第14話 「反射」 ショーンとノーゼンが向かい合っている。 フィスナは横から見ていた。 ショーンは気付いていた。 フィスナが見ているだけではないと。 ノーゼンの背後にはすでにフィスナのバイオレンスゴーストがいた。 ショーンはその距離までノーゼンを下がらせようと思った。 「くらえ!!トネールプリュールル!!」 ショーンは空中に放電した。 バレーボール大の雷の弾が数個、ノーゼンに向かっていった。 が、ノーゼンは全てを避けきり、ガラスの割れた窓からベランダに飛び出た。 「戦略的撤退だよ」 「待て!!」 ショーンは思った、なぜノーゼンは後ろに避けなかったのか・・・ まさか、バイオレンスゴーストの存在に気付いていた? ノーゼンの能力は風のはず・・・ 「うそでしょ・・・」 いつの間にか、フィスナが物陰から出てきていた。 ベランダを見た。 ノーゼンは飛び降りた。 二人はベランダに駆け寄り、下を見た。 地面に死体はない。 「キャァーッ!!」 階下から悲鳴。 「しまった!!一般市民にまで巻き添えを・・・」 「キャァーッ!!」 「しつれい、何もしませんから、ちょっと室内を通らせてください。 外に出たいんです。」 ノーゼンは少女の前に出た。 「け、警察呼びますよ!?」 ノーゼンはその少女の腕を捕らえた。 「困ります。 ですからそのー・・・通らせていただくだけでいいんです。 別に何も盗みませんし・・・」 「ドロボー以外の何がベランダから部屋に入ってくるのよ!!」 「だからあの・・・ それは、説明します」 「・・・警察でね」 「待ってください!!ほんとに少しだけ!! 上の階が火事で、降りてきたんです!!」 「・・・降りてきた?」 「そう、ベランダから・・・」 ノーゼンは突然頭痛に襲われた。 痛みが激しくなり、そして立ち上がれなくなっていた。 「どう?痛いかしら」 少女はノーゼンの顔を覗き込んだ。 「ぐはぁっ・・・!!」 ノーゼンは床に伏せた。 脳みそが弾け飛びそうだ。 「降りてきた、ねぇ? このホテルには火災用の設備も完璧、 それでも火事は起きてしまうし、 火を止められる事だって百パーセント完璧なわけじゃない。 それに部屋には消火器がなかったし。 そう、窓から逃げてくるしかないわね? だから窓から出てきたのもおかしくない。 でも、あんたは階下の私の部屋に来た。 各部屋のベランダには避難用の収納シューターがあるから それを使って地上に降りることが出来る。 なのに私の部屋に来た。 だからわかった。あんたは敵だって。」 ノーゼンは少女の足を掴もうとした。 が、少女はノーゼンの体を蹴飛ばした。 「グホッ・・・」 「さっき、フィスナさんから電話があったんだよね、 敵に襲われてるって。 だから下の階に来てみたらこれだ。」 沙耶華はノーゼンの額に手を当てた。 「直にやっても手加減すれば死なないから。」 その手に力を込めた。 「ワイルダーンエレクト!!」 言った瞬間、沙耶華は横腹部に激痛を感じた。 そして沙耶華は部屋のドアの方に吹っ飛んだ。 「これは・・・いける・・・予言どおりだ・・・」 ノーゼンはそう言って立ち上がった。 沙耶華の腹部に当たったのは扇風機の羽だった。 ノーゼンがあらかじめ上の階で外に向かって投げていたのだ。 風の能力者のノーゼンなら、それをブーメランのように戻すことなど簡単だった。 「予・・・言・・・?」 沙耶華はわき腹を抑えて、ノーゼンを見た。 ノーゼンはドアの前に来ていた。 「ここで予言に従わないと、運命が変わってしまうんでな。 ここからでさせてもらうよ。」 ノーゼンはドアに手をかけた。 しかし、ドアノブは静電気を起し、ノーゼンは手を離した。 「なにっ!?これはッ!!」 ノーゼンのドアノブを触った手に、雷が渦巻いていた。 「・・・これも、計算どおり!!」 静電気を我慢し、ノーゼンは勢い良くドアをあけた。 そこには手から雷を放電させ、悪戯っぽく微笑むショーンがいた。 ノーゼンはショーンの攻撃を避け、廊下を走った。 ショーンとフィスナはノーゼンを追いかけた。 ミハエルもいつのまにか起きてきて沙耶華の近くに待機した。 沙耶華は思った。 何か変だ・・・なぜ警報装置がならなかったんだ・・・? 「立てるか?沙耶華さん」 「大丈夫」 沙耶華は自分で立ち上がった。 ミハエルと沙耶華は他の仲間たちに連絡することにした。 ノーゼンを追っているうちに、ホテルの配線室に来ていた。 給排気用のダクトや、電気配線が並んでいる。 「こんなところで戦うのか?」 「しょうがないでしょ?」 ショーンとフィスナはノーゼンを探した。 この配線室の中で追っている時に見失ってしまったのだ。 と、そのとき 「うわっ!!」 ダクトが切断された。 その間を通って風が勢い良く吹いた。 ショーンはなんとか避けきった。 「そこにいるな!!」 そのダクトから回り込んでみたが、ノーゼンは見当たらない。 フィスナが歩いていると、目の前に何かが出現した。 一瞬、驚きはしたが、それが見覚えのある顔で安心した。 永見とアレックスだった。 永見がアレックスをティッカウェイでつれてきたようだ。 「大丈夫かい?お嬢さん」 「大丈夫。」 フィスナはアレックスが好きではなかった。 無愛想な答えでも返しておくだけでいいと思っていた。 「よし、みんな、俺のところに集まれ」 アレックスは言った。 ショーン、フィスナがよってくる。 「いいか?俺がこれから触る場所には近づくな。」 どういう意味だかよくわからなかった。 それだけ言うと、アレックスはダクトを触り、そしてまた歩き、 離れたところでダクトを触り、それを繰り返して数箇所、触れていった。 「何してるんですか?」 フィスナが聞いた。 「まぁ見てな。 相手が意地張って出てこないんならあぶりだすまでだ。」 と言った時、先刻アレックスが触った場所から火が出た。 「俺の時限爆弾式能力、タイムサイドストライク。」 アレックスが指を鳴らすと、回り全体が火事になった。 「こ、これじゃあ俺たちまで火炙りじゃねぇか!!」 「そのとおりー、だから俺たちは逃げるんだよー」 アレックスはノリノリで配線室の出口に向かった。 ショーン、フィスナ、それから永見もそれに続いた。 アレックスが道を出口に一番近い場所で曲がった。 出口が見えた。 しかし、そこには二人の男が立っていた。 ノーゼンと・・・ 黒いマントを羽織った暗い顔の男。 「みぃつけたぁー!!」 アレックスはそいつらに走りこんでいった。 永見はアレックスの肩を捕らえた。 「焦らないでください!! 真正面から行って負けたら意味がなくなってしまうんです!!」 永見が言ったとき、ノーゼンが風の攻撃をした。 永見達の後方に下がっていたショーンとフィスナは 分厚い鉄でガードされたダクトに隠れた。 永見達に風が迫る。 「ティッカウェイ!!」 永見とアレックスが消えた。 消えたと思ったら、暗い男とノーゼンの背後にいた。 「フォーヘイドハイム!!」 ノーゼンの頭上から、アレックスが掌に熱を集めて攻撃した。 ノーゼンは避けきれず、腕でガードした。 「惜しい、あと少し!!」 アレックスは言って、後退するノーゼンに追い討ちをしようとした。 「ダウンズゲート!!」 暗い男が言った。 その瞬間、何が起こったのか、アレックスはすでに血を流していた。 斬撃の跡が体中にあった。 おそらく、ノーゼンのウィンドブレーカーだろう。 しかし、一体いま、何が起こった・・・? アレックスは倒れた。 「アレックスー!!」 フィスナが叫んだ。 永見はティッカウェイでなんとかやりすごしたようだった。 ノーゼンは何故か驚いていた。 「アルベルンさん、今のはまさか・・・ ダウンズゲートで僕に攻撃させましたね?」 「・・・」 暗い男はアルベルンというらしい。 ダウンズゲートが奴の能力だろうか。 などとショーンは考えていた。 「・・・ノーゼン、帰るぞ」 アルベルンが言った。 「いえ、予言にはしたがいません。」 アルベルンに笑顔を向けるノーゼン。 「それならば、俺だけで帰る・・・」 アルベルンは配線室から出ていった。 ノーゼンはショーンたちのほうを向いた。 「僕は対人数戦は得意じゃないんですよ」 ノーゼンが言った。 「ですが、僕は予言にも従う気にはなれない。 予言ではここで一旦、引けば勝てる予定だったんです。 でもそれもつまらないと思ったので。」 ショーンはノーゼンの前に出た。 「サシで勝負だ。」 ノーゼンはその一言に驚いた。 「俺と戦っておまえが勝てば、逃げてもいいし、 フィスナとも永見とも戦ってもいい。 だが俺が勝てば・・・容赦しないぜ。」 「ちょっと、何ふざけてるの!?」 フィスナが言った。 「いや、ここは俺に任せて。勝てるから。」 「勝てるって言っても・・・」 ノーゼンもショーンもすでに周りの火の影響で汗をダラダラと流していた。 もちろんフィスナも永見もである。 ショーンはいきなり雷で攻撃した。 「トネールプリュールル!!」 「ウィンドブレーカー・ダブルゲーム!!」 X型の風がショーンに迫ってくる。 雷は風をすりぬけ、そしてノーゼンに向かっていった。 ショーンは風を避けた。 ノーゼンも同じく、雷を避けた。 と、ノーゼンの背後の鉄壁に雷がぶつかると、 そのまま反射して戻ってきた。 「なにぃっ!?」 ノーゼンはそれに気付いた。 しかし、避けるまではいかなかった。 「うわぁぁぁあ!!」 ノーゼンは感電して倒れた。 配線室の中が崩れ始めた。 「早く、つかまってください!! ティッカウェイで出ましょう!!」 永見が言った。 フィスナとショーンは永見の肩につかまった。 「待った!!」 ショーンは走って倒れたアレックスを抱えた。 「僕がティッカウェイで移動できるのは僕含めて3人までだったんですが・・・」 永見が言った。 「それじゃ置いてけって言うのか?」 「いえ、試してみます。」 永見がアレックスにも触れた。 「試すんじゃなくてやるんだよ。」 ショーンが言った時、天井から鉄網で囲まれたダクトの一部分が落ちてきた。 「ティッカウェイ!!」 ショーンはそのとき、浮遊感のようなものを感じた。 そして気がつくと、ホテルのロビーに出ていた。 そこには、消防隊員や、警察が大勢来ていた。 もうすでに何人か配線室に向かっていた。 火は、他の場所にも燃え移っていて、一般市民にまで被害が出ていた。 救急車は来ている。 「救急車!!」 ショーンは叫んだ。 「ショーン!!」 いつ来たのか、沙耶華がショーンを呼んだ。 「そっちの救急車は一般用!! 私達の病院は基地にある!!」 そのときだった。 ロビーの大広間につながる広い廊下から、一台の車が走りこんできた。 「なんじゃこりゃぁあ!!」 ショーンがビックリして言った。 「早く!!乗って!!」 ドアが開いた。 ショーン、フィスナ、永見がアレックスを抱えて車に乗せた。 「もう一人乗って!!」 車の運転席から叫ぶ声。 カーマだった。 「俺が行く!!」 ミハエルが走ってきた。 「頼んだぞ」 ショーンが言った。 アレックスを基地まで運ぶのに護衛が必要だとわかっていたから。 カーマの車はミハエルを乗せると、ロビーのエントランスから勢い良く走り出していった。 ショーンは、今まで戦っていた疲れと、 深夜に起されたことが原因で、その場に倒れこんだ。 沙耶華はその体を支えた。 「ショーン!?」 沙耶華はその後、ショーンを部屋につれて帰った。 もどる