第22話「ワイズマンとガルムベルド団」
飛行場に到着。
「よう、待たせたな」
辺りは日が昇り始めて、東の空に薄く光が照っていた。
東の空・・・
和藤は思い出す。
自分が一度、家出をしたときに世話になった魔術師・・・
東雲空海。
やめよう、思い出すのは。
と、周りを見る。
旅客機に荷物を詰め終えて、
そしてその場に待っていた者たち・・・
同じチームの、フィスナ・リフター、ミハエル・アンダンテ。
チーム名は決まっていた。
チームメタルタウン。
そして、チームフレアの
エレノア・セーゴ、カーマ(オリヴィア・ラファエロ)。
本来ならここにもう一人男がいたはずだった。
が、今はもういない。
戻ってこない。
裏切り者が出たチームフリーズの、
山南沙耶華、永見悟。
今、一番辛いのは彼等だろう・・・
そして無所属のジェイリー・イェン。
作家、漫画家、脚本家、その他もろもろ。
9歳にしてそこまでできるなんて、
神は一体何を考えてこの子にそんな才能を与えたのだろう。
一体何を企んでいる。
ヘッドチームから、レーオン・トリュフ。
肝心のヘッドがいない。
名前はグリノ。
ショーンにはそれぐらいの情報しかわかっていなかった。
一番辛いのがチームフリーズならば二番目に辛いのはきっとショーンであろう。
「ショーン・・・?その人、誰?」
「知らない人」
「お兄ちゃん!!」
こんなところで包丁出されたりでもしたらたまったもんじゃない。
管理職員に発砲許可でも降りたりしたら大変だ。
しょうがない、ここは従っておくか、とショーン。
「双子の妹だ。
名前は・・・」
「かずふじはるみ♪
よろしく♪」
「だそうだ。
よろしくしてやってくれ。」
全員が唖然となる。
「か、可愛いっすね、晴海さん」
と悟が言った。
「えへ♪」
「悟、あとで体育館裏来い。ないけど。」
ただ言ってみただけだ、と付け加えた。
いくら妹といえども、なんかいい気はしない。
父親が娘を嫁にやるのを嫌がるような感情・・・ではないが、
ショーンは、晴海に寄ってくる火の粉のごとく虫けらどもを払わなければならない
とまでは思ってない。
正直、ショーンには自覚がないが思っているのかもしれない。
「おいおいおい、ちょっと、待ってくれよ、
まさかショーン、機密を漏らしたわけじゃないよな?
そんな子にまで戦場を見せるわけにはいかない」
確かに。
レーオンの言うとおり。
ちらりと、隣の飛行機を見ると、シェリー・ミルトス、ノーウェン・バランクスが
乗り込んでいくのが見えた。
彼等には別に用はないか、とショーンは晴海を見た。
「これから行くところがどんなところかわかってないだろうけど。
おまえはどっかに隠れてろ、以上」
「えー、何それ、それじゃあついてきた意味ないじゃん!!
お兄ちゃんを守るために、もとい守ってもらうために来たのに!!」
「さっきは・・・時間的には昨日、俺を殺そうとした女は誰だ?」
「引き止めただけじゃん!!」
「あのなー、あれのどこが・・・」
次第に声のボリュームが上がってきた二人の間に手を出したのは、悟。
「兄妹喧嘩はいいのですが・・・うらやましいです」
「キモい」
「すいません。
これからは、本当に危ない場所に行くのです。
それを二人はわかってらっしゃるのですか?」
悟の言い方は、皮肉を言ってるようで頭にくる。
口調がそれだ。
でも言ってることは上目遣い。
だからさらにむかつく。
「わかってるよ!!」
「わかってるわ!!」
二人返事のあと、こっちの飛行機も乗り込みを開始した。
「それならいいんです。」
「真面目くんが。」
「そうですかね?」
「当機はただいま、富士山上空を運行しています。
運行しています。うんこーしています。うん」
「わかったからもういいよ。」
兄妹漫才なんかをやってる場合か、と他の乗員はそれを見て見ぬ振り。
窓から見える景色は太陽の光と海、そして富士山。
雲。現在時刻は、6時から7時といったところだろう。
「で、俺たちはこれからどこへ?」
ショーンがレーオンに尋ねた。
「オーストラリア。
そこにワイズマンの本拠地がある。
噂では、だがな。」
頼りにならないな、と頷いてから晴海を見るショーン。
「どうしたの?」
「いや、別に」
すぐに視線を窓の外に移す。
こんなところで、富士山の真上の空で、
シスコン呼ばわりされてからかわれながらオーストラリア上陸、
そんなの絶対に嫌である。
「待て、パスポートは!?
俺、持ってきてないぞ!!」
ショーンがレーオンに言った。
「大丈夫だ。我々、パルティ・ド・ティオレイドは、
世界的にも有名な反テロ組織、
裏で活躍しているとは言っても、
無断入国も無断出国も許されている。」
ショーンはそれを聞いて安心した。
「なぁーんだ、じゃあ全部顔パス・・・」
言おうとしかけたとき。
突然、ドスンと重く、鈍い音がして、
同時に飛行機が傾き、ショーンは椅子に押し付けられた。
「なんだ!?」
全員があわて始める。
「っひぃぃぃぃぃぃ!!」
中でも晴海の怯え様はパニック映画の主演女優賞だとかを、
貰えそうなくらい、酷かった。
「お、堕ちる堕ちる!!」
「落ち着け!!晴海」
ショーンが晴海の肩に手を回す。
飛行機の操縦者は、慌てていなかった。
否、腹の中では慌てているのを抑えているのであろう、
そんな姿を見せては乗客を不安に陥れてしまう。
「状況の確認!!」
レーオンが操縦室に飛び込んで、言った。
「わかりません!!
一瞬ぐらついただけで・・・計器も正常です・・・」
飛行機の中が暗くなった。
いきなり夜になったとか、蛍光灯が切れたとかではなく。
「な・・・なんだあれは!!」
大きな大きな画鋲が、空を、飛行機の上空を、飛行機に陰を落としながら
ゴウンゴウンと音を響かせながら飛んでいた。
ミハエルがそれを見て、驚きの表情で操縦室に入っていった。
「ありゃ・・・ガルムベルド船じゃねぇか!!」
レーオンがミハエルに気付いて、そして返答しようとする。
振り向かず、ただそれを見ていた。
「ミハエル、おまえはガルムベルド団についてどれぐらい知ってる?」
「知らないよ。まったくね。」
「なら教えてやる。」
と、レーオンは振り向いて、ミハエルの方を見た。
「ディロン・ガルムベルド。
彼が元団長であり、そしてワイズマンの一時期の味方だった男。
ガルムベルド団は、元々賢人を集めて世界各地で紛争阻止、犯罪阻止、
その他諸々を主活動とした団体。
ガルムベルド船、あれは最初のころは、二隻造船された。
ガルムベルド団はそのときは大人数だったからな。
しかしだ。現団長、ローズアルバルトがワイズマンにいたとき。
ガルムベルド船の一隻がまるまるどこかへ消えちまった。
それとほぼ同時期に・・・ディロンは何者かによって殺害された。
それまではガルムベルド団もワイズマンも味方同士みたいなもんだった。
しかしディロンが殺されてから歯車が狂い始めた。
両団体による抗争が勃発した。
ワイズマン団長のローズアルバルトは、ディロン殺害の真相をつかんだのか、否か、
団長の座を他へ渡し、そして・・・これが世界の七不思議、そのひとつ・・・」
レーオンが間をおく。
「もったいぶらないでください。
だいたいオチは読めてるんです。」
「何故か、ガルムベルド団の団長の座についた。」
「まぁ大体、この時代、彼が団長ですからそうならないとおかしいでしょうね。
なったのもおかしいけど。」
「だろ?
ディロンとローズアルバルトは最初、仲良しこよししてた。
ディロンが殺されてローズアルバルトにもいらん疑いがかかる。
そこでローズアルバルトはその混乱に乗じて、ガルムベルド団に移った。
これなら納得がいく。
疑われてるなら疑ってる奴等の方へ移るんだからよ。
でも、だ。
誰も疑っちゃいなかったんだよ・・・」
そうこう話しているうちに、ガルムベルド船は飛行機を通り過ぎ、
そして去っていってしまった。
「・・・行っちゃいましたよ?」
レーオンは船を見る。
「構わないさ。」
と、飛行機の計器を見る。
「待て・・・まさか奴等、オーストラリアに向かってるんじゃねぇだろうな?」
レーオンが言ったとき、ショーンが操縦室に入ってきた。
「観光だろ観光。
カンガルーとボクシングでもすんのか、コアラとテコンドーでもするのかよ。」
「なんでコアラがテコンドーなんだよ」
ガルムベルド船は止まった。
空中で静止した。
そして飛行機の目先に降下、巨大なハッチを開いた。
「おいおい・・・招かれちゃってるぜ・・・」
「嘘だろおい・・・」
操縦席の無線機が、雑音を発する。
『ザァーッ・・・・
民間航空機か?
そんなものに乗ってても我々の目は、騙せんよ、
パルティ・ド・ティオレイド諸君。』
操縦室にいた全員が驚いた。
全て、バレていた。
「どういうことだ?
パルティ・ド・ティオレイド?
なんだそれは」
レーオンが操縦席から無線機をひったくって、言った。
『とぼけても無駄だよ。
レーオン・トリュフ。』
名前までバレていた。
『今、操縦室にいるのは、君と二人の少年だね。
あとの操縦者二人はパルティ・ド・ティオレイドかどうか知らないけどな。』
バレてるだけではない。
彼は
『んー・・・その少年・・・』
この操縦室を
『その顔は、データベースにないな』
まるまる覗いている!!
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