ストライプマン chapter 1 fatal encount 〜遭遇・運命〜

カリフォルニア州の某所に、至極普通の、一般的な家庭があった。 高校生である兄妹は、いつもどおり登校も一緒。 普段から、仲がいいのである。 高校三年生になった兄、オービスと、 高校一年生のシェリー。 この二人も至って普通の学生、兄妹揃って成績は優秀な方。 オービスは、幼い頃から武道の道場に通っているため、運動神経と格闘技には自信があった。 地区大会での優勝経験も数多い。 そんな彼が、一度だって犯罪に巻き込まれるなんて、 そんなことがあったことは、彼の人生上、今のところは全く無い。 その日、帰宅後、オービスはいつものように道場に向かった。 が、道場は、荒れていた。 道場破りにでもあったのかと思って、中に足を踏み入れたが、 タイルの床は、穴が開き、畳などはバリバリに剥がされていた。 サンドバッグには穴が開き、畳の上に砂が山のようになっていた。 不思議なことに、道場の中には、コーチも、マネージャーも、同期生も先輩も、 誰もいなかったのだ。 人の気配がごっそり根こそぎ持っていかれていた。 「誰か!!誰かいないのですか!?」 オービスは、不安になりながらも、道場に人を探した。 廊下を進み、トイレを探したり、二階のトレーニングジムも探してみたり。 しかし、どこを探しても人は見つからない。 オービスは、急に恐怖を感じて、すぐに一階に戻った。 「何か変だ!!」 廊下から道場に入る。 壊された道場。 その中を歩き回り、周りを観察する。 「ん?」 玄関のドアを開ける音が聞こえて、オービスは用具入れに隠れた。 「計画は順調か。」 「ええ。」 体格のいい男と、細身の女が話していた。 オービスは、女の顔を見たが、男の顔は、用具入れの中からだと見えなかった。 「ここに来ていた男の中に、危険因子がいたのだろう? だが、それがいなかった。」 「今、誘拐した全員と照合を行っています。」 誘拐という言葉を聞いて、オービスは気付いた。 この二人は、何かを知っているのかもしれない、と。 もしかしたら、その誘拐を行った犯人なのかもしれない・・・ だが、何故・・・。 それに道場の荒れ様、争いがあったとしか思えなかった。 オービスは、二人が道場を出て行くまで用具入れの中で待っていた。 しかし、中々二人は帰らなかった。 女が、男に、帰ろうと促していたが、男はそれを断った。 「出てこいよ。」 男が言った。 オービスは、震え上がった。 バレていたのだ、と。 「片っ端っから壊していってもいいんだぜ?」 男は、壁を叩いた。 音が用具入れの中にも響く。 オービスの息が速くなる。心臓の鼓動も・・・。 「なんだ、いないのか。」 そう言って、男と女は、道場を出ていこうとした。 玄関を閉じる音がした。 オービスは安堵の溜息を漏らして、まだ震えている体を抑えた。 「なんだったんだ?あいつらは・・・」 オービスは、用具入れから出ようと思ったが、すぐにそれをやめた。 また誰かが入ってきたからだった。 「しっかり端まで撒いとけよ。」 「ああ、わかってるよ。ったく・・・」 「人使い荒いってのな。」 「ほんとだよ。」 二人の男が入ってきて、なにやら液体の入ったボトルを逆さまにして道場に撒いている。 タバコを吸っている男が現れた。 「おい、おまえら、危ないからどいてな。」 二人の男が去っていった。 オービスの視界には何も見えなくなった。 用具入れの隙間からでは、外の完全な景色がつかめない。 タバコを吸っていた男が、タバコを道場内に投げ込んだ。 「誰か、消防署に連絡だー!!」 「ハハハハ!!」 外の男達がふざけて笑っていた。 道場内は、一気に赤く、燃え上がった。 「嘘ォ!?」 オービスは、驚いていたが、外に出ると男達に見つかってしまうと思い、 外に出ることは躊躇っていた。 「くそ・・・」 用具入れの中を探し、適当に掴んだデッキブラシを持って用具入れを出た。 「うわっ!?」 道場内はどこも火事場だった。 これでは外に出られない。 オービスは、火の中を走って、なんとか廊下まで出た。 そこにはまだ火の手は回っていなかった。 水場に走って、置いてあったホースを蛇口につないだ。 ホースを伸ばしていく。 道場内にホースの先を向けて、水を出した。 「くそ、消えろよ!!」 火は、一向に消える気配を見せない。 「そうだよ消火器・・・」 オービスは、消火器を探そうと、ホースから手を離した。 途端、廊下にまで火が燃え上がってきた。 道場の中の天井が落ちてきた。 ガラスの砕ける音がなって、蛍光灯が粉々に飛び散った。 オービスは、玄関の方を見た。 まだ間に合う、外に逃げられる。 そう思って再び火の中に足をつける。 「熱いっての」 言いながら、オービスは、なんとか外に抜け出した。 道場の外には、もう誰もいなかった。 そして、火事を聞きつけてやってきた近隣の人が、オービスを助けてくれた。 オービスは、警察の事情聴取などを受けて、それから帰宅。 帰宅時は、父親が車で迎えに来てくれた。 家に着くまで、父親は、何があったのか、オービスに聞き質したが、オービスは適当にはぐらかしておいた。 家に到着後は、シェリーがとても心配していた。 「大丈夫?お兄ちゃん」 「ああ、火傷も大したこと無いさ。」 実際、オービスの火傷は軽かった。 「それにしても・・・」 オービスは考えていた。 道場の人がいなくなっていたこと、誘拐のこと、放火のこと。 全て警察に任せておけば大丈夫なんだろうけど。 オービスは、学校ですぐに話題の中心になった。 火事の中から逃げ出してきた不死身だとか、放火犯だとか、色々言われていた。 「まったく、人の噂はなんとやら。 おまえら誰から聞いてきてんだよ。」 オービスは呟いていた。 学校が終わり、帰宅しようとロッカーを開けたオービス。 中には、蜂の巣と毒蛇が入っていた。 「うわっ!?」 蜂の巣が床に落ちて、蜂が一斉蜂起する。 毒蛇もオービスに噛み付こうとしていた。 オービスは、鞄だけ持って学校の廊下を逃げ出した。 蜂や蛇は、他の生徒達を襲った。 蜂も蛇も、猛毒ではなかったので、死者が出なかっただけマシである。 だが、オービスは、他の生徒から白い目で見られるようになった。 職員室にも呼び出され、何故あんなことをした、だとか、問いただされた。 「やったのは俺じゃない。 誰かが俺のロッカーに入れたんだ。」 なんとか言い返したが、教師達は聞く耳を持たない。 それからは、オービスは、友人も仲間もいなくなっていった。 「君に、力を貸そう。」 男が話しかけてきた。 「はぁ?」 オービスは、周りを見た。 電車の中には、乗客がちらほら見えるだけで、多くはいない。 真正面にいる男が話しかけてきた。 「あんた、誰です?」 「気にするな。 俺の名前なんて聞いても得じゃないぞ。 まぁ、呼ぶのに必要ならば・・・そうだな、ヴィシュと呼んでくれれば構わない。」 オービスは、このいかにも怪しい男に関わらないようにした。 電車に乗車して、三十分、恐らく、町を出てすぐにこの男も乗ってきた。 ならば、町の近くに住んでいる人間なのかもしれない。 「まったく、君は素直じゃないな。」 ヴィシュが言った。 「そうかい。 悪いが今は力は必要じゃない。 俺だって武道をやっていた身だ。 金だって、道具だって持ってきた。」 「そうか・・・家出か・・・ というよりも町を出る・・・そんなところかい?」 ヴィシュは、言いながらオービスの隣に座った。 「武道か。 でも道場が火事で焼けてしまっては、練習ができない。」 オービスは、その言葉を聞いて、ヴィシュを怪訝そうに睨んだ。 「おまえ・・・何者だ・・・」 「ただの、トレーナーさ。 そう、格闘技でもなんでも。」 オービスは、それからは、ヴィシュの話を少しずつ聞くようになった。 「そうだね、君には・・・家族がいる」 「ああ。」 「君はその家族を守りたいと思っている?」 「いや、特には。」 「それじゃあ、今のままでは君は弱いままだ。 人は、守るものがあってこそ強くなれるのだから。」 「あんたには・・・何かあるのか?」 「俺は、俺自身の夢・・・目標を守るために、だから生きている。」 ヴィシュが言った。 「おっと、いかん、次で降りなくては。」 ヴィシュが言って、動く景色がゆっくりになってきたところ、ドアの方に寄った。 「君、行くあてはあるのかい?」 「ない。今はな。 とにかく、町が俺を嫌っている。だから俺は町から出ることにしたんだ。」 「そうか。なら、ついてこないか?」 オービスは笑った。 ヴィシュが、オービスに手を差し伸べたが、電車が停車し、ドアが開くと、ヴィシュはいなくなっていた。 「ふんっ・・・」 オービスは、自分が降りる駅まで降りないつもりだった。 ドアが閉じた。 電車は走り出した。 しばらくオービスは眠っていたが、車内が騒がしくなってきて目を覚ました。 隣の車両で、乗客が叫んだりしていた。 オービスが乗っている車両の乗客は、何があったのかと思って、その車両を見ていた。 悲鳴。 「なんだ、何があった!!」 「わ、わからん・・・とにかく落ち着かなければ・・・」 老人二人の会話は、焦っていて、椅子から立ったり座ったりしていた。 一人の会社員の男が、 「僕が見てきましょう」と言った。 男は、勇敢にも、隣の車両への扉を開けて、乗り込んでいった。 その瞬間に、銃声が鳴った。 オービスの周りの人間は、慌てて反対側の車両へ逃げていった。 オービスは、構わず、外の景色を見ていた。 一方、その喧騒の原因となった人物は、銃口を上から下に下げていた。 「騒ぐなっつーの。 俺は人を探しに来ただけなんだから。」 彼は、そう言った。 乗客の顔を見回して、その目的の人物を探していたが、見つからなかったらしい。 「ここにはいないみたいだな。 じゃ隣に行くか。」 彼は、言って、隣の車両への扉を開いた。 「なんだ、誰もいないじゃねぇか・・・」 彼はその車両に踏み込んだ。 そのとき。 「・・・っ!?」 男は、床に投げ出された。 背後から何かで殴られた。 「お、おまえは!!オービス・ミルトス!!」 言って、銃を構えたが、オービスは彼の手首を蹴り上げた。 「ぐあっ!!」 銃が飛んで、奥の椅子に乗っかった。 男は、オービスから逃げるように床を這って、銃を取りにいった。 「おまえは・・・何者だ!!」 オービスが男の前まで飛び込んで、腹部に蹴りを入れた。 「くぁっ・・・」 「何故!!おまえは!!俺の名前を!!知っている!!」 オービスは相当キレていたので、それを男にぶちまけた。 「う・・・」 男は、ゆっくり立ち上がってオービスを睨んだ。 「これで勝った・・・」 言いながら懐から銃を取り出し、オービスに向けた。 「もう一丁あったのかよ。」 「そのとおりだ。死ね!!」 オービスは、銃声が響くと同時に椅子に飛び込んだ。 この距離なら、銃弾が発射された時の音の速さと銃弾の速さはほぼ同じ。 音と同時に飛び退ければ避けられることは分かっていた。 男は、オービスが銃弾を避けたのを見て驚き、それから、落ちたもう一丁の銃を拾った。 「二丁拳銃だ!!」 どんなに強かろうが、どんなに速かろうが、人間は銃には勝てない。 オービスは、そう思っていた。 だが、ここでオービスは発想法を変えた。 「銃を持っていれば勝てる・・・そう思っているな?」 オービスが男に言った。 「ただの銃じゃねぇぜ・・・この天下の銃使い、マイク様が握るアナコンダツイン、 オーダーゴールドは、名の通りオーダーメイド、 コルト社の特許無視、 そんで出来たこの金色アナコンダは、二丁どっちも、七発装填式。」 「滅茶苦茶改造してんじゃん!!」 「すげぇだろ!!でも残念ながら、両親指の間の三丁目は撃った事がねぇ。」 マイクは、高笑いしていた。 オービスは、白眼視した。 「笑えよ。」 マイクは、オービスに銃を向けて、撃った。 オービスは、冷静だった。 銃弾が届くまで、考えていた。 「俺はここで戦う事を選ばせてもらうよ。」 椅子の下にある緊急用の消火器を取って、銃弾をガードした。 瞬く間に消火器の中の煙が噴出した。 それをオービスは、マイクの方に向けた。 「そんなまやかし、俺に聞くと思っているのか!!」 マイクは、銃を乱射した。 弾切れになり、すぐに銃弾を補充する。 再び構えるが、オービスが襲ってくる気配がない。 「ふふ、死んだか・・・」 煙が車両に充満して、その確認もできなかったが、オービスは確かに、マイクの背後にいた。 「何!?」 マイクの振り向き様に、回し蹴りを放つオービス。 無防備な状態でそれを喰らってしまったマイクは、椅子の上に倒れた。 すぐに回転して立ち上がり、銃を撃つ。 が、単発では避けられてしまう。 「銃を持つ相手は、初めてだけど・・・やってやれないことはない。」 オービスは言って、構えた。 この事件が、後のオービスの人生を変えることになる。 道場を襲われたこと、学校での事件のこと、それから家出をしたこと、 今現在、マイクと戦っていること・・・。 そして、ヴィシュと出合った事、それが後に、自分の人生を大きく変えるなんて、オービスは、 この時点では全く気付いていなかったのだ。 To be continued... 戻る