれない。
そんな体だからか、この町が鉱物の産地だからか、
金属に触れて静電気にやられるのもしょっちゅうだった。
彼は今現在、夏休みで遊び呆けた疲れを癒すため、
ベッドで眠っている。
コンコンコン
誰かが窓を叩く音がする・・・
コンコンコン
そっと目を開けた。
自分の部屋にいることを確認し、
少し失望したのと少し安心した気分。
誰でもいいからこの苦しい世界から
他の世界へ連れてってくれ。
コンコンコン
誰かが窓を叩く音。
翔雲は、ベッドからノタノタ立ち上がり、
蛍光灯のスイッチをつけた。
部屋の中がサァッと明るくなる。
窓に目をやるが誰もいない。
なのに未だに窓の音は止まない。
コンコンコン
「なんだろう・・・」
何故だか、そのとき心の中には恐れがなかった。
不思議なことに出会ったとき、
初めは恐れたりするのが普通だ。
コンコンコン
ゆっくりと窓に近づいてみる。
窓を開けたが、そこはいつもどおりの
町の夜、街灯が今にも消えそうに点滅して、
自動販売機はそれと比べて、まだやれるぞ、
という姿勢を見せている。
「幻聴か」
そう呟いて窓を閉めた。
今ので目が覚め、そして休んでいた脳みそも回り始めてしまった。
休んでいたかった彼には不都合だ。
コンコンコン
閉めた窓がなっている。
そこにはやっぱり人がいない。
目をそむけて、パソコンのスイッチを入れた。
コンコ・・・
パソコンのファンがまわる音が
鳴り始めたと同時に窓の音は消えた。
「なんだろ・・・」
パソコンのパスワード入力画面、
キーボードでパスワードを打ち込む。
機動音がなって、いつものデスクトップ画面が現れる。
ただひとつ、何かが違っていた。
スタートアップに設定しているわけでもないのに、
コマンドプロンプトが起動した。
「ん、エラーか?」
髪を掻き揚げてクシャと音が鳴る。
後ろ髪は肩までの長さだが前髪は、
目にかかるかかからないか程度。
そして少し茶色味をおびている。
染めているわけではないが、生まれつきで
髪の色がすこし茶色っぽかった。
コマンドプロンプトを見つめる翔雲。
映画のような展開を期待して
「who are you?」
と打ってみた。
数秒待って
「ニホンゴデイイヨ」
と、下の行に返ってきた。
「なんでカタカナなんです?」
驚いた。
コマンドプロンプトには高度な
ひらがなカタカナ漢字他多数は
打ち込めないはずだった。
「雰囲気でるとおもった」
また返ってきた。
「あなた、誰です?」
「自己紹介するからパソコンの電源切って、
ベッドを見て。」
とりあえず翔雲は言われたがままに、
パソコンの電源を切ってみた。
そして背後にあるベッドの方に振り向いてみた。
「よ。」
女の子が座っている。
年下か、同い年くらいの女が。
呆然とした。
冷静になってみても訳がわからなかった。
携帯電話を出して警察に電話しようとした。
「あ、だめ、電話しちゃ」
「え?」
「私を警察に突き出すんでしょ?」
「なんで俺がしようとしていることわかるんだ・・・」
女の子はニヒヒと笑った。
「なぁ、出てってくれよ!」
「え、なんで・・・」
「ここは俺の部屋なんだぞ、何がえ、なんで、だよ!」
「あ、ヒドーイ、それじゃ仲間に入れてやらないぞ」
「はぁ?何言ってんだよ、別次元の話しないでくれよ」
女の子は少し悲しそうな顔をした。
今まで焦ってたから気づかなかったが、
よくみると可愛いかった。
髪の色は透き通るような水色で、
そして長さは腰ぐらいか。
目は大きく黒い瞳のなかに、
薄茶色い瞳孔が見える。
豊頬で唇は少し厚め。
なんか黒いマントのようなものを羽織っている。
「で、あんたは誰なんだ?」
「あ、そうだね、
私は山南沙耶華(やまなみさやか)、ショーンと同じ高校の1年生だよ」
「え、なんで俺のハンドルネームを・・・」
俺はネットでハンドルネームを使っていたが、
友達にも教えたことがなかった。
「ショーン・ワートル、翔雲・和藤、しょううん・わとう、を捩ったのね」
「なんで本名まで知ってんだ!
おまえ何組だ?!」
「C組。ショーンはA組だっけ?」
「なんでそこまで知ってんだよ、
ちょっと怖いぞ」
「そんなこと言う?」
「で、いったい、俺になんの用だ?」
沙耶華はニッコリと笑った。
「しょう、ご飯よー」
1階から母親の声がした。
コンコンコン
音が鳴っている・・・
コンコンコン
「お母さん待ってるよ」
小声で女の声がした。
頭の中だけで聞こえたようだった。
ベッドに眠っていた翔雲は目を覚まし、
そして起き上がった。
電気も消されている。
「なんだ、夢か・・・」
時計は8時を指している。
「時間もたってねぇし、夢だよな」
「しょう、ご飯よー」
ドアを開け、そして1階に下りていく。
「どうしたの、2回も呼んだのに」
「え?嘘?マジ?」
「本当よ」
ならばさっきのは夢ではなかったのだろうか・・・
ちらっとリビングの時計を見た。
8時30分・・・
あきらかに時間が経っている。
「あれ、時計進んでない?」
「・・・あってるよ」
翔雲は走って2階の自分の部屋まで行った。
「あ、しょう、ご飯って・・・」
時計をみた。
8時だ。
裏を見たら電池が抜かれていた。
家の外に沙耶華ともう一人、
青いスーツの男がいた。
「何それ?」
「電池」
「悪戯っ子だね君は」
男は沙耶華をみてニッコリ笑った。
「テレパシーでスポールさんに連絡を取ってくれ」
沙耶華は額に手を当てた。
頭に何かが流れ込むように少しの痛みを感じる。
「う・・・」
鳥粉町の隣町のホテルの2階に泊まっている男、
ジョン・スポールは彼女の意思を受け取っていた。
『ホテルに戻って来い、沙耶華は家に帰るんだ』
そうテレパシーを送り返すと、ベッドに転がって寝てしまった。
「ホテルに戻って来いって。
私は家に帰るわ。」
「じゃ、送ってくよ」
「ありがとう」
男は、沙耶華と手をつないだ。
「準備は?」
男が言うと、沙耶華は小さくうなずいた。
「ティッカウェイ」
男がそう唱えると二人は消えた。
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