第6話「風」
下校中、人気の少ない道で
ゴツイ顔の青年が現れた。
普通に素通りしようとした。
黒い革ジャンを着ているその男は、
近くに行くと背が高いことがわかる。
和藤と山南は、歩いて男を
通り過ぎたとき、殺気を感じた。
和藤が振り返ったとき、男も同時に振り返っていた。
「あんた誰だ?」
「テッド・フォルスター、貴様がショーンか?」
和藤は危険を感じた。
「いや、違う。」
「そうか。失礼した。」
和藤は山南と歩き出した。
「どうして戦わなかったの?」
「なんで戦わなきゃいけないんだ?」
「あいつは敵なのよ。」
「そんなの俺は聞いてないから。」
和藤はそう言うと
立ち止まる山南を置いて歩こうとする。
「ん?どうした?」
「もういい、私が一人で戦ってくる」
「どうぞ、ご自由に。」
山南を行かせることに少し躊躇いを感じたが、
和藤はただの一般市民でいたいおもいで、
彼女を切り離した。
山南は、走って戻っていった。
「テッド・・・」
「なんだ?さっきの男といた奴か?」
「私はあんたを倒す!」
「・・・何の話だ?」
「あんた達も、槍を追う者なんでしょ?!」
「・・・なぜそれを・・・」
「私はティオレイドチームの一員。」
「そうすると、さっきの男がショーンか?」
「ええ、そうよ。だけど彼は私たちに力を
貸してくれそうもない腰抜けよ。」
それを言うと、男は歩き出し、
山南を素通りしていった。
「ちょっと、待ちなさい!」
「なんだ?」
「私があなたの相手なの!」
「なんで?俺達の目的はショーンを倒すことだ。」
「彼はもう槍には関係ないの」
「おまえも俺達には関係ない・・・
無駄な戦いは避けたいんだ。」
「なんで!!」
「関係のない人は巻き込みたくない」
山南は彼のその言葉に動揺した。
犯罪者グループなのにそこまで
考えるのだろうか・・・
テッドが再び山南に背を向けると、
山南はテッドを追った。
するとテッドは走り出し、
山南を振り払おうとする。
「やむをえない・・・」
山南は手を額に当てた。
そして通信攻撃を放つと、
テッドは倒れた。
「がぁ・・・頭が・・・」
「もうこれで関係ないってこともないんじゃない?」
「くっ・・・戦うしかないのか・・・」
テッドは立ち上がった。
そして腕を振るった。
風の鋭い音が山南に近づいていった。
山南はそれをよけると、
黒板をつめで引掻くような音を出し、
後ろの塀に傷がついた。
「風のU・tiole使い?」
「もう俺はおまえに勝てるかどうかわからなくなった。
一度技を見せてしまったからな・・・」
「ふーん、結構いい人なんだね。」
山南はその言葉を言って、
塀を蹴ってテッドに向かっていった。
なんだか機内が騒がしくなる。
「シェリーさん、なんでしょうね?」
「ハイジャックだったりして・・・」
「そんな、怖いこと言わんでください・・・」
ミハエルはシェリーと話している。
「ハイジャックだよ、ほら、後ろ見てみな。」
ミハエルはそれを聞いて立ち上がった。
そして後ろを見ると、
奥のほうで人質を取っている人物がいた。
マスクもしてない。
銃も持ってない。
ただ、人質の女性の首に指を付けているだけ。
見た目はただのロン毛のお兄さんだ。
「いいですか?僕はミハエルさんという方を探しているのです。
素直に教えてくれれば何もしません。」
そういっているのが聞こえた。
そのとき、その近くに座っていた酔っ払いの中年が
ロン毛の男に向かっていった。
「おれぁよぉ、ウィー、こんなつまらない人間だけどもよぉ、
こんなときはなぁ、限界を超えてやるんだ〜、ヒック・・・」
「そうですか。」
「なぁにが、そうですか、だぁ?
てめぇハイジャックのくせに銃一つも持ってないじゃないか〜」
そう言って中年はそいつに殴りかかっていった。
が、男が指を中年に向けて、指揮棒を振るように
すると、
中年はたてに真っ二つになり、
血を噴出して死んだ。
「ほらね、早くしないとこの人質もこうなっちゃうんですよ?
なるべくミハエルさん以外の人は殺したくないんです。」
「俺がミハエルだ!!」
ミハエルが通路に出て、奥にいる男に言った。
男はそれを聞くと、
人質の女性を放し、そして謝っていた。
そのあと、ミハエルの方に向き直ると、
向かって歩いてきた。
「速めに名乗り出てれば、この酔っ払いも死なずにすんだのに。」
ミハエルは罪悪感を感じた。
「何やってるの?逃げなきゃだめじゃない!!」
シェリーはミハエルに言った。
「なんで?奴は俺を追ってきたんだろ?」
男はミハエルの近くまで来ると、
立ち止まり、話し出した。
「僕はノーゼン・フォルスター。
きっと君の仲間になる人を僕の兄弟が
倒しに行ってるよ。」
「なんのことだ?」
「そりゃ、知らないよね、
予言どおりに行かせないのが
僕らの仕事だから。」
男は指をクイッと振り上げると、
空気の流れが速くミハエルに伝わるようだった。
ミハエルはとっさに水の膜を作り、
ガードを固めた。
が、その膜に長細い楕円形の
穴があき、風の音がミハエルに近づいていった。
ミハエルはとっさによけたが、
頬をかすめ、そこから血が垂れた。
「てめぇ・・・この機内でやるのか・・・?」
「もちろん。君を倒せるならどこだってかまいませんね。」
「幽霊のように・・・なれるのか・・・」
男はその黒い眼差しから、鋭い殺気を放つ。
見つめていると動けなくなりそうなくらい。
「あなた・・・なぜ私の父を・・・」
フィスナは泣きそうな顔で言う。
「・・・答えなくてもいい質問だな・・・」
「・・・んだとぉ・・・」
その瞬間から、フィスナの形相が変わった。
女性と思えないほどの恐怖を発した。
そして男の目の前から姿を消した。
消えたと言うより、
物凄い速さで男の至近距離までしゃがみこんでいったので、
男の反応速度が一瞬ひるんだ。
「速いな・・・だが、そんな細い腕で・・・」
男は構えも取らず、そしてノロノロと後退した。
フィスナは右のこぶしを男に振り出すと、
腕の幽体だけが男めがけて飛んでいった。
男は驚き、とっさに腕を掴もうとしたが、
その腕はもちろんのこと、男の腕をすきぬけていき、
男の顔面にヒットした。
「名付けて、ファントムフィスト」
「ファントムフィスト・・・『幽霊の拳』だとぉ?」
「私の能力、幽体を自由自在に操れる。
U・tiole名は・・・バイオレンスゴースト!!」
「そこまで・・・種明かししてもらったからには・・・
俺も名乗らせてもらわねばならん・・・
俺の名は・・・ワンゲルク・フォルスター。
風の能力、ウィンドブレーカーを使う。」
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