第19話「追跡眼@」 ショーン達三人は、福海と、 ミッドナイトは、墨島と対立。 フィスナの心境は、この場はなんとか丸く治めて逃げておきたいといったところ。 しかし、ショーンとミハエルがストレートに福海に接触をした。 もうその時点でフィスナの目測は断たれたと言っていい。 ミッドナイトと墨島。 彼等に共通する物、それは主要武器がナイフであるということ、 それ以外からは何も読み取ることはできない。 「あんた達、ティオレイド。 目的は?」 ミッドナイトが墨島から目線を逸らさずに言った。 「福海会を第二勢力にぶつけること。」 フィスナは言った。 ここではあえてワイズマンの名は出さなかった。 測らずしてミッドナイトに、第二勢力とは自分の所属する、 ガルムベルド団ではないかという心配をあたえた。 その一通りの会話を聞いていた福海。 「俺たちを他の勢力にぶつける? ハッ、笑わせろー。 一体なんの話だ? テロリストは俺たち一つだろ」 知らないらしい。 ここで勢力関係が拗れるのを防ぐために、 というよりフィスナ自身が理解するために整理しはじめる。 ティオレイドとワイズマンを中心に。 外側に福海会と他の勢力、知っていない勢力、ガルムベルド団。 こんな簡単に勢力図ができるとは思わない。 だが、ここは現場だ、勢力は関係ない。 「ショーン、ミハエル、帰るわよ」 「えっ!?」 構えていた力が一気に抜けた。 フィスナは福海会から一度、遠ざかろうとした。 「まて、逃がしやしないぜ」 福海が言った。 「そう。じゃあついてくる?」 「誘い方は上手じゃないな」 「福海会はティオレイドの敵か味方かはっきりしてほしいだけなんだから。」 フィスナは福海に指を向ける。 「ぐふふふふ、そうかい、そうかい。 ティオレイドが福海会を利用して、他をぶっ潰そうってんだな。 そんでもってティオレイドが横から来て ギョフのリー」 「漁夫の利」 「わかってるよ墨島。 漁夫の利を得ようって腹だな。 ならば答えは決まった。」 福海は左腕、双刃をフィスナに向けて 「敵だね!!」 放った。 双刃がフィスナ目掛けて飛んだ。 フィスナの腹部に刺さり、フィスナは倒れた。 が、出血はしていない。 「宣戦布告か。」 ショーンが呟いた。 そしてミハエルは腕に水の剣を構築する。 瞬時にミハエルは福海の至近距離までに迫った。 その間、フィスナは、 倒れたフィスナ、バイオレンスゴーストを自分の体に戻した。 「双刃!!」 福海は双刃を左腕に戻そうとしたが、遅かった。 ミハエルの剣に頭から斬られてしまった。 が、福海は生きていた。 「ぐへへへ、双刃にはこんな使い方もあるんだぜ」 双刃の鎖でミハエルの剣をガードしていた。 「水の剣にはこんな使い方もあるんだぜ」 ミハエルは剣を水に戻した。 すると、剣は錆びて崩れ落ちるように福海に流水した。 「ぶわぁっ!!」 福海は一瞬怯んで目を擦った。 それと同時に双刃を元に戻していた。 一方、ミッドナイトと墨島はというと。 レストランの外の大通りに出ていた。 福海会の雑魚が墨島の命令により、 ミッドナイトに飛びかかっていったが、 その華麗なナイフ捌きの前にあっけなく全滅した。 残ったのは墨島のみ。 「墨島。何年ぶりかな? 同じ場所で訓練を受けて、同じ武器に魅かれた・・・ でもナイフ捌きなら私の方が上。」 墨島はいつものスタイル。 黒い服の内側にナイフを大量に隠し持って、テンガロンハットを常備。 「数を出せばいい問題じゃない」 ミッドナイトの言葉に墨島はピクリと微妙に反応した。 ナイフを大量に持っていることがバレていたのだ。 「ここで、この場所であんたを殺ってもいいけど。 ひとつだけ聞きたいわ。 ガルムベルド団に入らない?」 ミッドナイトはナイフを腕につけていたホルスターに仕舞う動作をした。 あらかじめ敵意がないことを表明しているのだ。 「我等福海会と同じく、 テロリストと同じような存在・・・ 義賊気取りが・・・」 「なんだ、知ってたの。」 ミッドナイトが言い終わる前に、墨島はミッドナイトに飛びかかっていた。 ミッドナイトはナイフを仕舞ってしまった。 瞬時に反撃ができない。 が、後退しようともしなかった。 「バーン」 ホルスターがある方の腕を墨島に向け、反対の手でホルスターを叩くと、 ミッドナイトのナイフが回転しながら墨島に飛んだ。 「うぉっ!?」 墨島はなんとか避けきった。 しかしナイフは、墨島の頬にかすり傷を残して飛んでいった。 墨島は体制を立て直すと、ミッドナイトの真正面から攻め入った。 「これでおまえの武器はなくなったな。」 「昔から・・・」 「ん?なんだ?」 墨島がミッドナイトに止めを刺そうとしているところ、 ミッドナイトは焦りを感じていない。 むしろ余裕ぶっていた。 「昔から相手から武器を奪ったら勝ったと油断する癖。 治さなきゃ死活問題よ。」 「っ!!」 墨島は吐血した。 なぜか。 背後からナイフが咽を貫いていた。 「がふっ・・・」 墨島は手を伸ばし、ミッドナイトにナイフを刺そうとしたが、 力尽きてそこで倒れた。 「今がその死活問題だったってわけだ。」 一体何が起こったのか、墨島にはわからなかった。 ミッドナイトは墨島の首から、ナイフを抜き取った。 それは明らかにミッドナイトの所有するナイフ。 それが何故・・・ それはさっきどこかに飛んでいってしまったはずだ。 墨島は考える。 こんなこと、ナイフがブーメランじゃなきゃありえない・・・と。 「まさか・・・」 墨島は血を吐きながら喋る。 「さっきの・・・ナイフの回転は・・・」 「そう。ブーメランの原理ね。 飛ばしても戻ってくる。」 「・・・まいった・・・やられた・・・完敗だ・・・よ・・・」 墨島は静かに息を引き取った。 ミッドナイトはさてと、と一呼吸したあと、港の方角に歩いていった。 福海はレストランの外がやけに騒がしいことに気付いた。 きっと部下どもがミッドナイトという女に倒されたのだろうと、そう思っていた。 だが、墨島は生きている、そう思っていた。 墨島とミッドナイトが戦っていて、ギャラリーが大勢集まっている騒ぎだ、と思っていた。 「ふはは、外も外で戦っているんだ、こっちも楽しもうぜ」 福海は飛びながら双刃を振り下ろした。 ショーンとフィスナとミハエルはそれを避けた。 と、背後の机が粉々に粉砕された。 「げっ!?」 「嘘!?」 ショーンたちは驚きの声を漏らした。 「なんて馬鹿力だ!!」 福海はニヤリと笑い、双刃をショーンに向けた。 「双牙!!」 双牙、鎖で繋がれた双刃を飛ばす福海の技。 飛ばされた双刃の速度は約時速180キロ。 ショーンはそれを避けきるのは難しいと考え、 メニューが書かれたボードを盾にした。 が、その考えが甘かった。 双刃はボードを貫通してショーンの胸部に当たった。 「ぐふぁっ!!」 ショーンは後ろに倒れた。 「よーし!! 釣りだー!!」 福海はショーンをボードごと引き上げる。 そして大きな右手で、双刃から外したショーンの体を掴み、 「たーまやーッ!!」 天井に投げ飛ばした。 ショーンは天井にぶつかった衝撃で気絶した。 そのまま落下。 床に落ちて動かなくなった。 「まず一人倒した!!」 ミハエルとフィスナは、倒れたショーンを見る。 怪我は命に別状はないものの、ほっておくと出血多量で死んでしまう可能性がある。 メニューボードが双牙の衝撃を半減させたらしく、 ショーンの胸部の傷は浅かった。 「次は二人、おまえらどうしよう!!」 福海は双刃を残りの二人に向ける。 「ミハエル、逃げるわよ」 「おーけー。」 ミハエルとフィスナは走り出した。 「あ、こら!!」 福海はミハエルとフィスナを追おうとしたが、すぐにやめた。 「ふふふ、こういうときのためにこの目がある。」 眼帯をしている方の目を撫でた。 そして眼帯を外す。 「追跡眼!!」 レストランの割れた窓から飛び出すミハエルとフィスナの姿をその目で見た。 「これでもうどこに逃げても安心だぜ!!」 福海は二人が逃げた後、ゆっくりとレストランを出た。 丁寧にドアを開けて。 そしてそこで、斬撃死体の多くを目の当たりにした。 その中には墨島も倒れていた。 福海は唖然として立ち尽くした。 逃げた二人のことを忘れて。 もどる