ストライプマン chapter 3 doubt purpletomato 〜疑念・爆弾魔〜
マイクを倒した後、ヴィシュが組織するグループに正式に入隊を決定したオービス。 ヴィシュの勧めで、学校へ行くように言われたので、そのとおりにした。 家出騒動もあったので、安否を気にするのは家族だけではないはずだった。 ヴィシュ達が住むこの洞窟は、ニューヨークにあった。 つまり。 オービスは、アメリカ大陸を西海岸から東海岸に、家出だけで一気に渡ってしまったのだった。 もちろん、電車代やら、何やらで、金はほとんどなくなっていたが、 ヴィシュからもらった給料で、なんとか帰れそうだった。 「給料なんて、そんな・・・」 「いいから。もらっておきなさい。 減るもんじゃないし。」 「いや、減るでしょう。」 「どっちにしろ、家に帰れないでしょう、これがないと。」 「う・・・」 オービスは、そんな感じで給料を受け取っていた。 「君が大人になったら、そのスーツを返してくれれば構わない。 いや、もしその先、ここにいるのならば、スーツはあげてもいいんだけどね。」 「返しに来ますよ。絶対ね。」 「それはいいんだが、君の町でも事件が、あるはずだ。 そのスーツを使って、それを解決してくれれば、開発者としても嬉しいことだ。」 ヴィシュはそう言っていた。 夜。 「ただいま。」 家のドアを開けた。 もうみんな寝てしまったのだろうか、と、音を立てないように室内に入る。 「おかえり」 後ろから声をかけてきたのは、シェリーだった。 「お、お兄ちゃん・・・どこ・・・行ってたの・・・」 オービスの顔を見た途端、泣き出してしまった。 「もうどこにも行かないさ。しばらくは。」 「ダメ・・・」 「どこかに行くようならば、シェリーにも言ってくから。」 「・・・」 後日、休日。 朝日が差して、まぶしそうに目をひそめるオービス。 昨日、カーテンを閉めるのを忘れていた・・・と一人愚痴って、 ベッドから起き上がる。 テレビをつけてニュースを見ると、爆弾魔の話題がやっていた。 リポーターの前に堂々と姿を現した、その爆弾魔の姿は、体が紫色の、角が生えた竜。 体中に手の平サイズのボールをたくさん着けているその姿は、怪物でもあった。 「ハハハハ!!俺の名は、ミスターパープルトマト!!」 自己顕示欲が強そうな奴だった。 オービスは、すぐにストライプスーツが入った鞄を持って、外に出た。 「お兄ちゃんどこ行くの!?」 窓からシェリーが叫んだ。 「すぐ戻る!!」 港町の船場付近から、飛行してくる紫色の怪物。 ミスターパープルトマトこと、その怪物は、体のボールを手に取って、それを建物に投げつけている。 背中には、マントで隠したジェット装置がついていて、パープルトマトはそれで空中に浮いていた。 その真下を走って、公衆便所に入り込む男がいた。 「空襲時のお便所には、注意しましょう。ひひひへは・・・」 笑いながら、その屋根に、ボールをばら撒くパープルトマト。 ボールは落下し、その直後爆発した。 「ハァーッハッハッハッハ!!」 高笑いをしていたとき、その爆煙の中から何かが飛び出してくるのが見えた。 「ハッハッハ・・・ハァ?なんだ?あれは・・・」 向かってくるそれは、ストライプのスーツに身を包んだ人間だった。 「あ!!ストライプマンだ!!」 一人の一般市民が言った。 ニューヨークでの事件が、ニュースになってカリフォルニアにも渡っていたのだ。 マスコミが、これを取り上げ、ストライプマンと名付けた。 そのストライプマンは、足と腰のジェットを上手く操作して、パープルトマトにつっこんでいった。 「うぉぉぉお!?」 右腕でのパンチを繰り出すストライプマン。 パープルトマトは、空中に投げ上げられた。 「く・・・やってくれるなぁ・・・おまえも爆殺だ!!」 体のボールを何個かもぎ取って、ストライプマンに投げつけた。 「拡散爆弾だぁー!!ハハハハハハ!!」 全てが爆発を終えて、煙になった時、その煙を渦巻いて飛んでくる影。 ストライプマン。 「とりあえず地上に堕ちろ。」 「ハッ!?」 パープルトマトの腹部に蹴り込むストライプマン。 しかし、それはあっけなくガードされる。 が、両手を合わせてナックルボム、このコンボにはパープルトマトも反応できなかった。 「うわぁぁぁぁ・・・」 パープルトマトは、バランスを崩して、地面に向かって急降下していった。 ストライプマンは、パープルトマトを追いかけて急速落下していく。 地面近くなったところで、ストライプマンは、パープルトマトを横からキャッチした。 「ふふ・・・ハハハ!! これでも喰らえ!!」 パープルトマトは、持っていたボールを、ストライプマンの前で爆発させた。 「うわぁぁぁ!!」 ストライプマンは、地面を引きずって吹っ飛んでいった。 「くそ・・・」 ストライプマンは、傷だらけになりながらも、すぐに立ち上がった。 が、すでにそこにはパープルトマトはいなかった。 「逃がしたか・・・」 パープルトマトは、途中までは逃げてこれた。 「くぅ・・・」 パープルトマトは、港のコンテナのある場所に隠れていた。 木箱が重なっていて、周囲からの死角になっている場所に。 「なんなんだ、あいつは・・・」 マスクを外す。 薄いヒゲを生やし鋭利な輪郭の顎、吊りあがった目つき。 茶色い髪の毛。 その男が、額の一部に触れた。 「出血は酷くないな。」 言って、パープルトマトは、装備を外す。 紫色の布地は、所々破れて、中の鉄板が露見していた。 男は、携帯電話を取り出した。 「ああ、俺だ・・・来てくれ・・・」 それだけ言って、携帯電話を仕舞った。 迎えが車で来るのに数時間、それまでストライプマンに見つからなければ平気だが・・・。 男は、不安でいっぱいだった。 男が予想していたよりも早く、迎えは来た。 波止場の上の駐車場に、一台の車が止まった。 その中から、黒い服を着た数人が出てきて、コンテナ群の間を駆けていった。 音に気付いた男は、木箱の隙間から様子を窺った。 「ここだ!!俺はここだ!!」 男は叫んだ。 「いたぞ、こっちだ」 黒い服の人物が言って、他の仲間たちを呼んだ。 ヒゲの男は、仲間達に連れられ、車に乗り込んだ。 「いやー、お疲れだったね、アルムスカイトくん。」 車が発進し、ヒゲの男の前の男が言った。 「今回はストライプマンが敵だったか。」 「待てよ・・・これはどういうことだ・・・?」 パープルトマトの装備を各々のアタッシュケースに仕舞いながら、アルムスカイトは聞いた。 「あのスーツは、シェイドチェーン社から引き下げた俺達の武装・・・そのはずだ。 あいつは、俺を分かっていて攻撃してきた。 そうとしか思えん。」 「ああ、我々の組織には、反乱分子もいるからね。」 「・・・そうでなくとも・・・まさか、あんたの差し金・・・ってことは、ないよな?」 「どうしてそう思う?」 アルムスカイトは、普段着に着替え始めた。 車の中は、冷房が掛かっていて、装備を外して薄着のアルムスカイトには、少し肌寒かった。 「俺が、いらなくなったのか?」 前にいる男は、運転手になにやら告げて、それから答えた。 「まさか。君はいい人材だよ。 今回相手にしたストライプマン、こいつは調査を進めておくよ。」 アルムスカイトは、椅子を下げて、傾けた。 隣にいた黒服の女が、気を遣ってなのか、コートをかけてやった。 「ありがとう。少し眠るよ。」 「ええ。」 アルムスカイトは、目を瞑って考えるのをやめた。 「彼は危険だな。そのうち、シェイドチェーン社から狙われかねん。」 「え?」 「パープルトマトの装備の返上を求めてきている。 我々が買い占めたとは言え、粗強奪に近かったからな。」 男と女が小声で話していた。 アルムスカイトは、寝返りをうって、誰も見ていない所で、ニヤリと微笑した。 大丈夫だ、誰から狙われようとも、仲間を裏切るようなことはしないさ・・・ 女は、アルムスカイトの傷を見ていた。 車で送られて、自宅前に着いたアルムスカイトは、自室のある二階へ、外側の階段を使って上っていった。 鍵を使って中に入る。 部屋の窓は開けられていて、風が惜しみなく入ってきていた。 部屋は散らかりっぱなしだった。 「家政婦でも雇おうかな。」 片づけが苦手で、それでもなんとか自分で時間をみつけてはやっている。 それでも、色々と物は散らかる。 「窓を開けたのは、おまえだな」 アルムスカイトは、窓を閉めて、片づけを始ながら言った。 背中に殺気を感じている。 「よくわかったな。」 クローゼットの中から背の高い男が出てきた。 年はアルムスカイトよりも若いぐらいだ。 「おまえ、どこのもんだか知らないが、生憎部屋が散らかっていてね。 今日はお引取り願いたいのだよ。」 アルムスカイトは振り返って言った。 「そうか。ならばアレを渡して欲しい。 貴様等が我が組織から横領した武装兵器を。」 アルムスカイトは、そいつをただ無視しようと思っていたが、その言葉で一気に熱が入った。 「お、おまえ・・・シェイドチェーン社か・・・?」 「正式には、その社の裏組織、陰の鎖という。」 「おまえは、新入りだな。」 男は、アルムスカイトを見て、頷く。 「陰の鎖か・・・・。 手抜きな名前もいいとこだ。 パープルトマトを取りに来たのだろうが、あれは渡せん。」 「ならば力づくで奪うまで。」 男は、懐から金属製のグローブを取り出し、両腕に装着した。 指の先まで鉄の鍵爪が伸びている。 「知っているか。 つい最近から、人々が妙な能力に目覚めていると。 陰の鎖は、そういう人間を集めている。」 「そうかい・・・」 「そして俺は・・・落ちこぼれだったのだろう。 能力は開花の兆しを見せただけで、何もできなかった。 だから俺は、俺が見た能力に合わせて、この装備を選んだ。」 男は、装着したグローブの爪の先をアルムスカイトに向けた。 「俺の能力、力という単純なそれは、全ての力を上昇させる能力だった。」 言って、男はアルムスカイトに殴りかかっていった。 アルムスカイトは、それをジャンプして避けた。 男は空振りし、金属グローブに振られて家具を殴っていた。 その家具は、一瞬で真っ二つに割れた。 「おまえ、誰だかわかったぜ・・・」 テーブルの上に着地したアルムスカイトが言った。 「ノーウェン・バランクス・・・」 言われて、ノーウェンは少しだけ驚いていた。 ノーウェンは、手を熊手の構えにした。 そのまま両手でアルムスカイトをひっかくように振るう。 が、全て当たらずに、家具などを削り去っているだけだった。 「ちっ・・・やられてばっかじゃ面白くないね。」 アルムスカイトは、一か八かの覚悟で、部屋に置いてあった予備の小型爆弾、 パープルボムを投げた。 空中で爆発し、煙幕を広げ、アルムスカイトに逃げる隙を与えてくれた。 「逃がさんよ。」 ノーウェンは、構えを解かずに、アルムスカイトを追った。 「次はかくれんぼか・・・。」 アルムスカイトの姿が見えない。 恐らくは、パープルトマトの装備を取りにいったのだろう。 アルムスカイトがあの装備をしてしまえば、ノーウェンの勝率がぐっと下がる。 が、倒した後にパープルトマトを探さずに済むというメリットがある。 ノーウェンは、その場に留まって周囲を見渡した。 コロン、と、ボールが落ちてきた。 ころころ転がって、ノーウェンの足元まで来た。 ノーウェンは、ボールを見るなり、すぐに家の外に飛び出した。 同時、その部屋が爆発した。 「ふははははは!!俺の名は、ミスターパープルトマト!!」 爆煙の中から、紫色の怪物が、空中に飛翔した。 To be continued... 戻る