第15話「ガルムベルド団」 基地に走っている途中、 東から日が昇り始めた。 カーマは、ヘッドライトを消した。 しばらく直線の道に入ったとき、 後ろに寝かせたアレックスを見た。 酷い斬撃の跡がある。 カーマは視線を前に戻した。 日の光が当たるまで気がつかなかったが、 上空に巨大な陰があった。 それは、巨大な画鋲か何かを思わせる形状をしている。 大きな筒状の物があり、その上により大きな円盤状の物がある。 ところどころ穴が開いているようで、そこから光が漏れている。 カーマは自分の目を疑った。 「な、なんだあれー!?」 その巨大な画鋲はのっそりと動いている。 飛行機は、飛んでいるところを見ると、ゆっくりに見えるというが、 これもそんな塩梅だ。 空中で、ゴウンゴウンと音を響かせ、どこかへ向かっている。 高層ビル群が目の前に見えている。 そのまま進むとぶつかってしまうのではないのか? カーマは車を急がせた。 なるべくしも関わりを持たないようにと。 そして、外の音に気付き、窓を開けたミハエルが声を漏らした。 「うぇー、なんだありゃあー」 ミハエルは、それから目を離し、アレックスを見た。 「あんたにも見せてやりたいよこの光景。」 その後、しばらくして秘密基地への入り口が見えた。 緊急入出門の前に車を止めた。 そこからだと、正門から入るときより、手続きが楽なのである。 ただし、緊急であるという状況を説明できないと入れない。 門の横に入管がいる。 その男が車の横に来た。 「どんな緊急の用ですか?」 「後ろの窓開けるから見て欲しい。 私はチームフレアのカーマだ。」 「あー、あの・・・」 どうやら男はカーマを知っていたらしい。 カーマが後ろの窓を開けると、男が中をのぞいた。 「アレックスさんじゃないですか!?」 「わかったなら早く門を開けてくれないか? アレックスが死んじゃうから。」 男は急いで門を開けた。 門は完全に開ききっていなかったが、カーマは車を発進させて、 秘密基地の敷地内に入った。 そのとき。 『えー、あー、マイクテストぉ、ですよー。』 上空から大音量で聞こえた。 遠くからメガホンで叫ばれた時のように、少し雑音が混じっていた。 カーマとミハエルはそれがどこからの音か理解していた。 あの巨大な画鋲から。 カーマは構わず病院に向かった。 『生麦、生米、発泡酒、ですよー。 えーっと、あたしたちぃ、わぁ、ガルムベルド団なのですよー。 あたしぃは、ローナ・フランクリン、ですよー。 ご用件はー、この付近、一体の高層ビルぅとかにぃ、 すんでいらっしゃるぅ、お金持ちをぉー、 あっ!! あにー、ダメダメ!!今、演説ちゅーですよー!!あにー・・・』 『えー、ゲフン・・・ 失礼いたしました。 一般市民たちよ、君たちは驚き戸惑っているはずだ。 我等、ガルムベルド盗賊団の居城、そして船でもある、 ガルムベルド船でこの街に現れたのだからな。 しかし我等も理由、目的があってここに来た。 低俗と呼ばれ、金持ちや悪徳業者の尻に敷かれる民、 君たちを救いに来たのだ。 我等の敵なる者を知る者は我等に言ってくれたまえ。』 船内の放送管理室にて、一人の男と二人の女が話していた。 「あにー、少し遊んだだけじゃん、ですよー。」 「あーのーなぁ、ここで遊んじゃいけねぇんだよ、分かるか?」 「わかんないですよー・・・」 男は一つの機材に寄っていった。 小さい女の子もそれに続いた。 もう一人の女は二人を見てニッコリと笑った。 「ねー、ネリルちゃんもそう思うですよーね?」 ネリルは、彼女を見て少し首をかしげ、表情だけで苦笑した。 「あーっ!! ネリルちゃんも、あにーみたいにあたしぃに遊ばせないつもりなんですよー!! 裏切ったですよー・・・」 彼女は両腕を振るって駄々をこねた。 「ローナ」 「なぁにぃ、あにー」 男は、一つの機材に触れた。 スイッチを切ると、放送管理室の電灯が全部消灯して暗くなった。 遠くに窓があり、そこから光が少し漏れてるだけで何も見えない。 「わぁー!! 暗い、暗い、暗いですよー!! つけてくださぁいですよー!!」 ローナは、泣き喚いた。 「ちょっと機材の操作を間違えでもしたらこうなるんだぞ」 男は少し強い口調で言った。 「わかりましたですよー!! ごめんなさいですよー!!」 男は電灯のスイッチを入れた。 「はぁー、怖かったですよー・・・」 ローナはそう言って男に近づいていった。 「死ぬかと思いましたですよー」 「アホか」 ローナの顔は涙でぐしょぐしょになっていた。 「メリル、教えてくれてあり・・・」 男がメリルの顔を見たときに気付いた。 メリルはすぐに顔を拭いて笑顔を見せた。 「あー、あにー、メリルちゃんも泣かしたですよー。」 「メリル、ご、ごめん!!」 メリルは両手を振ってる。 大丈夫だと言っているようだ。 メリルは幼い日に両親を目の前で殺され、 そして言葉を失った。 「なぁ、お詫びと言っちゃなんだけど、 欲しいもんがあったら言ってくれよ」 メリルは少し恥ずかしがった。 そしてメリルは、男の肘を掴んで自分の部屋の前につれてきた。 メリルはファッション誌を取り出し、 男に見せた。 「これか・・・ふむふむ。」 病院の中からでも演説の一部始終は聞こえていた。 手術室のライトは依然、手術中を照らしたまま。 「傷が深くて助かったとしてもこれからは前線で戦うことは出来ないでしょう」 その医師の言葉が、ミハエルとカーマの心を重くした。 カーマはそれ以外のことも考えていた。 先刻、突如現れたガルムベルド団。 彼等は敵であるのか味方であるのか。 もしくは今現在、敵となっている組織の一部なのか・・・ 「ワイズマン・・・」 カーマは敵組織の名前を呟いた。 ミハエルは疑問を抱き、聞いてみた。 「賢い人?誰がですか?」 ワイズマンには賢い人という意味がある。 「違う・・・敵組織の名前・・・」 ミハエルは驚いた。 「え!?そんな、敵組織って確定なんですか? もうわかってるんならさっさと動きましょうよ!!」 カーマは頭を振った。 「情報が少なすぎる」 小声で言った。 そのとき、手術中のライトが消えた。 観音開きの扉が開けられ、そして重い面持ちで医師が出てきた。 ミハエルとカーマは失望にくれた。 それよりも、怒りと悔しさが湧き上がってきた。 電話が鳴った。 ショーンは目を覚まし、電話に備え付けてある時計を見た。 午前の10時半。 電話を取ろうとした。 だが、何故だか右腕が動かない。 力を入れるとベッドから少し浮きはするものの、 何かの重みがある。 ショーンは、それを見た。 ショーンの腕枕で眠っている沙耶華を。 ショーンはわけも分からず、冷や汗をかいた。 (ん?昨日、何があったっけ・・・ えーっと、深夜2時くらいにガラスが割れる音が聞こえて、 構わずバルコニーでミルクティ飲んでて・・・ あれ?そっから思い出せない!!) ショーンは敵と戦ったことすら忘れていた。 しょうがないのでショーンは左手で電話を取った。 「もしもし」 『ミハエルだ』 「あー・・・アレックスさん、どうだった?」 『・・・死んだよ・・・』 「・・・そうか・・・わかった」 電話を切って元の場所に戻した。 そしてショーンはベッドに戻った。 目を瞑れば、アレックスの顔が思い出される。 ショーンが右を向いた。 自分の意思ではなかった。 顔を、引き寄せられた。 気付くと、沙耶華の顔が目の前に。 「起きた?」 「お、起きた・・・」 再び冷や汗をかいた。 「可愛そう・・・」 「誰が?」 「エレノアさんとフィスナさん・・・ アレックスさんを慕っていたのに・・・」 ショーンは思い出した。 そういえば沙耶華はテレパシーの能力があると。 今ショーンが電話で聞いたことを脳の中で見ることぐらい容易かった。 「本題に入ると・・・」 「本題?」 沙耶華は真剣な顔になる。 「どーう責任とってくれんのよ」 「いや、ちょっ・・・待て!! 俺は何もしてないって!! ってかここ、俺の部屋だろ?」 ショーンは部屋の家具の配置を見た。 自分の部屋じゃない・・・ 「ここは私の部屋よ? 何言ってるの?」 「っだぁぁぁぁぁあ!! 嘘ぉ!?マジィ!?」 ショーンはもう一度辺りを見回した。 「ショーン・・・」 「なんで俺はここにいるんだー!!」 ショーンの朝は始まったばかりだ。 これから沙耶華と学校行かなきゃだぞ。 もどる