ストライプマン chapter 2 anaconda twins 〜金色の双子蛇〜

「くそぉ!!」 マイクは、八つ当たりで壁や天井を撃ちまくっていた。 オービスに逃げられたことが悔しかったのだろうか。 それもそうだ、オービスは、素手で銃を持つ相手に勝てると思っていなかったのだ。 最初から勝負は諦めていた。 だから、逃げた。 「まだ、まだ決着は着いちゃいねぇ!!」 オービスが逃げていった車両に駆け込んだ。 「ひぃ!?」 「キャァーッ!!」 他の乗客が、アナコンダを見て、悲鳴を上げた。 乗客たちは皆、逃げるように車両の奥へ駆けた。 「逃げるなー!!」 マイクもそれを追う。 「その中に、今逃げてきた男がいるはずだ!!そいつを出せ!!」 だが、乗客は逃げ惑うばかり。 やっと次の駅に到着し、乗客は皆駆け下りた。 「くそっ!!」 マイクも同時に電車を降りて、オービスを探す。 「逃げられたか・・・」 マイクの背後から、女が現れた。 「ちっ、おまえもいたのか。なんなら手を貸してくれたってよかったんだぞ。」 「『金色の双子蛇』のあなたに失礼だと思ってね。」 「・・・おまえ、本当は裏切るつもりじゃないよな?」 「まさか。」 女は鼻で笑った。 「ボスのやり方が気に食わないのは分かる。 だが、俺たちは駒なんだ。」 「・・・そうね。」 マイクは、振り返ったがその女はもういなかった。 「さすが・・・気まぐれな女だぜ。」 オービスは、駅を出て、街の裏路地にいた。 壁に寄りかかって、地面に座った。 「痛ぇなぁ、こいつぁよ・・・」 肩の出血を見て言った。 マイクの銃弾を全て避けきったわけではなかったのだ。 マイクが、車内の手すりに撃った銃弾が、跳ね返って、跳ね返って、三度跳ね返って、 オービスの肩に当たったのだ。 跳弾は、普通のストレートの弾と違って、軌道が読めない。 オービスは、肩の傷を見て思い出していた。 「あいつ・・・マイクっつってたな・・・」 今後のために覚えておこう、そう思っていた。 オービスが気絶して気がつくと、洞窟のような場所にいた。 状態を起して周りを見回すと、筋肉トレーニングの道具や、木刀や竹刀と言った、 体育会系的な物がゴロゴロ転がっていた。 そして、自分を見る。 肩の傷に、包帯が巻かれていた。 「これは・・・」 オービスは、寝ていた台から降りて、散策することにした。 「あ、気がついたんですね。」 後ろから声をかけられた。 馬鹿な、そこには誰もいなかったはずだ。 そう思って振り返った。 若い女がいた。 「ああ、これは君が?」 怪我のところを指して言った。 「はい。ご迷惑でしたか?」 「いや、助かったよ。ありがとう。」 「そうですか。」 女の人は微笑んで、階段を登っていった。 上階から何か話し声が聞こえるが、何を話しているかわからない。 話し声が止まって、それから誰かが階段を降りてくる。 「君は、縁という物を信じるかね?」 男の声、しかもその声の主を、オービスは知っている。 それは、ヴィシュ。 「ヴィシュ。」 「やあ、オービス。」 「あの時に、誘いに乗っておけば、すぐにここに来れたのに。 あの後、酷かったんですよ。 銃を持った人に襲われてね。」 オービスは、銃を持つような動作をして言った。 女の人が、ヴィシュと顔を見合わせてなにやらアイコンタクトしていた。 「あー・・・」 「ん?」 オービスが困った様子だったので、ヴィシュと女の人が見た。 「ヴィシュ、あんたがトレーニングをしてる人か?」 女を見て言った。 「ああ、君の言うとおりさ。 カーマ。」 ヴィシュは、女の人を誘うように言った。 「私はカーマです。」 その声にも聞き覚えがあったが、何かの勘違いだと思った。 「俺は、オービス・ミルトス。よろしく。」 一通り自己紹介をしたあと、ヴィシュからこの場所は、秘密の場所だということを教えられた。 後に、シェリーも来ることになる場所であった。 「君は、力が欲しいと思うかね?」 「ああ。だけど、そんな簡単に手に入るものじゃない。」 「それが、手に入る。」 言って、ガラス張りの筒があるところに行き、横のスイッチを入れた。 筒の中の蛍光灯が光る。 「なんだこれ?」 「これは、トレーニング用に試作した特殊スーツ。 素材の説明は省くぞ。 時に、空中を舞い、時に水中を行き、時に堅きを挫き、剛を止める。 それがこれだ。」 「まったくもって意味が分かりません。」 「ひとつ、君に実験をしてもらいたいのだよ。」 オービスは、そのスーツを見た。 水色、白、薄い赤のストライプが続き、足首のところと、腰に機械がついている。 手に着けるのだろう、白いグローブの手の平には、鍵の絵がついていた。 「ストライプスーツと言って、 軍の一特殊部隊が極秘裏に製作していた物を我々が頂いた。」 「すごいですね・・・」 「これを着て、倒してもらいたい人がいる。」 それを言ったヴィシュの前に、カーマが出てきた。 「無茶です。こんな子供に・・・」 子供と言っても、カーマとオービスの年齢はほとんど変わらなかったが。 「まさか、誰がそんなもの・・・」 オービスは一度断った。 「だが、君は力を欲している。 だから我々が与える。 君は、何を失った?何も失ってないなら、これから何かを失うかもしれない・・・ そう、武道の道場の時のように!!」 ヴィシュは、木刀を振って来た。 「うわっ!!何すんだ!!」 言って、オービスは、木刀を避けていった。 が、結局は丸腰、木刀に当たって倒れた。 「スーツを着てみろ」 倒れたオービスに強要するヴィシュ。 オービスは、スーツを見て、一旦考えた。 ガラスの筒が、開いていった。 オービスは、スーツを手に取り、それを着た。 「よし、それで向かって来い!!」 ヴィシュが木刀を振る。 オービスは、右足で地面を蹴った。 「うお・・・っ!?」 サイドステップのつもりが、ヴィシュとの距離が一気に離れてしまった。 「なんだこりゃ」 「それがスーツの力だ。」 言いながら、ヴィシュは、オービスの体に木刀で突きを入れる。 が、それは胴体まで届かなかった。 オービスは、右手で木刀の先をつかんでいた。 ヴィシュは木刀を振り上げ、そして肩を狙って叩いた。 そこは、銃傷がある場所だ。 オービスは、痛がると思いきや、それに耐えて見せた。 いや、それはオービスが耐えたわけではなかった。 「なんだこれ・・・痛みが弱い・・・」 オービスが、スーツを触りながら言った。 ヴィシュは、木刀をあったところに置いて、ラックから書類用のファイルを取り出した。 「これが、君に倒して欲しい相手だ。」 写真と情報が載った紙。 「こ、こいつは!!」 そこに載っていたのはマイクだった。 「彼は、今まで犯罪を犯罪と称せず、銃でやりたい放題やってきた。 警察達もお手上げのその銃技から着いたあだ名が、『金色の双子蛇』。 二丁の金色の改造コルトアナコンダを武器としていることが由来だ。 警察からの直のお願いだそうだ。」 「で、倒してどうするんだ?」 話していたとき、カーマがヴィシュに小声で何かを言っていた。 「いいんですか、本当に・・・」 カーマは、少し憤った感じの口調で言って、その場を去った。 「倒したら、気絶させ、この手錠で近くの警察署前につないでおいて、 君は逃げればいい。正体がバレないようにな。」 ヴィシュは、オービスにスーツ専用のメットを渡した。 「こいつのバイザーグラスを下ろして置けば、距離などが数値で見える。 それから、地図もな。 それは手首のコンソールで操作できる。」 色々と説明をして、ヴィシュは、「行ってこい」と言った。 オービスは、メットのマスク部分を取り付け、顔半分を隠しておいた。 上半分は、バイザーグラスで隠せるだろう。 マイクは、いつものように、罪の無い一般市民を銃の的にしていた。 「はぁー、今日も遊んだなぁー・・・ じゃあこの辺で、お開きに・・・」 言おうとした瞬間、マイクは、吹っ飛んでいた。 「うぐぉ・・・ああっ!?」 回転しながら、その姿を見た。 なんとか受身を取って着地した。 「あ、あれは・・・ストライプスーツ・・・何故・・・」 それは、ストライプスーツを纏ったオービス。 だが、マイクからは、中の人物など見えない。 「お、おまえは誰だ!!」 マイクは、叫んでいた。 「貴様に名乗る名など持ち合わせていない。」 周りにいた一般人が、オービスの登場を喜んでいた。 「なんだアイツ、銃の野郎を吹っ飛ばしたぞ!!」 「なんかわからないけど、ヒーロー登場って感じ?」 「なんなんだよあのヒーローは。」 口々に、笑っていたり、叫んでいたり、自由に話していた。 「おまえ・・・組織のもんじゃねぇなぁ・・・ それが何故、ストライプスーツを着てるんだ・・・?」 「何のことだかわからないが。」 「わからないだと!! 嘘をつけェッ!!嘘を!!」 マイクは、アナコンダを構えた。 「銃弾の発射速度、算出、 銃弾の軌道、算出、 銃弾の速度、算出、 銃弾の着弾点、算出。」 十四発の弾丸が、バラバラに、オービスに迫ってくる。 が、バイザー越しにそれを見ていたオービスには、すでに安全に避ける方法がわかっていた。 銃弾は、全てオービスの背後に飛んでいった。 「なにぃっ!!全て避けた、だとぉ!?」 オービスは、空中に飛んだ。 足首の器機が反応して、ジェット噴射した。 空中からマイクに、奇襲をかけた。 「上から・・・?」 マイクは、そんな無防備な敵を、不思議に思いながら、銃を向けた。 が、オービスの落下速度のほうが速かった。 マイクは、オービスの踵落しを頭に喰らってしまった。 一般人は、歓声を上げていた。 オービスは気絶したマイクを左手に掴んで、空中に飛び去った。 「おい、誰だコイツ・・・」 休憩中の警察官が、署の前の階段の手すりに手錠でつながれている男に気付いた。 「おい、こいつは指名手配中の犯人じゃないか!!」 「なに!?」 銃を向けて、大人しくするように言った。 が、マイクはもう、何をすることもできなかった。 アナコンダは、もうない。 ストライプスーツを着ていた男に奪われてしまっていたのだ。 「指名手配中の男、マイクを逮捕しました!!」 マイクは、あえなく御用となった。 が、その後に脱獄を謀るのはまた別の話。 To be continued... 戻る