第12話「チキンキャンデーローストビーフ味」 「アレックス」 エレノアが先に歩いていくアレックスを止めた。 「まさか新入りをいびりにでもいくんじゃないでしょうね?」 「・・・まっさかぁ、んなこと俺がするわけないだろ?」 「思いっきりすると思うんだけど・・・」 その新入り、ショーン、フィスナ、ミハエルはパルティ・ド・ティオレイドの秘密基地の 体育館にいた。 三人で適当に遊んで待っているように言われたからだ。 言われたとおり、バスケットボールを投げて遊んでいた。 と、体育館のドアが思いっきり開かれた。 「たのもぉーっ!!ってか・・・」 「あ、やっぱり・・・」 体育館にズカズカと、それこそでかい態度を見せるようにして入ってきたのは、 一組の男女。 女の方は男を止めに入っていた。 男はアロハシャツと大き目のサングラスをつけている。 「おまえらが新入りか」 三人の前に出るその男。 「はい、そうですが・・・」 ミハエルが答えた。 「よぉーっし、今から抜き打ち実技テストだ!!」 「バカァ!!」 「グハァッ!!」 女の方が男を殴って大人しくさせた。 「やっぱり後輩いびりに来たんじゃないの!!」 「ち、違う!!テストだ、テスト!!」 「自分が楽しみたいだけでしょ!?」 と、そのとき、また何人か体育館に入ってきた。 「みんなー、飲食物持ち込み禁止だけどおやつ持ってきたよー」 入ってきたのは、山南と二人の男。 「あ、アレックスさんとエレノアさんも一緒にどうですか?」 山南に言われて、アレックスは獲物を見つけた猛獣のように、 山南に向かっていった。 「この香りは、チキンキャンデーローストビーフ味だな!?」 「あ、そうですけど・・・」 「何本買った!?」 「20本の箱入りを・・・」 「っしゃあー!!」 山南の前でガッツポーズをするアレックス。 「あのー、テストは・・・?」 フィスナがアレックスに聞いた。 「・・・知らん」 「あ、そうですか・・・」 山南が持ってきたおやつに群がるショーン、ミハエル、アレックス。 男三人で食いながら語り明かした。チキンキャンデーについて。 「子供かおまえらは・・・」 山南についてきていた男が言った。 「俺は子供だよ」 ミハエルが言った。 「あ、そう」 ショーン、ミハエル、アレックスはもうすでに親友ぐらいになっていた。 互いにもうすでにメアドの交換とかも終えていた。 「お、そうだ、こいつ、俺のチームの仲間、エレノア・セーゴ」 「よろしく・・・」 「よろしくおながいっしゃぁーっす」 気合大、ショーン&ミハエル。 「俺はチームフレアなんだ。」 「チームフレア?あのカーマさんも同じチームの?」 「お、よく知ってるなー、オリヴィアを知っているのか。」 「ここまで来るのに助けてくれた人です。」 などなど、話していた。 そこへ山南が割り込んできた。 「この人たち、私のチームメイト。」 山南が一緒に来ていた男二人を紹介した。 「俺は、北橋恭司。よろしく」 声の低さからして、多くを喋らなそうだった。 「僕は永見悟って言います。よろしくおねがいします。」 なんとなく、礼儀正しそうでいて、乗り気な人だった。 「おい、おまえら、本当にこのティオレイドに入る気はあるんだろうな」 恭司が言った。 「あ、そのことなんですけど、俺は臨時で来てるだけですからね、 入るかは入らないかはまだ決めてないですよ。」 ショーンが言った。 恭司はショーンとミハエルの前に出た。 「俺がテストする。」 「えっ!?」 体育館のギャラリーに上っているのは アレックス、山南、エレノア、永見の4人。 ショーン、ミハエル、フィスナ、恭司は下に出ている。 「テストですか・・・」 ミハエルが言った。 「俺がこっちのコートから攻める。 おまえらはそっちから。 俺がボールをあのゴールに2本、入れたら俺の勝ち。 どんな方法でも構わない、おまえらが一本でも入れればお前等の勝ち。 普通のバスケの試合だ。1対3のな。」 恭司はバスケットボールをショーンに渡した。 「能力も使って構わん。 俺も使うからな。」 恭司は言った。 「うわー、鬼だなー」 ギャラリーのアレックスが声を漏らした。 「聞こえてるぞ」 恭司が言った。 「で、俺たちが勝ったらどうすんの?」 「そうだな、チキンキャンデーの全種類をやる。 地域限定版と季節限定版も合わせてな。」 「俺たちが負けたら?」 「テストだけだ。別に俺は何も求めない。 だが、俺が勝ったら、俺のパシリになってもらう。」 「のった」 ミハエルが言った。 「ちょっと、のらないで!! こっちの勝ちがチキンなんとかってのが気に食わない!!」 フィスナが言った。 「お肌の健康にもいい、ベジタブル味もあるし、 便秘解消にもなるピーチ味もある。」 「のった」 「えー!?」 これにて試合条件が重なった。 「準備いい?」 山南が言って、笛を咥える。 ぴーっと鳴らすと、ショーンは早速ドリブルを着き始めた。 しかし目の前には恭司が立ちはだかる。 「ミハエル!!」 ミハエルを呼んで前にボールを投げる。 「うっそ!!取れない!!」 ミハエルが全速力でボールに追いつこうとしていた。 「私が行く!!」 その先でボールをとったのはフィスナ。 恭司は振り向き、フィスナを追う。 「どりゃあ!!」 いきなり飛び蹴りをかますショーン。 しかし、恭司は倒れなかった。 背中一帯に氷を纏っていた。 それが盾になったのだ。 「甘い」 一気に走っていき、 フィスナに追いつく恭司。 フィスナはゴールまで遠かったが、 ボードに当てるようにしてボールを投げた。 「ミハエルくん」 ミハエルはボードに跳ね返ったボールを取りに行った。 今のミハエルがゴールに一番近かった。 そのままジャンプシュートをするミハエル。 「凍れー!!」 床から氷の柱が飛び出し、ボールをブロックした。 弾かれるボール。 「氷の能力者か!?」 ミハエルは弾かれたボールを追った。 が、横から恭司に追い抜かされていた。 「速い!!」 恭司の脚の動きを見る限り、それは速い走り方とは言えなかった。 恭司は腕を左右に振り、そして体勢を低くして走っていたのだ。 「なんだあの動き!!」 追い抜かされるミハエル。 ボールをキャッチした恭司。 「うお!!」 ミハエルは滑って転んだ。 ショーンとフィスナが恭司を追う。 恭司は氷の柱を階段のように出した。 「一本目!!」 「トネールプリュールル!!」 階段を上り始めた恭司の後ろから、 ショーンは氷に触れながら言った。 氷はすぐに解けていった。 恭司がバランスを崩したところ、 フィスナのバイオレンスゴーストが恭司の脚をつかんだ。 フィスナは恭司に向かっていき、 そしてボールを奪おうとした。 「そう簡単に取らせるものか」 「あひんっ」 フィスナが転んだ。 「痛ぁー・・・」 その時、力が抜けてバイオレンスゴーストは恭司を放してしまった。 「なんだ?地面が滑るぞ・・・」 ショーンは床に触れて言った。 「ふっ」 恭司は手から氷の塊を出し、 ボールをゴールの位置まで上げた。 「一本目だ」 ボールはリングをくぐり、そして落ちた。 「おまえらのオフェンスだ」 下ですぐにボールをキャッチしてショーンに渡した。 ショーンはそれを持って、コート外からパスを出す。 ミハエルがキャッチした。 「ショーン、わかったわ」 フィスナがショーンに言った。 「何が?」 「さっきの見たでしょ? あの走り方」 「恭司さんの?」 「あれは走ってたんじゃない、滑ってたのよ」 ショーンは何がなんだかわからなかった。 「とりあえず、彼の不自然なバッシュを脱がせればなんとかなる・・・」 「不自然なバッシュ? まぁとりあえずバッシュを脱がせるんだな?」 ミハエルは先に前方へ、ドリブルして走っていった。 ショーンはその横からフォローする。 フィスナは背後からの援護。 「さぁ、かかってこい」 前にはディフェンスの恭司。 「ぬわぁっ!!」 ミハエルは滑った。 「パスだ!!」 ミハエルはその声を聞いてショーンにパスをした。 「OK!!」 ショーンはボールを持ったまま動かない。 「フィスナさん!!前に出てください!!」 ショーンは言った。 「これでいいの?」 「OKです!!」 ショーンの前にフィスナが立った。 ミハエルは立ち上がり、それを見てニヤリとした。 「なんかすごいことやるのか?」 ミハエルはショーンの前方、つまりフィスナのもっと先、 恭司の目の前に立った。 「ん?」 ミハエルは恭司に殴りかかった。 「ふん、無駄だと・・・」 氷の壁を作り、ガードを試みた。 が、ミハエルは氷の壁を貫通し、 恭司の顔面に拳を一撃、ヒットさせた。 「ちっ・・・」 恭司は怯んだ。 と、その横を通過するショーンとフィスナ。 「させるか!!」 と、言いながら、後ろ足に力を込め、 床を蹴ろうとした。 「だめだめー、動かないで」 フィスナのバイオレンスゴーストが恭司の顔を抑えていた。 飛び出し、走り出そうとしていた恭司は、 顔を支点に、その勢いのまま後ろに倒れこんだ。 「梃子の原理よ。」 フィスナとショーンはゴールに向かって突っ走っている。 「させるかぁー!!」 恭司は氷の柱をショーンの足元から出現させた。 「ぅわ、うわぁーっ!!」 ショーンは舞い上げられた。 が、早めにジャンプしていたフィスナに助けられた。 ボールはそのときの勢いで、恭司の方向へ転がっていった。 「やった!!ボールはこっちにくるぞ!!」 恭司は起き上がるのとボールを取ることを同時にしようと、 這いながら手を床に着く。 「ん?」 「高そうな靴じゃないの・・・もらってくわよ」 恭司の足はバイオレンスゴーストにつかまれていた。 「なぁにぃ!?放せ!!」 「ああ、放すさ、そのかわりバッシュはもらったよ」 「くそ!!」 バイオレンスゴーストは靴を持ち、フィスナの方向へ戻っていく。 その途中、ボールを取りに行こうとした。 背後から走ってくる恭司、 靴をもって走るバイオレンスゴースト。 二人は同時に飛び込んだ。 と、恭司はあらぬ方向に飛び込んでいた。 「なぁにぃ!!」 「ボールはもらったよバッシュもね」 遠くで微笑むフィスナ。 恭司はフィスナたちとは反対方向に飛んでいたのだ。 「水で・・・」 恭司の前に現れる 「・・・屈折は作れる」 ミハエル。 「あんたが見ていたのは光の屈折を利用して 作った、フィスナさんの虚像さ。」 ボールは、フィスナの手を離れ、リングをくぐった。 もどる