第17話「キールと福海」
福海は右手でキールの棒を払いのけると、
左腕の双刃を突き出した。
「遅い」
キールはそれは簡単に避けた。
「ふっはっはっは、
この双刃にはこんな特技もあるんだぜ」
福海はキールに双刃の刃先を向けた。
「双牙!!」
福海の双刃がキール目掛けて飛んできた。
「チビッちまう特技だろぉ、ハハハ」
キールはなんとか棒でガードした。
その時、福海はすでにキールの目の前に来ていた。
右腕を振り上げる。
そしてキールに殴りかかる。
が、キールはバックステップでやりすごした。
そこから福海の連続攻撃が開始した。
「はっはっはっは!!形勢逆転かー!?」
「いや・・・」
キールは棒で福海の頭を叩いた。
「ぶっ!!」
福海は頭をさすった。
「いてぇじゃねぇか!!」
キールは周りを見回した。
アレキス達がいなくなっている。
きっとモーンストンバイクですぐに逃げられるように準備してるのだろう。
警察の応援がくるのも遅くは無いはずだ。
「墨ィーッ!!」
福海が叫ぶと、墨島が動いた。
「墨島ァ、援護しな」
墨島は無言でキールの前に出てきた。
両手には何も持っていない。
こいつは格闘技だろうと思った。
しかし、墨島が構えると、両袖からナイフが出現した。
刃渡り約30センチのナイフ。
墨島はナイフをキールに向けた。
キールは先制攻撃で墨島に向かっていった。
墨島は消えた。
「なにっ!?」
キールは頭上に目を向けると、
逆光で陰になっている墨島が身を翻し、落下してくるのがわかった。
「ぐぅっ!!」
ナイフ攻撃を両手で棒を抑え、ガードした。
墨島が地面に着地すると、連続攻撃をしかけてきた。
キールはなんとか棒でガードしていった。
が、受けきるのもやっとだった。
キールは背を向けて走り出した。
墨島が追ってくれば振り向きざまに攻撃ができるかもしれないと思った。
だが、その選択が間違いだった。
「双牙!!」
キールの背中を福海の双刃がかすめた。
なんとかよけきったものの、
双刃は遠心力でキールの周りを回転し、
双刃と福海の左腕をつなげるチェーンに捕らえられてしまった。
「よし、今だ!!
墨島!!」
墨島はナイフを投げつけた。
キールはなんとか体を振り、ナイフを避けきった。
墨島は近づいてきた。
ナイフを振り上げ、キールに突き刺そうとしていた。
キールは今頃、仲間の誰かがここに向かっているだろうとわかっていた。
いつもそうだった。
ガルムベルド団はピンチになってもギリギリで助かる。
「キール!!」
群集を掻き分けて、モーンストンバイクで登場したのはローナだった。
墨島は轢かれそうになり、キールから遠ざかった。
ローナは双刃の鎖を外してやると、キールにバイクの後ろに乗るように言った。
「ちくしょーう!!
逃げるなー!!」
福海が叫んでいた。
モーンストンバイクは港へ向かっていた。
港に着くまでに、何台かパトカーとすれ違った。
「ローナ、ありがとな」
「ピンチになったら任せるですよー。」
バイクは港に到着し、キールは自分のバイクに乗った。
「よし、船に戻るか」
「はいな。」
二人はバイクのエンジンを吹かせ、
空中に数センチ浮遊した。
このモーンストンバイクにはタイヤがない。
どう動いているかというと、
本来タイヤがあるところから高圧の空気が排出され、
それを浮力にして浮いている。
それだけではなく、エンジンにはニトログリセリンを
改造して安全性を高めた物を使っているので、
最高速度時速300キロまで出せる。
しかし、そんな速度出すと、乗り手が吹っ飛んでしまうので
だいたい100キロぐらいが丁度いい。
管制室のドアが開いた。
「たっだいまーですよー!!」
「おかえり」
元気良く帰ってきたローナを迎えたのは機械工のフォルクス。
フォルクスは今、新たに仲間として加わるであろうロボットを作っていた。
フォルクスの顔は、油や焦げなどで汚れていた。
ネリルがタオルを持ってきてくれた。
「おっ、サンキュー」
ネリルはニッコリ微笑んだ。
「かーっ、
やっぱり可愛いな。」
フォルクスが言うと、ネリルは顔を赤らめた。
メリルがフォルクスの背後から接近していた。
「うちの妹に手を出さないでください」
「ぐはっ!!」
フォルクスを蹴っ飛ばすメリル。
普段はこんな感じで生活していた。
「フォルクス」
アレキスが呼んだ。
「ロボット作るのもいいけどな、
たまには街にでも出てこいよ」
「おっけぇ〜♪」
フォルクスは高い声を上げた。
「あ、しまった、おっけぇ」
もう一度言い直し、低い声で言った。
泥棒稼業をしていて、ガルムベルド団にスカウトされたローリィが
フォルクスに近づいてきた。
「あんた本当に男になりたいの?」
「べらんめぇ、俺は元から男でぇ」
「だったらこのメロン二つはなんなの?」
「はぅっ!!さ、触るな!!
大胸筋だ!!大胸筋!!」
フォルクスは女。
しかしなぜだか男装をしていて、男の真似をしている。
「俺は男だよー!!」
フォルクスが暴れだした。
アレキスの元に、休暇の後発の連中が集まってきた。
炎のユ・ティオール使いでもあるテコンドー使い、ルーシー・ジェリーチ・エーテル、
ガンマン風のファッションでしかも銃使いであるマイク、
美貌とは裏腹にナイフでの攻撃を好む短刀使いミッドナイト、
ガルムベルド船の操縦士長、指揮官を務めるヒゲのおっさんハンデラル、
ガルムベルド団一番の力持ち、チャンク。
あとは盗賊のローリィと機械工のフォルクス。
「それじゃ行って来い。
あ、それと、あまりでかい騒ぎには首を突っ込まないように」
キールが言った。
デルトがその横で「おまえにいわれたかねぇだろ」とか言ってたような。
学校の屋上。
ショーンは鴻上輝とランチを楽しんでいた。
「おまえ、沙耶華と何かあったんだろ」
「っぶぁー!!」
ショーンは飲んでいた水を吹いた。
「っね、ねぇーよ!!馬鹿!!」
鴻上輝は「あー、あったんだ。」と心の中で言っていた。
屋上から外を見ると、『関東地区総合スポーツ大会』のアドバルーンが見える。
なんであんなことにアドバルーンを使うんだろう。
「スポーツ大会、おまえ出るのか?」
鴻上がショーンに聞いた。
「多分、出ない。
あまり興味ないし。」
「そうか。
知ってるか?
帝真ってところ、あそこの連中も出るらしい。」
帝真。
ショーンはその学校の名前ぐらいは聞いたことはある。
「あー、あのやたらと学校名長い・・・」
「そうそう。あそこはいいよな、
幼稚園から入っとけば、エスカレーター式だからよ、
入試がないんだよ。」
「帝真学公課総学科なんて変な名前にも由来して、
学部学科が多すぎるし・・・」
鴻上は一枚の写真を取り出した。
女子が映っている。
「この人、綺麗だろ。
そこの学校ではスポーツ万能って言われてて、
どんなスポーツでもこなしちまうらしい。」
「で?名前は?」
「鷹沢留奈。
俺の友達がさ、この写真仕入れてきたんだよ。」
「ふぅーん」
ショーンはそっけなく答えて昼食を食べるのを続けた。
「行きたいと思わないのかスポーツ大会!!」
「・・・あまり」
「・・・はぁ」
鴻上はへこたれた。
学校の授業も終わり、下校の時間になったとき、
ショーンは沙耶華に会った。
「あの、昨日は、ごめん」
「なんで謝るの?」
「俺、なんかしなかった?」
沙耶華はショーンの顔を凝視した。
「ハハハハハハ!!」
沙耶華は笑い出した。
「ショーン、あんた気絶しちゃったから、
私の部屋につれてきただけ。
覚えてない?」
ショーンはなんとなく思い出してきた。
フィスナの部屋の窓ガラスが割れて、
ノーゼンと戦い、
それからいろいろあって、アレックスが運ばれたこと。
そして車にアレックスを乗せた時、
そこからの記憶がない。
「あー、思い出した」
ホテルでミハエルから電話をもらった時は、
アレックスを車に乗せた時のことは覚えていた。
何故だろうか。
「さ、帰ろ」
沙耶華が言った。
「ああ、帰るか。」
二人はグリノホテルに帰っていった。
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