第7話「vs風、決着」 血糊が制服に着く。 かろうじて少量の血なので たいしたよごれにはならなそうだが。 山南は右の肩を押さえていた。 そこから制服が切れ、少しだが血がでていた。 よけ切れなかった風攻撃をなんとか肩で受けた。 「いたたた・・・」 苦笑いしながら右肩を見る山南は、 攻撃してくださいと言っているような 無防備な構えだった。 テッドは様子を見てからもう一度、 山南に歩み寄ってくる。 「動けるはずだ。 その程度の傷で逃げるとは思えないな」 テッドは言った。 淡々と何の変哲も無く、 ただゆっくりと散歩をするように 歩いてくるテッドを山南は見ていた。 無防備な状態を見せつけながら。 あと一歩だ・・・ 山南はそう思っていた。 「何かを狙ってるな・・・」 「知ってた? このあたりってサボテンを飼ってる人が 多いってこと・・・」 テッドはまた一歩踏み出すと、 テッドの周りには無数の針が飛んできていた。 一瞬のことだった。 だから、テッドはよけきれず、 360℃から迫る針が全て刺さってしまった。 「う・・・」 顔はもちろん、体は 服をも貫通して刺さっていた。 「あー、こりゃすごいサボテンね。 どこの国のかしら?」 山南は民家を見回して、 テッドの前に出た。 そのときにテッドは気づいた。 風攻撃で傷ついた肩に 植物の蔓が巻きつき、 そして止血していた。 「予想外だ。」 地面にひざをつくテッドを 下目使いで笑いながら言う。 「ここまですごいサボテンだとは 思わなかったのと、 あんたがここまで弱かったこと・・・」 「・・・くっ」 テッドは針が刺さり、 血がところどころから出ている顔をあげた。 そして右腕を大きく横から 山南めがけて振った。 山南はそれをよけられず、 遠くに飛ばされた。 「しまった・・・」 山南が空中から着地、 そしてテッドの姿を見ると 後ろ姿で、今にも走り出そうとしていた。 が、いっこうに走り出そうとしない。 目の前にはショーンが立っていた。 それには山南も驚いたが、 テッドも驚いた。 「ショーン、逃げてればよかったものを、 わざわざ殺されに来たか」 「けが人に言われたくないね」 ショーンはそう言いながら 手に持っていた何かをばら撒いた。 ほこりが目に入ったようで、 テッドは目をつぶって 顔を伏せた。 再び目を開けてもショーンは同じ場所に立っていた。 「目くらまし・・・にしては無意味だな・・・」 「あぁ、目くらましならな。」 そう言うとショーンはしゃがみこんで ばら撒いたものに指を付けた。 ばら撒いたものは砂のようで、 テッドの体にも付着し、足元にも撒いてあった。 「ちょっとした実験さ・・・ 砂鉄は・・・絶縁体かな?」 ショーンの指と砂の接着点で 紫色の光が出た。 「トネールプリュールル!!」 そして 電気となり、砂の上を光らせてテッドを包み込んだ。 テッドは紫色に光り、 「ぐぁー!!」 と叫んでいた。 ショーンは指を砂鉄から離した。 それと同時に、テッドを包んでいた光が バチバチ音を立てながら消えていった。 テッドの服はボロボロになり、 そしてテッドの顔は血と焦げで 黒赤くなった。 テッドの指はぴくぴく動いている。 テッドの体は地面に崩れるように倒れた。 ショーンは右肘を左手に乗せ、 軽く腕をあげ、手首を振った。 「アデュ・・・」 そう言うともと来た道へ振り返ってしまった。 山南はそれを追うように ショーンの前に出た。 「ショーン!!」 「なんだよ、今度は」 山南は手を出した。 握手を求められたショーンは それに応じるのも躊躇った。 山南はそんなショーンを見て にっこり笑った。 「あんたも共犯よ、 これでティオレイドに入るしかないよね?」 「な・・・最初っから俺をハメるつもりで・・・」 ショーンはまいったと、 苦笑いをして、山南の手に 同じ手を出した。 「いいか、俺があんたと協力するのは、 あんたに仕返しするためだからな!!」 二人は握手した。 頬からたれる血を指で拭き取った。 そのまま両手を頭のバンダナに手を伸ばす。 バンダナを外すとそこには 水色に透き通った角がある。 「本気モード・・・ですか?」 ノーゼンはつぶやくように言う。 「今なら選ばしてやる。 ひとつ、ここで戦い、俺にボコボコにされ 機内から外に落とされる。 ふたつ、機内のみんなに謝罪し、 俺にぶん殴られて豚箱で目を覚ます。 どっちか選べ・・・」 乗客は機内の異常に驚き、そして ミハエルの頭の角を見ておびえていた。 「それじゃあ、3番の・・・ 僕が君を倒し、僕達の捕虜にする・・・てのはどうかな?」 「わかった、一番だな!!」 そう叫びながらノーゼンに向かっていくミハエル。 「うおりゃぁぁあ!!」 右腕に水のドリルを纏い、 ノーゼンに殴りかかった。 その瞬間、ミハエルの視界からノーゼンは消えていた。 一瞬、飛行機の天井が見えた。 そして気がつくと倒れていた。 「ミハエル!!」 シェリーの声が近づいてきた。 「いってぇえ・・・何?今の・・・柔道?」 ミハエルは頭を撫でながら立ち上がった。 「僕はただ足をかけただけです・・・」 ノーゼンはクスッと笑い、手をミハエルの顔の前に出す。 「っ・・・」 「どうしたんですか?」 ミハエルはその手を目の前に出され、 うまく身動きが取れなくなった。 「ノーゼン・・・だっけ? 今は確かに絶対絶命だが・・・ 状況が変わればおまえの顔を苦痛にゆがめることができるぜ!!」 ミハエルは吐き捨てるように言った。 ノーゼンはまた微笑み、 手を縦に振った。 すると、5本の細長い風の刃が向かってきた。 それは目視できない刃。 空気を切り裂きながら近づく音で 距離を見極め、そして顔面に当たる前によけた。 ミハエルはそれをかわして後ろに飛びのいた。 ノーゼンは今度は両手をクロスさせるように 腕を振った。 「ウィンドブレーカー・ダブルゲーム!!」 機内の物は飛び散り、空中で切り刻まれ、 そしてミハエルの方へそれは近づいてくる。 ミハエルは体中に水を纏い、 背中側の水を何本もの針状にさせた。 風はミハエルの水膜を突き破っていく。 が、いっこうにミハエルの体までたどり着かない。 「バイオレンスブルー!!」 ミハエルが腕を振り下ろすと同時に、 空中に浮いていた何本もの水の針はノーゼンに 向かって飛んでいった。 ノーゼンはとっさに飛びのいた。 しかし、飛びのいたのが遅かったのか、 右脚全体に針を食らってしまった。 ミハエルにぶつかっていた風はもう 空気になじみこみ、 そしてミハエルは水の膜を消した。 「さて、どうしたものかな? もう俺は躊躇しないぜ?」 そう言ってミハエルは 水の大剣を手に出現させ、 ノーゼンに近づいていった。 「答えは4番だ・・・」 ノーゼンはそう笑顔で言った。 「ここまで強いとは思わなかった・・・ はっきり言って、少し油断したよ・・・」 ノーゼンは後ろにあった緊急用のドアに手をかけた。 「待て!!開けるな!!」 ミハエルはノーゼンの動作をやめさせようと 走ってノーゼンの方に向かった。 ドアが開く。 と同時に、機内の飲み物や、パンフレット、などが 外に放り出され、 そしてシートベルトをしていなかった子供が 飛ばされる。 「うわぁー!!」 シェリーはその子供をキャッチした。 ノーゼンはドアの横でニヤリと笑い、 ドアの外に飛び出した。 ミハエルはドアの下を見ると、 ノーゼンはもう見えなくなっていた。 バランクスがミハエルを椅子に戻した。 「ドア大丈夫なのか?」 「大丈夫だ・・・」 シェリーが自分のいた椅子に 子供を座らせ、そしてシートベルトをさせた。 シェリーはそのままドアの方に行った。 ドアの扉は外に放り出され、それを閉めることはできない。 シェリーはドアの手すりにつかまり、 外に身を乗り出した。 「危ない!!」 ミハエルは叫んだ。 シェリーは飛行機の外壁をつかんだ。 そしてその腕のブレスレッドが光った。 バリバリと音を立て、 外壁は剥がされた。 シェリーはそれを折りたたみ、機内に入れ、 そしてまた広げた。 それは臨時のドアとして、開いた空間を塞いだ。 怖い顔のワンゲルクと フィスナは互いに向き合い、そして動かなくなっていた。 「今日なら勝てるかもしれない・・・あんたに」 フィスナは真正面にいるワンゲルクにニヤリと 笑みを浮かべ、そして近づく。 「かかって来い・・・」 「ああ、やってやるとも・・・父親の仇を討つ。」 二人はみつめあったまま動かなくなった。 「ウィンドブレーカー!!」 「バイオレンスゴースト!!」 フィスナが出した幽体は、 風を起こそうと腕を振ったワンゲルクの目の前に躍り出た。 そして腕をつかみ、片方の手を口の中につっこんだ。 「つかんだぞっ!!あんたの魂!!」 ワンゲルクの口の中から バイオレンスゴーストの手に握られて 白いモヤモヤした球体が出てきた。 「降伏か、抵抗か、選ばしてやる。」 気を失いかけ、ひざを床に着くワンゲルクの肩に 右足を乗っけて、フィスナはワンゲルクの動きを封じる。 「わかっているとは思うけど、 あんた、ここで死んでもいいの?情けないわねぇ」 ワンゲルクは必死でもがき、そしてフィスナから離れようとした。 「答えは抵抗、ね。 それじゃあ・・・死んで。」 バイオレンスゴーストは、掴んでいた球体を潰し、 粉々に砕き割った。 破裂音と共に、破片が飛び散って溶けるように消えた。 それと同時に、ワンゲルクはうつ伏せで倒れた。 もどる