第8話「組織」 「・・・で、なんで空港なんかに呼び出したんだ?」 鳥粉町にある空港のロビーで 山南は外を眺め、声がしたほうに振り返った。 そこには呆れ顔の和藤がいた。 「お金もパスポートも持ってきてないけど。」 山南に近づきながら窓の外に目をやる和藤。 「ここである人物に会うの。」 「誰だ?」 「ティオレイドの仲間よ。」 「極秘事項で名前は聞かせてもらえない・・・か。」 山南は和藤の目線の先、着陸した直後の飛行機を見た。 「そうね。自己紹介するから教える必要ないわね。」 山南はそう言うと歩き出した。 「おい、どこ行くんだ?」 「迎えに行くの」 和藤は山南の後を追った。 少し長めのエスカレーターを上っていき、椅子がずらーっと 何個も並んでいる場所に来た。 飛行機との連絡通路から乗客が出てきた。 山南はその入り口を見ている。 人が川のように流れ込んできて 連絡通路も見えなくなったころ、 山南はいったんそこを離れた。 和藤もそれに続いた。 ひとごみのなかから出たとき、 二人の目の前にはサングラスをかけた男が立っていた。 和藤はその男の横を通り、 椅子に腰をかけた。 山南は男の前に立っている。 和藤はその光景を黙認し、 男の前に出た。 「何やってんだよ、山南さん・・・」 そして椅子から立ち上がって 山南を引っ張っていこうとする。 「ノーウェン・・・ノーウェン・バランクスね?」 山南は男に訪ねた。 「そのとおりだ、仲間を連れてきた」 男がそう言って歩き出した。 「ついてこい」 山南と和藤は男についていった。 ついた先は、少し気品のある空港内のカフェ。 そこで一番奥の席に来た。 そこにはすでに大学生ぐらいの女性が二人と 男性が一人、 それと小学生ぐらいの男性が一人、計4人が 椅子に腰をかけていた。 「こんにちわ」 大学生ぐらいの女の人が言った。 「話の前にコーヒーでもどう?」 和藤はそのひとにコーヒーを勧められたが、 コーヒーは苦手だった。 「いえ、コーヒーは苦手なんです。 ところで、あなたは?」 「私の名前はシェリー・ミルトス。」 和藤はその名前に驚いた。 聞き覚えのある名前だったからだ。 半年前修学旅行でアメリカに行ったとき、 ホテルで新聞を読んだ。 そこに載っていたのがストライプガールこと、 シェリー・ミルトスだったのだ。 「あなたがあのストライプガール・・・」 「よく知ってるわね。」 シェリーがあいている椅子に目をやり、 指さした。 和藤はそこに腰掛けた。 隣にいた大学生の女性が メニューの書かれたカードを 和藤に渡した。 「私もコーヒーあまり好きじゃないの。 飲めないわけじゃないんだけど。 私はフィスナ・リフター。」 フィスナを見るなり、和藤はその女性は敵ではない、 むしろ味方だ、と本能で理解した。 「俺は和藤翔雲。 ショーン・ワートルでいいよ。」 向かい側の席、シェリーの隣の男の子がオレンジジュースを 飲み干して店員に「おかわり!」と言っていた。 店員がコップを持っていくのを見て、 彼は和藤の方を見た。 「俺、ミハエル・アンダンテ。 年齢は10歳。」 10歳の割には大人のようによくできた顔つきだった。 とりあえずみんな自己紹介を終えた。 そこで和藤は山南に聞いた。 「なぁ、何から聞いていいかわからないんだが、 いったい組織ってなんだ?」 「パルティ・ド・ティオレイドはU・tiole能力者が 集い、そして犯罪組織を片っ端から潰していく正義の味方、 そう考えていいわね。」 「じゃあここにいるみんな能力者なんだな?」 「そうよ。まだ世界中に仲間がいる。 ここにいるだけじゃないのよ。」 そう山南が言った後、 ノーウェンは立ち上がった。 「先に行ってるぞ」 相変わらず無愛想な男だ。 誰もがそう思っていた。 「待って、もうみんないいかしら?」 シェリーがノーウェンを引きとめ、 他のみんなにも外に出ることを勧めた。 「別に。 どこへいくかわからないけど、 ついてきちまったんだからしょうがないな。」 ミハエルが一番に立ち上がり、シェリーに続く。 そしてフィスナもカフェを出る。 山南は和藤を連れて行こうとする。 「行こ?」 「ああ。」 和藤も立ち上がりそしてカフェを出る。 「あの、お客様・・・」 レジから声が聞こえた。 「ああすまなかった」 その声を聞いて戻ってきた ノーウェンが金を払った。 「おごりですか?」 「いや、俺が今使った金は組織の資金だ。」 「え?こんなことにつかっちゃっていいんですか?」 「仲間の調達、つまり君、和藤とフィスナ、ミハエルに 仲間になってもらうことが目的、 だからカフェで話でもして和もうってわけだ」 「そうか。 だから組織の資金で・・・ わかった。 おごってもらったからな、 入団するよ。」 「もう名簿には名前が入っている。」 「ほーう、断らないってわかってたんだね」 「大人なら俺を雇うなら金を用意しろって言うだろうけど 君たちはカフェ代だけですんだ」 「なんだとこのやっ・・・ぶ」 ノーウェンに飛び掛ろうとした和藤の 首筋を掴んだのは山南だった。 「だめよ、あの人、強いんだから」 「そうなのか?ただでかいだけじゃないのか?」 山南は和藤の言葉を無視して歩き出す。 「これからどこに向かうんですか?」 フィスナが聞いた。 「ティオレイドの日本支部。 まぁ、いわゆる秘密基地って奴ね。」 答えたのはシェリー。 「すげぇ!!かっけぇ!!秘密基地!! どこどこ、どこにあるの!?」 ミハエルが子供っぽく、(実際子供だが) シェリーに問うた。 「あのね、今ここじゃ言えないの。わかる?」 「おぉー、すっげぇ、スパイみたい!!」 「わかってないのね。」 ミハエルはどうやら人の話は聞いてないらしい。 一行は空港の外に出て周りを見回した。 「なぁ、これからどうすんだ?」 和藤が遠くのほうを見ながら聞いた。 「迎えが来るはずなんだけど・・・」 シェリーが言った。 「迎えって・・・ あなた達はついさっき日本に来たばっかじゃ・・・ 私もそうだけど」 フィスナがどかかを眺めているようなシェリーに言った。 「そうだけど、どんなことにも予約ってあるでしょ?」 「あぁ、そっか・・・」 フィスナも納得して辺りを見回す。 しかし、何ひとつ近づいてくるものがない。 「何かあったのかしら? ノーウェン、電話してみて」 シェリーに言われるとノーウェンは服の中から携帯電話を取り出した。 それを使ってどこかに電話をかけている。 「どうした?迎えが遅いじゃないか・・・ ・・・何? そうか、わかった・・・ それじゃ、あとで。」 相手の声はよく聞き取れないほ小さかった。 「なんだって?」 和藤がいやいやながらもノーウェンに聞く。 「今すぐここを離れるんだ。 敵に勘付かれたらしい。」 全員がいっせいに驚きで声を上げていた。 「二手に分かれて2台の車を待つんだ。 いいか?車の運転手に『蝋燭・松葉・硫酸』と言って 『溶解・粉末・液化』と答えられたら車に乗っていい。」 ノーウェンが焦った声で一気に説明を捲し立てる。 「なんだそれ?」 「合言葉だ」 ミハエルはいちいちなんでも聞きたがる、 ノーウェンはそう思いながらも答えていた。 「沙耶華ちゃんと和藤くんと私は空港内部から裏に出るわ。 ノーウェンはミハエルくんとフィスナさんを遠回りになっちゃうけど 外から裏に回って。」 シェリーが仕切って 「シェリー、迎えが来るのは裏ではない。 ここだよ。」 ノーウェンが反論を返す。 「だけどここにずっといるわけにはいかないでしょ?」 「・・・だけど」 「電話で車を裏によこすように言って。 それからダミーとして1台増やして。」 「わかった。先に行け」 ノーウェンが携帯電話を取り出すのと シェリーが空港に入っていくのが同時だった。 「さっそく敵・・・」 「おびえてちゃだめよ、 昨日みたいに私と一緒に闘ってくれるだけで いいんだから。」 「昨日よりもっと強い敵が来たら?」 「さぁ?殺されちゃうかもね」 山南が軽く言ったその言葉で和藤は寒気を感じた。 「強いってのは体力だけじゃないのよ? おつむの強さも戦いに影響するの。」 3人は走り出した。 もどる