第31話「紅い水花、蒼い樹木、黄色い荒土」 陰の鎖の隊員達が乗ってきたヘリは、ティオレイドのそれと距離を取って着陸していた。 陽動というより、囮にもなるよう、前衛としてティオレイドよりも、 発射台基地の近くにいた。 シェイド・チェーンこと、ジョン・スポールは、ヘリの中でノートパソコンを開いていた。 レーオンと通信をするためだった。 回線が繋がるとすぐに、ジョンは備え付けのヘッドセットを装着した。 「聞こえるか」 言うと、すぐに返事が返ってくる。 「ああ、聞こえる。」 「そちらの首尾を聞きたい。 先発隊の出発はもう出たのか?」 「ああ。彼らなら行ったさ。」 「そうか。」 ジョンは、かつて、ストライプガールと呼ばれていたシェリーと、 パープルトマトと呼ばれていたルービーズを見た。 「君達の出番だ。」 言われて、シェリーとルービーズは、すぐに立ち上がった。 「行ってくるぜ。久々に花火を上げられる。」 「私まで巻き込まないでね。」 二人はヘリの扉を開けて出て行った。 丁度その時、レーオンから通信が入った。 「どこの兵か知らないが、恐らく雇われたのだろう・・・ ライフル兵には気をつけろ。」 「何?」 ジョンは、シェリーとルービーズに伝えようと思ったが、もう行ってしまった後だし、 通信機など用意していなかった。 「どうした?」 「いや、シェリーとルービーズが行った後だ。 もう手遅れだ。」 「大丈夫だろうよ、その組み合わせなら。」 ジョンも、そう思っていた。 陰の鎖での古株であるシェリーとルービーズは今まで色々な戦いにその身を晒して来た。 そんな二人の強さを知っているからこそ、信頼ができたとおもうのだ。 シェリーは、ウェストバッグからビスケットを取り出し、食べながら歩いていた。 「ちょっとちょっと、シェリー、 そんな暢気に構えてて大丈夫なのかよ」 ルービーズが言った。 「平気も平気、なんたって私は世界最強のユ・ティオール使いよ?」 「それは初めて聞いたぞ。だがその油断が命取りに・・・」 二人は、いったん、呼吸を躊躇った。 誰かがいることに気が付いたから。 夜明け前でまだ辺りが暗い。 黒塗りにされたような茂みの中から、殺気を感じる。 しかも、全方位から。 「囲まれた」 「言わんこっちゃない・・・」 ルービーズは、パープルボムを出して手に取った。 その爆弾は、いくら使っても減ることを知らず、無限に出てくる爆弾。 ルービーズも、それを一体どこから出しているのか分かっていなかった。 「・・・3・・・4・・・5・・・五人ね。」 シェリーがその五人にも聞こえるように言った。 ルービーズの背後に、突然現れた兵士。 ルービーズは気付いていなかった。 「死ね・・・」 小声で言って、ナイフで首を狙ってきた。 「クリムゾンサンセット!!」 シェリーが、リストバンドの力を使うと、周りの景色や、動きがゆっくりになった。 「おまえが死ね!!」 シェリーは、そのナイフ兵にミドルキックを喰らわした。 ナイフ兵は、ゆっくりと体を曲げて、空中に投げ出されていく。 その瞬間に、シェリーは周りを見回した。 「ふーん・・・」 茂みの中から飛び出して、今にも走り出そうと、いや、 その走っている姿がスローモーションで、兵士が四人、出てきていた。 「時間切れだ。」 シェリーが言うと同時に、周囲の動きが元に戻る。 兵士が周りから襲ってきた。 「シェリー、伏せて!!」 ルービーズが言って、パープルボムを周囲の兵に投げつけた。 シェリーが、ルービーズの膝元にしゃがみこんだ。 轟音がなって、二人の周囲が爆発した。 それは爆発、ではなかった。 炸裂― 「ビスケット禁止」 「あぅー」 ルービーズがシェリーのウェストバッグから全てのビスケットを取り出して、自分の持ち物に仕舞った。 「帰るまで没収」 「・・・」 二人は、再び発射台基地に向けて歩き出した。 同時刻、海岸側から別のヘリが到着していた。 台地の上層部に着陸したそのヘリから出てきたのは、 北橋恭司と石原三姉妹だった。 「サロ・・・俺がここで、奴を倒せば・・・ 未来は確定されるんだな。」 老婆がヘリから顔を出した。 「わしの予言に、失敗はない。」 「そうか。信じるぜ。」 恭司は、ヘリから離れていく。 それについていくように石原三姉妹も歩き出す。 「恭司さん、あんたの力は信頼できるわ。 それでも、元・仲間の奴等を見て裏切ったりしないか、心配だわ。」 勇子が言った。 吉子も、麻子も、その意見には同意だった。 恭司は元々、ティオレイドにいた。 三姉妹は、そのことを気にしていた。 「もし、俺が裏切ったりするようなら、躊躇無く殺せ。 しかし、俺もおまえらが足を引くようなら、躊躇無く・・・殺す!!」 恭司が威勢を張って言った。 「ひぅ・・・怖いよー」 吉子が泣き出した。 「おまえ長女だろ。そんなんで頼りになるか。」 恭司が的確なツッコミを入れた。 「・・・」 麻子は、今日も静かだった。 四人は、発射台基地を目指して歩き出した。 「・・・っ!?」 麻子が何かに反応した。 「気付いたか・・・流石だな。 おまえが一番長女らしいぜ。」 恭司が言って、麻子と同時に周囲を警戒する。 「えっ?ど、どうしたの?麻子ちゃん」 吉子が言った。 「姉さん・・・」 麻子が小声で言った。 「犬がくる確率・・・100%」 「い、犬!?」 吉子は、大の犬嫌いだった。 「勇子ちゃーん」 「姉ちゃん、泣いてもどうにもならないから。」 そのとき。 「わんっ」 犬が茂みの中から現れた。 四人に向かって走ってくる。 「犬ゥーッ!!」 「あ、ちょっ・・・」 吉子は走って何処かに去っていってしまった。 犬は、それを追いかけて消えた。 「おい、戦力が欠けたようだが・・・」 恭司が怒り気味に言った。 「気にしないで。まだ私達がいるわ。」 勇子は気丈に振舞った。 吉子のマネをして。 そのとき、爆音がして、煙を巻きながら何かが近づいてきた。 それは、三人の隙間を通過して、背後の崖にぶつかって爆発した。 「なっ!?」 「これは・・・」 「・・・」 三人は驚いていた。 呆気に取られていると、突如目の前に兵士が現れたことにすら気付かなかった。 紫色のベレー帽、紫色を基にした迷彩服、紫色の靴・・・ そして、その三人の兵士は、バズーカを持っていた。 「・・・」 兵士三人は無言で、恭司達を睨んだ。 「我等が貴様等を殺してやる。光栄に思うんだな。」 「ここでは名乗らせてやる。」 「おまえらの名前を我等の心に刻んでおいてやる。」 兵士は言った。 「死にたいのか?おまえら・・・」 恭司が言ったと同時に、地面が凍っていった。 バズーカ兵の三人は、驚きもせず、地面を撃った。 爆発すると共に、その窪みから先は凍らなくなった。 「よかろう。貴様等の命、軽微な物と見た。」 「それほど死にたければ・・・」 「引導を渡してやろう!!」 バズーカ兵三人は、縦一列のフォーメーションを組んで、恭司達に突進してきた。 「恭司くん、アイスドリルは!?」 「準備が遅れた・・・おまえの姉の所為だ。」 「なんて男なの・・・こんな奴は彼氏にしたくないわ。」 「同感だ!!」 言って、恭司と勇子が兵士達に向かっていった。 「空間ナイフ!!」 空中に数本のツララが出現、即座に兵士達の頭上に落下していった。 「おうどッ!!」 一番前の兵士が叫ぶと、一番後ろの兵士がバズーカを上に向けて発射した。 その爆風でツララを相殺した。 「エアーアタック!!」 勇子は、前方の空気を連鎖、破裂させた。 が、兵士達はそれを横っ飛びして回避した。 「うそっ!?」 驚いているときに、麻子が小声で言った。 「・・・姉さんが戻ってくる確立・・・10%・・・」 一番前の兵士は、勇子にバズーカを向けた。 発射されたと同時、勇子はエアーアタックを出した。 バズーカの弾丸は、発射口を出た途端に爆発した。 「うおっ!?」 一番前の兵士は、引き下がった。 それによって、フォーメーションが崩れた。 兵士達は一旦静止した。 「貴様等・・・貴様等には我等も名乗ろう・・・」 「我等が貴様等に敗れても・・・誇りを抱いて死ぬる。」 「我等が夢は・・・戦いの中に生を終えること。」 兵士三人は、横に並びなおした。 「我の名は、紅蓮」 「我の名は、蒼木」 「我の名は、黄土」 兵士は名乗りを上げた。 「グレン、ソウモク、オウド・・・ 覚えておくぜ」 恭司が言った。 「俺の名前は北橋恭司だ。 別に覚えなくてもいいぜ、おまえらは、すぐに死ぬんだからな。」 「えっと、私は、石原勇子・・・」 「石原麻子」 恭司達も名乗った。 「勝負だ!!」 紅蓮、蒼木、黄土が叫んだ。 紅蓮達は同時にバズーカを構え、弾丸を発射させた。 「エアーアタック!!」 バズーカの弾丸は、空中で爆裂した。 「空間ナイフ!!」 パキパキと音を鳴らしながら空中でツララが形成される。 それが紅蓮達に向かって飛んでいく。 「甘い!!」 今度は相殺をせず、バズーカの銃身で防いだ。 ツララは弾けとんだ。 「恭司くん、本気でやってないでしょ!!」 「うるさい・・・集中しているんだ・・・」 そのとき、勇子は悟った。 その恭司の行動に意味があることを。 「わかったわ。時間を稼げってことね。」 勇子は言った。 恭司は何も言わなかった。 (まったく、愛想の無い男だ・・・) と勇子は思っていた。 「エアーアタック!!」 バズーカの弾丸を空間で爆裂させながら紅蓮に近づいていく勇子。 「いくわよ!!ストレート!!」 「ぬぐっ・・・!!」 勇子のパンチが紅蓮の顔面にヒットした。 が、蒼木が勇子を狙って撃ってきたので、勇子は一旦身を引いた。 「そして・・・フック!アッパー!!」 蒼木に攻撃を仕掛けたが、あっさりかわされてしまう。 そして勇子は気付いた。 「あ・・・」 紅蓮達に囲まれていることに。 「これで終わりだ」 「若き魂よ・・・」 「やすらかに眠れ!!」 弾丸が三方向から発射された。 「エアーアタック!!」 弾丸を二発、空間で爆発させたが、背後から迫り来る弾丸だけは間に合わなかった。 「だ・・・だめ・・・」 諦めかけたその時、弾丸が空中で爆発した。 「え?」 勇子のエアーアタックはもう出し切っていて、力を貯めてなかったから、 自分でした攻撃ではないことだけに、驚いていた。 そこには、爆発でボロボロになったブーツがあった。 「お待たせー♪わんころをぶっ殺すのに手間取っちゃって♪」 そこには、笑顔の吉子がいた。 もどる