最終話「メタルタウンズサンダーボルト」 覚悟は出来た。 ショーンは、今までの戦いを思い出していた。 沙耶華に連れられて、ティオレイドに入った。 風使いと戦ってからこれまで、色々あった。 学校生活では見つけられなかった新しい仲間。 新しいライバル。 新しい旅。 新しい戦いが、そこにはあった。 ショーンは、実感した。 「俺は、生きている。」 そう呟いた。 目の前にデーモニックがいるが、恐怖を感じない。 「エクラッツレーム!!」 雷の刃を出し、デーモニックに斬りかかる。 「デーモニックインフェルノ!!」 黒い球体が刃に触れ、弾けた。 その破片が、ショーンの体に刺さり、破壊していったが、 なんともなさそうにショーンは構えている。 「ヒールバブル。」 言うと、空中に泡が出現し、ショーンが触れると、傷が全て回復した。 「な、何!?」 ショーンが発した雷の影響で、停電から電力が復帰した。 「エレベーターに乗れるわ!!」 フィスナが言って、エレベーターのボタンを押した。 三人は、すぐにエレベーターに乗ると、上階にあがった。 「ショーンは、一人で戦うと言っていた。」 「だからって何?ただ見てろって言うの?」 沙耶華が、早くもショーンに会いたがっているのがフィスナとミハエルには分かった。 扉が開いて、三人は、ショーンとデーモニックが戦っているのが見えた。 そして、驚愕した。 「は、速い・・・」 「あれが人間の動きかよ・・・」 「両方とも逸脱してるわ。」 ショーンは、デーモニックに斬りかかっていく。 だが、デーモニックもそう易々と捕らえられない。 体術も、少なからず高い技術を持っていた。 デーモニックが離れて、ショーンに掌を向けた。 「くらえ!!カオスレーザー!!」 紫色の閃光が高速で空を駆ける。 ショーンは、力を込めて、声を出した。 「ティッカウェイ!!」 閃光は、何もない空間を裂いていき、ショーンの背後にいたサロ・ヌーアに当った。 サロは、悲鳴を上げることなくそこから消えた。 「お・・・おい・・・今のは・・・」 ミハエルが、驚いていた。 「あ・・・う、うん」 沙耶華も頷く。 フィスナは、唖然としていた。 デーモニックの背後から迫るショーン。 それに気付いたデーモニック。 振り返ろうとしたが、遅かった。 「オーガフィスト!!」 振り下ろされた拳に叩き潰されるデーモニック。 「おいおい、嘘だろォ〜!?」 「ショーンが・・・オーガフィストを?」 「それだけじゃない。さっきもティッカウェイを・・・」 叩き潰されたデーモニックだったが、すぐにダウンズゲートを唱えて復活した。 「く・・・この鍵の力は・・・何がなんでも欲しくなった!! デーモニックインフェルノ!!」 ショーンの至近距離で球体を放つ。 「ウィンドブレーカー!!」 強力なカマイタチが、球体を真っ二つに裂いた。 「うぉぉぉお!!」 「なっ!?」 ショーンの手は、デーモニックの頭をガッシリとつかんでいた。 「フォーヘイドハイム!!」 「ぐわぁぁぁ!!」 デーモニックは、顔を抑えて暴れまわった。 「目・・・目がぁぁぁぁあ!!」 が、すぐに立ち止まった。 「なんてね・・・ダウンズゲート!!」 焼けた額と目を元の状態に戻した。 そして、自分の都合のいい状況、カオスレーザーを多方向から放ち、ショーンを囲んだ。 「そして!!瞬間移動をしてもいいように!! デーモニックインフェ・・・」 不思議だった。 デーモニックにとっては不愉快だった。 放ったカオスレーザーは高速で移動し、ショーンを消し去るはずだったが、 その閃光は、未だ空中をゆっくりと進んでいた。 「な・・・なにが・・・起きて・・・」 「クリムゾンサンセット。」 ショーンは、閃光を避け、デーモニックの前に出た。 「詰みだ。」 「な・・・に・・・そんな・・・馬鹿な・・・」 ショーンにとって、周りの景色はゆっくりになっている。 ショーンは、雷を集めた。 「この船の全電力を頂くぞ。」 再び、停電する。 光が、ショーンの両手に集まっていく。 その光はどんどん大きくなる。 「く・・・くそがぁぁぁあ!!」 デーモニックは、ショーンに突撃しようと走り出す。 が、それはすぐに止められる。 「掴め!!シェイドチェーン!!」 鎖を束にして形成した巨大な手が、デーモニックを捕らえた。 「放せ!!くそっ!!こんな所で、俺は!!」 「灰になりなぁ!!」 ショーンは、貯めた雷を、デーモニックに向けて放った。 「メタルタウンズサンダーボルト!!」 「う、うああああああああああああ!!」 ショーンの脳裏に、戦いの軌跡が蘇る。 これで終わりだ。 「はぁっ!?く、苦しい・・・なんだこの雷はー!!」 鎖の手の中、デーモニックは、バチバチと感電していた。 「意識が・・・遠の・・・く・・・」 最後の力を振り絞り、デーモニックは、声に出す。 「ダウンズ・・・ゲー・・・ト・・・」 だが、デーモニックへの雷撃は、続いている。 「そ・・・んな・・・」 「もうおまえに力は残ってないということだー!!」 ショーンは、雷の出力を上げた。 帯電音が響き渡る。 デーモニックの体は、ボロボロに崩れていく。 「終わりだーッ!!」 雷鳴が轟き、辺りを眩い光が包んだ。 沙耶華達が、目を瞑って、再びそこを見たとき。 ショーンは倒れていた。 その前に、デーモニックも倒れていた。 「ショーン!!」 叫ぶと同時に、爆音が鳴った。 そして、船が傾き始めた。 「おい、沙耶華、外を見ろ!!」 ガルムベルド船が発進している。 が、爆音は何度も何度も鳴る。 沙耶華達が窓の外に見とれていると、床が傾きだした。 「墜落するのか!?」 「これがあのときのガルムベルド船と同じなら、帆船があるはずよ!!」 ミハエルとフィスナが頷く。 言っていると、ローナや、レガロ、デーモニックの体が床の傾きに従って、 流れるようにして開いた窓へと滑っていく。 それを見た沙耶華は、立ち上がり、ショーンの体を探した。 「沙耶華!!」 ミハエルとフィスナが叫んだ時には、沙耶華は走り出していた。 自分の身を投げ出し、倒れた体と同じようにして床を滑っていく。 そしてショーンの腕を掴んだ。 「やった!!」 ミハエル達が歓喜の声を上げた。 レガロ達の体はすでに、窓の外に投げ出されている。 沙耶華も、その窓に向かって滑っていた。 が、窓の淵を掴み、なんとか留まった。 窓から外に出てしまっているので、這い上がろうにも片手でショーンの腕をつかんでいるから無理だ。 「行って!!ミハエル!!フィスナさん!!」 沙耶華は叫んだ。 「でも!!」 「帆船を確保して脱出するの!!できるでしょ?」 「沙耶華とショーンはどうするんだ!!」 「・・・大丈夫よ。」 言い終わって、沙耶華は、遥か下方に見える山を見た。 「いくわよ、ミハエル」 フィスナは、ミハエルをつれてエレベーターに乗った。 二人は、最下層まで降りて、帆船を探した。 もうすでに、出口のハッチは開いていて、帆船も出ようとしていた。 扉が開いた。 「早く乗って!!」 中から石原勇子が叫んでいた。 フィスナとミハエルは、それに従って、帆船に乗り込んだ。 中には、石原三姉妹と、意識不明の重態で倒れている恭司がいた。 帆船は、すぐに発進した。 ハッチから出るまで、数十メートル。 その距離を滑走しているとき、爆発に巻き込まれた。 炎がガルムベルド船を包んでいる。 爆風に吹き飛ばされるようにして、ハッチから脱出した帆船は、そのまま急降下していく。 「状態・・・戻ります・・・」 麻子が、操縦をしていた。 彼女が言うとおり、帆船は、水平の状態に戻され、安定した。 「右に旋回します。」 帆船は旋回し、海が見える方向に向き直った。 窓からは、低空をゆっくり飛びながら降下していくガルムベルド船が見えた。 水平線には赤くなった太陽が浮いていた。 帆船とガルムベルド船は、平行線を辿るようにして海に向かっていく。 ゆっくりと。 ゆっくりと。 フィスナが涙を流した。 「これで、終わった・・・んだよね?」 「ああ。」 ミハエルが答える。 「ミハエルは、ドイツに・・・私はグァムに帰るんだ。」 「そうだな。」 時間がものすごくゆっくりに感じられた。 ティオレイド基地にて、ミハエルとフィスナが話していた。 「結局、二人はどうなったか・・・わからず終いだったね。」 「ああ。あの二人だ・・・どこかで仲良くやってるよ。」 と、そこにレーオンがやってきた。 「誰の話だ?」 「ショーンと、沙耶華さ。」 レーオンは、考え込む。 「そうだな・・・彼らは・・・君たちにとって、なんだったんだろうな。」 「仲間ですね。」 即答した。 「そうだね。質問が間違ってたよ・・・ところで―――」 と、レーオンは話題を変える。 「本当にいいのかい?」 そう言うと、フィスナとミハエルは、頷く。 「ティオレイドのメンバーなら、それなりの優遇があるのに。 まぁ、その代わり、緊急時には集まらなきゃならないけど。」 「いいんです。」 フィスナは、きっぱり答えた。 「もうこんな危ないこと辞めにします。 グァムに帰ってホテル経営・・・は、出来ないでしょうけど、 ちゃんと学校に行って普通の生活がしたいんです。」 ミハエルも頷いた。 「そうか。」 レーオンは、言って、二人の表情を見比べる。 「それじゃ・・・ 今日を以って、ミハエル・アンダンテ、フィスナ・リフターのティオレイドメンバーとしての 免許を停止する。 いいね?」 「はい。」 メンバーのプロフィールが書かれたデータを全て消したレーオン。 ミハエルとフィスナは、帰るまで少しの間、一般のホテルに泊まると言って、基地を後にした。 レーオンは、一通のメールに気付いて、それを見て微笑した。 石原麻子は、パソコンのディスプレイに向かっていた。 流石は機械に関しては万能と言ったところ、 情報収集もすぐに終わったらしい。 「特定できた。」 そう言って、データを印刷し、勇子と恭司に見せた。 恭司の体には、包帯が巻かれて、今はアロハシャツを着ている。 松葉杖も欠かせない。 「見せて見せて!!」 吉子がでしゃばるが、麻子に押さえつけられた。 渡された紙を見る勇子と恭司。 「そうか・・・」 江ノ島。 そこに行けばいいのか、と。 勇子と恭司は頷いた。 「なんで見せてくれないの・・・」 吉子が膨れっ面で麻子に言った。 「今は二人だけにさせてあげましょう。」 麻子がそう宥めていると、勇子と恭司は出かけていった。 地図の通り、江ノ島のとあるアパートの前まで来た。 勇子は、恭司の肩を抱いていた。 恭司の腕には松葉杖があった。 二人は、そのアパートを前にして、立ち止まった。 奥の部屋の扉が開く音がする。 「もう、早くしないと、学校遅れちゃうよ?」 都合があって、転校したと噂される一組の男女が、二階の階段から降りてきた。 恭司と勇子は、それをただ見ていた。 女の方が、二人に気付いて、見詰め合った形になる。 「おーい、弁当忘れるなよ。」 恐らく、彼氏が、二つの弁当箱を引提げて階段を降りてきた。 地面に降り立った彼と見詰め合う恭司。 二組の男女が、お互いを見ていた。 鏡でも見ているような、そんな感じがあった。 それから、懐かしさも。 「似合わねぇよ。」 恭司が、向かい合った二人に言った。 「おまえらもな。」 相手の男が返した。 おわり もどる