第13話 「雷と風」 「か・・・勝った!!」 ギャラリーから山南の声。 「ショーン!!やったよ!!勝ったんだよ!!」 ミハエルが言ってくる。 「ああ、勝ったな」 ショーンは笑っていた。 と、恭司がショーンの前に出てきた。 「おめでとう。入団を認めるよ」 右手を出してきた。 ショーンも同じく右手を出した。 が、その瞬間、ショーンは吹っ飛んだ。 「な、なにしてんのよ!!」 フィスナが恭司に言った。 どうやら恭司がショーンをぶんなぐったらしい。 「何が勝ったな、だ!! 貴様等みたいに浮かれた奴等、俺は嫌いだね!!」 「でも・・・今入団を認めるって」 「ああ、言ったとも!! 入団は認めてやる!! 俺のチームフリーズに入れてやらないとか、そんな嫌がらせもしない!! だがな、勝った、と言ったよな? まだ戦いは始まってもねぇー!! おまえらは俺に勝っただけで浮かれてた!! それじゃ敵の奴等にすぐに全滅させられちまうんだよ!!」 と恭司は怒鳴った。 ショーンはすっくと立ち上がった。 「わかりました・・・」 恭司を見て、手の甲で唇の血を拭いた。 「俺もあんたが嫌いです。 大ッ嫌いです。 それでも味方してなきゃってのもわかってます。 でも、覚えておいてください。 俺はあんたに負けてもないし勝ってもない。 あんたが言ったとおり、戦いは始まってもない。」 言って体育館を出ていった。 フィスナとミハエルもそれに続いた。 「あーあ、どうしてあーもプッツンなんだろね・・・」 山南が苦笑して言った。 「しょうがないですよ、 北橋さんは真面目な方ですから。」 「悟くん、君も真面目だと思うけど」 「え、そうですか?ハハ」 山南と永見が話している。 「さーてと、そんじゃまぁ俺たちも帰るかー」 「そうね」 「そんじゃ、チームフリーズさん、ごきげんよう」 アレックスが言った。 「バーイ」 手を振りながら答える山南。 「北橋くん、帰るよ」 「・・・わかってる」 秘密基地は誰にも知られていない地下にあるが、 パルティ・ド・ティオレイド要員用の住居は地上の高級ホテルだった。 グリノホテルがその名前だった。 名前の由来は、パルティ・ド・ティオレイドの隊長の名前がグリノだからであった。 だが、要員はグリノを見たことがない。 話をするときはいつもメールか無線だった。 グリノホテル、50階建て。 1階から5階までがロビー、エントランスラウンジ、ショッピングモール、室内プールなど、 娯楽施設や他。 6階から40階がホテルになっており、1階7部屋ある。 そのうち、現在は39階と40階がパルティ・ド・ティオレイドの住居となっている。 41階から50階までは不明とされている。 このホテルは公的にも商売をしていた。 「こんなところに泊まるの?」 と、フィスナ。 「いいじゃん、最高!!」 ミハエルは騒いでいるだけ。 「でもさ、こんなところだったら敵に見つかっちゃったときどうするの?」 たしかに、と頷く新入りチーム。 「大丈夫よ」 山南が横を歩きながら言った。 「ここだって一応基地なんだから」 「え?そりゃどういうことだ?」 ショーンが聞いた。 「まあ、それは戦いが激しくなってきたときのお楽しみね。 でも激しくなるまえに敵を鎮圧しなきゃいけないんだけどね。」 山南はひとつの部屋の前で立ち止まった。 「はい、鍵。」 「サンキュー」 「学校の時間になったらロビー集合ね。」 山南はショーンに鍵を渡した。 「OK」 フィスナとミハエルは山南についていった。 フィスナは隣、ミハエルは向かい側の部屋だった。 そしてショーンが鍵をあけて部屋に入ろうとしたとき、 山南がショーンのところに戻ってきた。 「ねぇ、ちょっと話してってもいい?」 「いいけど」 ショーンはフィスナとミハエルが部屋に入ったのを確認して、 山南を部屋に入れた。 ショーンは上着をクローゼットに投げ入れて、 ソファに座った。 山南はもうひとつのソファに座った。 「で、話って?」 「うん・・・」 なんだか言い辛そうにしている。 ショーンはだいたい勘付いた。 きっとアレだ、と、少しよかったが。 「新入りチームのリーダーになってほしいの」 「な、なんだ、そんなことか・・・」 「え?そんなことって?」 「あ、いや・・・で、俺がリーダー? やってもいいけど、リーダーって何をするんだ?」 「んー、連絡係との仲介?とかー、 いろいろな判断とかー それだけかな。」 「そうか。 OK、やるよ。」 「じゃ、携帯のアドレスとか教えて」 「じゃ、ってなんだよ・・・ まあいいけど」 ショーンは携帯電話を見せてやった。 「はい、できた」 「そうか、じゃあ試しに電話して」 山南は自分の携帯で、ショーンに電話をした。 「来た。」 山南は電話を切った。 「お?さっそく任務のメール・・・ 今転送するね」 「おう。」 その日は、任務のメールを受け取り、 山南が自分の部屋に帰って終わった。 ショーンは一人だったので、もうシャワーを浴びて寝ることにした。 ノックの音がする。 フィスナは目を覚ました。 デジタル時計のかすかな光が目に刺激を与えている。 午前2時。 まだ深夜だ。 こんな時間に・・・と重い体を持ち上げて、 ドアの方に向かった。 ノックの音はドアからではなかった。 フィスナは背後に振り返った。 窓ガラスが割れ、豪風が入り込んできた。 それとどうじに、一人、人間が飛び込んできた。 フィスナは風圧でドアに押さえつけられた。 入ってきた人物が割れたガラスを拾い、手に握った。 そしてフィスナの心臓目掛けて振り下ろした。 「うっ・・・!!」 先に声を上げたのはフィスナではなかった。 フィスナは刺されかけた幽体を自分の体に戻し、部屋の電気をつけた。 「誰?」 フィスナはその人物を突き飛ばし、仰向けにさせ首元を踏んだ。 それは長髪の男だった。 男は両手を上げ、降参のポーズをとった。 「いやー、まいったなぁー、 いきなりやられちゃうなんて。 僕、ノーゼン・フォルスターって言います。」 「フォルスター?どこかで聞いた名だ。」 「はい。僕の兄弟があなたがたに襲撃をかけていたはずです。 ホラ、覚えてるでしょ?この風――」 ノーゼンは挙げた手の指を振った。 その場に風が巻き上がり、フィスナは運良くベッドに飛ばされた。 「つまり・・・敵ね?」 「そうです。」 言って手を振り下ろすノーゼン。 風が刃物が裂ける音を立てながら飛んでくる。 フィスナは紙一重で避けきった。 「バイオレンスゴースト!!」 フィスナは幽体を出して天井に飛ばした。 バイオレンスゴーストは天井を蹴ってノーゼンに飛びかかった。 「ウィンドブレーカー・ダブルゲーム!!」 ノーゼンは両腕を振って風を起した。 バイオレンスゴーストはかき消され、 フィスナは壁に突き飛ばされた。 「うっ・・・!」 フィスナは風に張り付けにされ、身動きがとれなかった。 なんとか動こうとしても指先を少し動かせる程度。 「これで終わりだね。」 ノーゼンは不気味な笑顔を向けて言った。 ここでフィスナは考えた。 なんとかしてこいつを倒せないか。 考えていれば何かいいアイデアが浮かぶ、と、 それは全くではないが可能性が低い。 ショーンかミハエルあたりが助けに来る。 それも部屋に鍵があるので入って来れないし、 今も気付いていないだろう。 それとも、ここで謝れば許してくれるか? と言っても、何に対して謝るのか。 結局何も出来ないで終わるかもしれない。 「ウィンドブレーカー!!」 風が迫ってきた。 ショーンはガラスの割れる音で目が覚めた。 隣の部屋だ。 つまりフィスナの部屋。 でも警報がなっていない。 きっとコップか何かを落としたのだろう。 目が覚めてしまい、もう一度寝る気にもなれない。 「2時かよ・・・」 ショーンはテーブルにおいてあった時計を見て言った。 とりあえず上着を羽織って外にでも出ようか、と考えた。 が、今の時間どこの店もやっていないだろう。 ショーンは窓を開けてバルコニーにテーブルを出した。 コップにミルクティを入れてバルコニーのテーブルに置いた。 夜空でも見ながら飲もうと思った。 ふと、隣のバルコニーを見た。 窓ガラスがない、いや、割れている。 しかも内側に。 やはりフィスナの部屋で何かあったに違いないと思った。 ミルクティを一気に飲み干し、となりのバルコニーに飛び移った。 目の前で起きていることに少し驚いた。 「ウィンドブレーカー!!」 ノーゼンが風を巻き起こし、そしてそれがフィスナに向かっていく。 ショーンはとっさにそこにあった扇風機を手に取り、 そしてフィスナの前にでた。 扇風機にはコンセントは刺さっていない。 ならば、 「トネールプリュールル!!」 扇風機は轟音を立てて回転を始めた。 ノーゼンが巻き起こした風を分解して被害を小さくした。 ショーンとフィスナの背後の壁紙に傷がついていった。 扇風機はそのうち、黒い煙を発し、そしてボンッと音を出して動かなくなった。 「あらま・・・2対1・・・ こっちには不利な状況ですね」 ノーゼンは言った。 「逃がしやしないぜ。」 ショーンはそう言って扇風機をノーゼンに向かって投げ飛ばした。 瞬時、風が巻き起こり、扇風機は空中で、 ノーゼンの顔の前でとまり、そして落ちた。 ショーンとノーゼンは睨み合ったまま動かなくなった。 フィスナはその隙を見抜いて電話のところまで飛んだ。 バイオレンスゴーストを利用すれば、手をつなぎ、 一定時間空中を移動することができる。 沙耶華の部屋に電話した。 ノーゼンからはフィスナがいる位置は壁があって攻撃できない。 死角になっていた。 「さて、これからどうするか。」 「そうですね、どうしましょう。」 ショーンとノーゼンの間には闘気が立ち込めていた。 もどる