第18話「接触」
「任務を通達する」
グリノとパルティ・ド・ティオレイドを結ぶ情報係に任務室に呼び出されたときは何かと思った。
ショーン、ミハエル、フィスナの三人、つまり新入りチームが呼び出されていた。
「俺は情報係のレーオン・トリュフ。
知っての通り、今まで任務をおまえらに伝えてた奴の上司が俺だ。
だが、今回は直接おまえたちに任務を伝える。」
「なんで今頃」
「俺たち、ティオレイドは相手を見てから姿を現す。
まぁお堅い信頼関係だ。」
「あ、そう。」
レーオンが大型モニターの電源を入れた。
「テロリスト集団、福海会の壊滅」
女性のアナウンサーが言った。
「私はジェイリー・イェン。」
その子供っぽい女性の声が続けて言った。
ミハエルが眉をピクリと動かした。
「ジェイリー・イェン?
はっ、偽名か?
そんな小説漫画ハイブリッド女性作家の名前を使うなんてよ」
ジェイリー・イェン、彼女は、
世界中で作家として知られている存在。
小説も書いたし、漫画もそれなりに売れた。
映画の脚本の協力をも乞われたこともある。
ミハエルは、そんな有名人がこの組織にいるはずがない、というのと、
こんな子供っぽい声の女性が本当に子供で作家なんて出来るはずが無い、
と、そう思っていた。
「あ、本当なのに。」
画面に子供の顔が映し出された。
まだ女性というより、女の子で、
顔を見ただけでもまだ成長中の子供だとわかった。
「世界中で有名な本を書いたのは本当だよ。」
アナウンスの声がどうも近くに聞こえる。
と思って、後ろを見たら
背後にカメラがあり、その先に小さな影があった。
「世界中で有名になった、
『トム歩き』や、『メガナイト』を書いたのは私だよ♪」
その影が近づいてきた。
それはまさしくさっきモニターに映っていた少女。
「ジェイリー・イェンだよ。
改めてよろしく。」
「お、よ、よろしく」
ミハエルは同じくらいの身長で同じくらいの年齢と思しき彼女が
握手の手を差し出したのに対して、弱弱しく手を出して応えた。
「俺はミハエル・アンダンテ。」
ショーンはレーオンに近づいた。
「おい、まさかあいつもユ・ティオール能力者なのか?」
と小声で
「そのとおりだ。」
同じくレーオンも小声で答えた。
「『トム歩き』は確か日本でも描かれていたような気がするんだが。
たまたま同じタイトルなのか?」
ショーンは今度はジェイリーに話しかけた。
「日本語版はアリスって漫画家が書いてる。
ほんと、売れっ子漫画家な私はいろんな人から
日本語版を作りたいとか、映画化しましょうとか、
そんな話がよく来るんだって♪」
自慢げに。
「あ、俺は、ショーン・ワートル。よろしく」
「はい、よろしく。でもあなた日本人でしょ?ハーフかなにか?」
「あ、ごめん、俺の名前は和藤翔雲。
ショーン・ワートルはここでの呼び名だ。」
「わかったわ。じゃあショーンって呼ぶ。」
ジェイリーは今度はフィスナの前に出た。
「あー・・・私はフィスナ・リフター。」
と思いもしなかった不意打ちを喰らったように、
なんとか対応した。
「よろしく
じゃあ早速任務の説明に入りたい。
適当に椅子に座って」
「椅子なんてどこにも・・・」
とショーンが言いかけたとき、
すぐ後ろに椅子があった。
ついさっきまで椅子もテーブルもなかったのに。
これがジェイリーの能力だろうか、と思った。
「さっきテロリストの壊滅って言ったでしょ?
これから三人には街に出てもらう。
つい最近、街での福海の目撃情報が出たから、
まだその付近にはいると思う。」
新入りチームは適当に頷いていた。
「で、それでなんだけど、
ティオレイドとワイズマンが対立していて、
福海会が第三勢力という状態になるわね。
それをなんとかこっちがわに持って来れないかしら」
ようするに二対一という戦法か、と頷く。
「それから、その福海会はつい最近、
他の団体と接触があったようだけど、その情報も欲しいわ。」
そのとき、レーオンが前に出た。
「情報なら任せな。
ハッキングでもなんでもしてやるぜ」
と。
「で?どうすんだ?」
とショーンが言った。
早くも任務に出たいようだ。
「早速探してきて。」
「はい?」
ルーシー、マイク、ミッドナイト、ハンデラル、ローリィ、フォルクス、
この6人が現在街に出ている。
途中でルーシーが、お腹が空いたと言ったので、レストランで食事をとることにした。
席に着き、全員が注文を終え、料理を待ってたとき、
マイクが「トイレにいってくる」と言って席を離れた。
周りは他の客でいっぱいだったが、トイレの中だけは、
混んでいなかった。
マイクは用を足して自分達の場所に戻ろうとしていた。
「はぁー、探して来いって言われてもなー」
何故か、マイクの耳がその少年の言葉だけを意識的に拾った。
「福海会、ここいらで暴れまわってる連中だって聞いたから、
きっと騒ぎがあれば現れるはずよ。」
マイクはその席を見た。
三人の男女が座っている。
料理を食べながら。
福海会?
それは、キールが戦ったという奴の・・・
「福海会には関わらないほうがいい」
マイクはその三人に言った。
「ん?あんた誰だ?」
ショーンが言った。
ショーンは飯を食うのに集中していたが、手を止めてマイクを見た。
「あんた、ガンマン?
めずらしいな、こんなところで。」
「大声を出すな。
福海会に関わるなと言ったのは、
福海会に関わっている危ない連中がいるからだ。」
自分たちのこと。
次に潰すのは福海会になるだろうと。
それから、福海会に関わるものも全て。
マイクは去っていった。
そして自分の席に着くと、すでに料理がおいてあった。
「おう、長かったな」
フォルクスが言う。
「そういう話はしないの」とルーシー。
そこのテーブル席から離れたところにショーン、ミハエル、フィスナが座っていたが、
彼らのことなど知らなかった。
が、今後接触があるとは気付いていなかった。
道路側の窓がに、ひびが入り、内側に割れた。
静寂を切り裂いて、客は皆驚いて叫び、外に出ていった。
「なんだ!?」
ショーンが立ち上がった。
同時に、違うテーブルのマイクも立ち上がった。
二人はお互いが普通の客ではないと悟った。
割れたガラスの窓から二又の刃物が飛んできて店の奥の壁に突き刺さった。
それには鎖がついていて、小刻みに揺れて、
大男が鎖に引っ張られて店内に入ってきた。
大男は二又の刃物を引き寄せ、腕につけた。
「ガッハッハハハハ!!
俺は福海!!
強盗に来たぜー」
福海は早速、レジに向かった。
店員は、ぶすっとした顔で福海を睨みつけた。
「なんだその目は!!
とっとと金を出せ!!」
その声と同時に、福海会の連中が、窓やドアから入ってきて残った客、
つまりショーンたちとマイクたちを取り囲み、
ナイフを持った男、墨島がレジの前に立った。
「金を」
レジの店員に言った。
店員はさらに福海を睨みつけた。
福海は店員を殴り飛ばした。
店員は口から血を出して、レジの前に戻ってきた。
「なんだてめぇ」
「金は出さない。出すのはそっちだ。
早く席に座れ。
親方が料理を作っている。」
店員が言った。
福海は店員の胸倉をつかみ上げ、金を出せとか脅しを入れているが、
店員は何にも返事をしないで、ただ福海を冷淡な目で見つめていた。
ショーンは相変わらず飯を食うのに忙しいみたいだった。
「ショーン、福海が来たよ!!」
とフィスナが促しても、
「ああ、わかってる。急いで食べるから」
と返事。
食うのをやめろっての。
マイクたちはというと、同じく落ち着いて食べていた。
最初に食べ終わったミッドナイトが「ごちそうさま」と静かに言って、立ち上がった。
そして優雅にレジに歩き出す。
ゆっくりゆっくりと歩を進ませ、福海たちに近づく。
福海の部下がミッドナイトに近づくと、
ミッドナイトは一瞬足を止めた。
が、すぐにもとの速度で歩き出した。
レジの前にて、財布から金を出して、店員に言う。
「おいしかったです、そう伝えてください。」
福海につかみ挙げられていても顔色ひとつ変えなかった店員は、
フッと笑顔をこぼした。
「ありがとうございます」
と手を出して金を受け取ろうとした。
が、それは福海の手が横取りした。
店員は福海が手を離した時、床に落ちた。
「おう、ねえちゃん、悪いな、この金をこいつに渡しても、
俺がこいつから頂いちまう、だから俺が今もらっても同じだよな」
「・・・」
ミッドナイトの行動を見ていたマイクたちは立ち上がった。
「おいおいおいおい、マナー違反じゃないか。」
フォルクスが福海にずかずかと寄っていった。
「ん〜?なんだてめぇ、女か」
「女じゃねぇえー!!男だ!!」
「いえ、女であってます。」
福海とフォルクスの間に入ってきたのはローリィ。
「食い終わったー!!よぉーし!!行くぜー!!」
と叫び、団体席の間の仕切りを飛び越えて、レジにつっこむショーン。
すぐに福海会の雑魚がショーンの前に出るが、
「トネールプリュールル!!」
感電して倒れていった。
マイクがショーンを見た。
「あいつ!!能力者か!?」
「私と同じ?」
マイクの言葉に反応してルーシーもショーンを見る。
ショーンが福海の前に出る。
「あんた、福海さんだろ!?
福海会の。
ワイズマンって組織知らねぇか!?」
フィスナが「あのバカ、ストレートすぎる」と呟いて立ち上がった。
が、目の前におっさんが出てきてフィスナを止めた。
福海会の制服じゃないことから、敵ではないと言えるが、
誰だ?
「危険だ、座っていたまえ。」
おっさんがフィスナに言った。
「ハンデラル、いいわ。」
ローリィがおっさん、つまりハンデラルに言った。
「その人もきっと能力者よ」
ハンデラルはそれでもフィスナを止めた。
「まだ若いのに、命を捨ててもいいのか」
フィスナは、ティオレイドの個人証明書を出して見せた。
「なにぃ!?」
ハンデラルは驚いて言った。
「こいつら、ティオレイドだぞ!!」
ハンデラルが叫ぶと、ショーン、フィスナ、ミハエル以外の人物が全員驚いた。
ガルムベルド団は撤収しようとした。
「金だ!!釣りはいらねぇ!!」
上半身を起こして床に倒れている店員に投げつけ、外に出ていった。
ハンデラルはまだそこにいたミッドナイトに声をかけて外に出ていった。
「大丈夫?」
ミッドナイトは店員に手を差し伸べた。
店員はその手につかまって立ち上がった。
福海会の連中はフィスナを見つめていた。
福海もフィスナの方を見る。
「ティオレイド?
あの能力者ばかりを集めた組織のことか?」
福海は言った。
ミッドナイトが店員を連れて外に逃げ出そうとした。
「ミッドナイト」
墨島が止めた。
なぜ名前を知ってるの?とでも言おうとしたのか、ミッドナイトは墨島の方に振り返った。
「久しぶりね」
意外にも知人だった。
ミッドナイトはナイフを取り出した。
「店員さん、外に。」
「わかりました」
店員はドアから外に出て去っていった。
きっと警察にでも向かったのだろう。
ひとけが無くなったレストラン。
残っているのはショーン、フィスナ、ミハエル、ミッドナイト、福海、墨島、福海会の雑魚。
緊迫した空気が流れ込んできた。
割れた窓からは涼しい風が流れてきた。
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