ストライプマン chapter 4 grow crimsonsunset 〜成長・夕焼け〜
「殺そうとまでは、思わない。」 ノーウェンは言った。 「君のその怪我じゃ、もう戦えないはずだ。」 自分自身の怪我は、どうでもいいと言うように。 いや、実際ノーウェンの怪我はどうでもいいのかもしれない。 戦いの中で、自分の能力を再び開かせることができたのだから。 彼の力の能力は、単に腕力や打撃力を上昇させるだけではないのだ。 精神力、そして体力。 それ即ち、怪我をしていても、パワーが持てば大丈夫、ノーウェンにとってはそういうことだ。 「さ、武装解除願おうか。」 ノーウェンは言った。 「へっ・・・ここまで・・・やって・・・殺そうと思わない・・・? このまま・・・じゃ・・・普通に死ぬだろう・・・」 アルムスカイトのメットは外れていた。 ノーウェンの攻撃を喰らった時に吹っ飛んだのだ。 ただ、それでもノーウェンは、手加減をしていた。 できるだけパープルトマトを無傷で持って帰りたかったのだ。 「まだまだ・・・俺はやるぜ」 パープルトマト、否、アルムスカイトは立ち上がってノーウェンと対峙する。 「やめておけ。死ぬぞ。」 アルムスカイトは、怒声を上げて、ノーウェンに向かっていった。 パープルボムを何個か投げつけ、背後に回り込んだ。 最後の一撃に、と、パープルボムを構えていたが。 「能力者と武装者の違い、それを教えてやろう。 ここまで戦ったおまえに、敬意を表してな。」 ノーウェンは言って、高速で振り返って、片足を踏み込んだ。 「なっ!?」 「オーガフィスト!!」 一撃の打撃に集中して、能力を拳の先端に集め、それを人体の中心線にぶつける。 心臓よりもやや下の位置に。 しかし、この一撃、一撃で終わり、後は三十秒間、能力が使えなくなる大技なのだ。 アルムスカイトは、叫びもせず、吹き飛んだ。 そして、地面に倒れて動かない。 「君の死を俺の心に刻もうぞ。」 言って、胸に手を当てたノーウェン。 しばらく黙祷して、動かなくなったアルムスカイトの武装、パープルトマトを外しにかかった。 ストライプマンであるオービス・ミルトス、 それから、陰の鎖のノーウェン・バランクス、 この二人に敗北したアルムスカイトだったが、彼の心は誇りを抱いたまま消えていった。 それは全て、ノーウェンのおかげだったのだろう。 カリフォルニアで、それほど大きな事件が起こらなくなって、 ストライプマンの出動回数も減ってきた。 オービスは、大学へ行くために、資料を集めていた。 高校を卒業したら、ニューヨークへ行って一人暮らしをするつもりだった。 シェリーにはそれを反対されたが、無理にでも行くと言った。 カリフォルニアは、平和だった。 何事もないように。 もう武道場の人の失踪事件は、忘れられていた。 ただ、オービスの心の隅にはそれが引っかかって抜けなくなっていた。 旅立ちの日。 オービスは、前日から荷物積みをしていた。 なので、特に忘れ物はないだろう、と思っていた。 実際、オービスの性格上、忘れ物は少ない方だし、忘れ物をしても何でも代用が効く。 シェリーは、兄の旅立ちを泣いていた。 「お兄ちゃん、どこにも行かないって言ってたのに・・・」 「悪いな。」 「なんでニューヨークになんか・・・」 「んー・・・そこでやらなくちゃいけないことがあるから、かな?」 オービスは言った。 「借りを返さなきゃいけないんだ。」 「え?」 「ひとつ、借りを作ってしまってね。」 ヴィシュのことを思い出しながら言った。 「それじゃあ、これを持っていって。」 シェリーは、ブレスレッドを渡した。 オービスは、それをすぐに手首につけると、家の玄関を開けた。 「それじゃあ、行ってくるぜ。心配するな。 休みの日とかは、帰ってくる。」 言って、外に出た。 オービスは、先日買った車を車庫から出した。 運転は何度目になるか、数は少ないが。 今回は遠くに行くことになる。 ハイウェイを使っても、一日で着くような距離ではない。 もうすでに、ニューヨークの住居には、家財道具一式を送ってある。 後は、服などを積めた鞄を持っていくだけ。 ニューヨークに到着するまで、オービスは、今までのことを考えていた。 まるで、これから、自分が死ぬことを予見するかのように。 「奴の名前はアルムスカイト。」 ヴィシュが言った。 「不幸にも、自分が盗んだ物が、敵組織の物だったからに、そこの殺し屋に命を断たれた。」 オービスは、数ヶ月前に戦ったパープルトマトの詳細が分かったと言っていたヴィシュの話を聞いていた。 「なんでそんなこと知ってるんだ?」 オービスは、一度ヴィシュを見た。 ヴィシュは、一間空けて、 「そういう情報筋があるのさ。」と言った。 洞窟のトレーニング場、久しぶりに来てみても余り変化はなかった。 「これから君は、ニューヨークに住むんだって?」 「ああ。大学が近いからな。」 「そうか。」 ヴィシュは、椅子に座った。 「カーマさんは・・・?」 「この組織を辞めたよ。 何があったのかね。 連絡も取れない。」 「そうですか。」 これから数日の間、ヴィシュのトレーニングで、オービスは強くなっていった。 もちろん、そこにストライプスーツを着て、格段に強さは陪乗されていく。 「君に、面白いことを教えてあげよう。」 ヴィシュが言った。 「我々が生きているこの時間軸。 これは、真っ直ぐな線で出来ているとしよう。」 ヴィシュは、指で空中に線を描いた。 「そこで、人間は、素早く動く方法を考える。 そして日々成長する。 ある人は言った。丸いものを下に置いて、そこに物を乗せればいいと。 ある人は言った。切断面が楕円形になるように切った金属を両脇につければいいと。 今まではそうやって、車や飛行機が出来た。」 ヴィシュは続ける。 「だが、ある日、学校での成績も悪く、あまり頭のよくなかった少年が、面白半分に言ったそうだ。 時間を曲げればいい、と。」 ヴィシュは、微笑んで、ホワイトボードを出してきた。 黒いペンで線を描く。 「始点・・・・・・終点・・・っと。」 両端に点を一つずつ、それから線を四分割するように目盛りをつけた。 「それが時間軸か?」 オービスが聞いた。 「ああ、そうだ。」 ヴィシュが答えた。 「これは常人が動ける範囲の時間軸だ。 そして、ここをどう速く動けるか。 その頭の悪い少年が一番の正解者だった。」 今度は、赤いペンで、直線に、はみ出した線を加える。 それは、途中で曲がって、直線にぶつかり、またはみ出す。 ギザギザな模様を描いていた。 「三角形が四つできたな。」 「ただの三角形じゃない。正三角形だよ。」 分割した目盛りの間を底辺にして、四つの正三角形ができていた。 「この曲がった部分までの距離は、ここの時間軸と同じ長さ。 つまり、曲がった時間軸を行けば、ここでは二倍の速度が出せるというわけだ。 その際には、周りの景色がゆっくりに見えるんだろうね。」 ヴィシュは、話し終えてホワイトボードを片付けた。 「ホラ、レポート提出があるんだろ?」 ヴィシュが言って、オービスが時計を見る。 「ああ、いっけねぇ!!」 オービスが、家にいるとき。 誰かが部屋をノックしてきた。 「誰だ?」 「カーマ・・・」 オービスは、すぐにドアを開けた。 「どうしたんだい、ヴィシュが心配していた。」 「私達は利用されていた!!」 一体何のことを言っているのか分からなかった。 「どういう意味だ。」 「銃使いのマイクも、私も、ヴィシュに利用されていたのよ。」 「はぁ?マイクって奴は敵だろ。」 「そうじゃない。私の・・・彼氏のアルムスカイトも。 そのために命を落とした!!」 オービスの表情が変わった。 「とりあえず中へ。」 カーマを部屋に招きいれた。 「どういうことだ。」 「犯罪は無くならない・・・ でも、それを叩くだけのことならできる。 そう言って、ヴィシュは同志を集めた。 私と、アルムスカイトと、マイク・・・ そして、スポンサーとして、陰の鎖。 もうそこからは見放されているのだけれど。」 「ああ、なるほど。武装兵器云々を、ヴィシュの手引きで強奪したってことか。」 「そう。」 カーマとオービスは、その日、しばらく話していた。 ヴィシュの暗い部分・・・ 「あいつは、核爆弾を持っている!!」 カーマは、最後にそれだけ言うと帰っていった。 数日後。 ヴィシュの本性を知ったオービスは、洞窟のトレーニング場に行かなくなった。 いつ自分が殺されるか分からない。 だから、カーマは組織を抜けた。 悩みを抱えたこの苦しい時。 彼女は現れた。 「やっほー」 「シェリー・・・どうしてここに・・・」 「私、高校を変えたから。」 「どこまでもまぁ、ついてくる気なんだね・・・」 「そうだよ。」 「で、住む所はあるのか?」 「ここに住まわせてください!!」 シェリーが、いきなり半泣きで言った。 オービスは、特に断る理由もなかったので、「いいよ」とだけ言ってシェリーを中に入れた。 「お兄ちゃんの大学、見学に行ける日とかってあるのかな?」 「さぁな。まぁ適当に行ってみればいいんじゃねぇの?」 「そっか。」 そして。 「えぇ、ただいま、ニューヨークのウェストチェスターに中継が繋がっております。 現地のグランベリーさん。」 最後の日はやってきた。 「はい、ただいま、ウェストチェスターの工場です。 暴漢は未だ人質をとって立てこもってる模様、大きな進展は見られません。」 「そうですか。 警察の方の動きはあるんですか?」 「いえ、まだ到着はしておりません・・・あ!!」 「どうしましたか?」 「向こうの方が騒がしいです。」 レポーターのグランベリーは、野次馬達を掻き分けて、工場に近づこうとした。 カメラマンもそれに続く。 「ご覧ください、ストライプマンです!! ストライプマンが来てくれました!!」 カメラは、その姿を捉えた。 ストライプマンは、工場の屋根を走っていた。 オービスは、何を考えるでもなく、先に工場に侵入することだけを考えていた。 屋根を走って、屋上から下の階へ降りると、中に入れた。 が、ドアをあけてすぐに、銃を持った男が現れた。 「うわっ!!うわぁー!!」 男は、ストライプマンの姿に驚いて銃を乱射した。 が、それが当たるはずも無く。 オービスは、男の腕を蹴って、銃を落とした。 すぐに男は殴りかかってくるが、それをガードして、逆に殴る。 倒れかけた男の首を掴んで、手刀打ちをして気絶させた。 オービスは、階段を降りていく。 一階に人質がいて、それを助け出さなければいけないのだった。 オービスの進路を阻むように、銃を持った男達が出てきたが、それを全てなぎ払ってきた。 そして、ようやく一階。 「久しぶり。オービス・ミルトス。」 ヴィシュが言った。 「色々聞いたぜ。おまえがこの事件の犯人だな。」 「見ればわかるだろう、俺も人質だ。」 一般市民が、そこいらに縛られている。 恐らく、気絶している。 そのすぐ近くにヴィシュも座っていた。 銃を持った男はもう見当たらない。 雑魚はもう使わないのか。 「冗談はやめろ。」 「フフフ、いやあ、君がここまでたどり着くとはね。 正直感心したよ。」 オービスは、立ち上がろうとするヴィシュに近づいていった。 ヴィシュが立ち上がった瞬間に、思いっきりぶん殴った。 「ぐふぉっ!?」 ヴィシュは、その場に倒れた。 「おまえ、ヴィシュってのは、ヴィシュトルフスキーって名前だからなんだってな。」 「・・・カーマか。奴から聞いたのか・・・」 ヴィシュは、オービスの背後を見る。 オービスの後ろから、一人の男が現れた。 オービスは、未だそれには気付いていない。 「詰み、だよ。オービス・ミルトス!!」 後ろの男が、斧で斬りかかった。 が。 オービスが、割れたガラスに映ったその敵に気付くなり、言った。 「時間は・・・歪む。」 言った途端、オービス以外の景色や動きが、ゆっくりになった。 「ヴィシュ、これがオマエから教えてもらった時間歪曲だ。」 振り返って、斧を持った男を突き飛ばした。 そのままの状態で空中に浮いた。 ゆっくりと落下していく。 「さて。」 指を鳴らすと同時に、斧を持った男は、一気に地面に落ちた。 「ここいらで勝負をつけましょうか、ヴィシュトルフスキー・アトルズム。」 「くぅっ・・・」 その時、工場のガラスが割れて、何かが飛び込んできた。 それは、地面に着地して、その体を上げた。 紫色のマント、紫色の竜の面、体中に着いた紫色のボール型爆弾。 「パープルトマト!?」 彼は現れた。 To be continued... 戻る